ハイドン:交響曲第13番 ニ長調 Hob.I:13
マックス・ゴバーマン指揮 ウィーン国立歌劇場管弦楽団 1960年~1962年録音
Haydn:Symphony No.13 in D major, Hob.I:13 [1.Allegro molto]
Haydn:Symphony No.13 in D major, Hob.I:13 [2.Andante cantabile]
Haydn:Symphony No.13 in D major, Hob.I:13 [3.Minuet - Trio]
Haydn:Symphony No.13 in D major, Hob.I:13 [4.Finale. Allegro molto ]
エステルハージ家の副楽長時代の作品
この作品にも自筆が残っていて、1763年に作曲されたと見て間違いのない交響曲です。
ここで注目すべきは、ハイドンの交響曲としては初めてティンパニーが用いられていることです。また、ホルンも4本が指定されているので、おそらくは何らかの祝典用の音楽として書かれたのではないかと思われます。
第1楽章:Allegro molto
ここでは4本に増強されたホルンが活躍します。そのホルンが醸し出す豊かな和音を背景に弦楽器が歯切れよく歌い出します。
また、中間部でのホルンが分散和音で上昇する処は魅力的です。
第2楽章:Adagio cantabile
独奏チェロが終止美しいアリアを歌い上げます。
第3楽章:Menuet trio
トリオではフルートが活躍し、全体としてみても非常に充実したメヌエット楽章になっています。人によっては、ハイドンが書いたメヌエットの中でも最高のものの一つだと評価する向きもあるようです。
第4楽章:Finale, allegro moltoモーツァルトのジュピターののフィナーレと同じ音型が使われているので驚かされます。
もちろん、順番は逆であって、さらに言えばあの音型は多くの作曲家によって使われたものなので、そう言う類似が生じるのは何の不思議もないのです。
ただし、こちらはモーツァルトのような「フーガ」ではなくて「ソナタ形式」で書かれています。
ミュージカルの世界で人気を博してきたゴバーマンには明るく軽やかに振る舞うというスタイルが身にしみついていたのかもしれません
世間ではこれを、「現在のピリオド楽器演奏の原型ともいうべき、スリムで新鮮な演奏を繰り広げて」いると評しているのですが、それは少し違うような気がします。
おそらく、ピリオド楽器による演奏というスタイルがクラシック音楽の演奏史における一つの到達点だと信じている人にしてみれば、それは「褒め言葉」のつもりなのでしょう。
しかしながら、クラシック音楽の演奏史というのはそんなところを目指して「進化」していったわけではないのですから、少しでも「似た」ところがあれば、それを「現在のピリオド楽器演奏の原型」だと主張するのは我田引水が過ぎます。
このゴバーマンの演奏は、疑いもなくモダン楽器を前提とした解釈に基づく演奏です。
それは、例えば、ハイドンの初期の有名作である6番から8番の「朝」「昼」「夕」というタイトルの3部作あたりを聞くだけですぐに了解できるはずです。
あの交響曲はハイドンがエステルハージの宮廷に仕えて、はじめて侯からの依頼で作曲した3部作でした。
ハイドンはそこで、宮廷楽団の各奏者の腕前を披露するために、それぞれの楽器に独奏場面を用意しています。
ゴバーマンはその独奏場面において管楽器の美しさを存分に振りまいているのです。
この録音のオーケストラは「ウィーン国立歌劇場管弦楽団」となっているのですが、これは疑いもなくウィーンフィルのメンバーも含んだ歌劇場のオケでしょう。
シェルヘンの場合は「ウィーン国立歌劇場管弦楽団」といっても怪しい部分も多くて、実際そのかなりの部分はフォルクスオーパーのオケであったことはよく知られているのですが、ここでは疑いもなくシュタッツオーパーのオケです。そして、この素晴らしい響きを聞く限りでは、ほとんどウィーンフィルのメンバーとニアイコールではないかと思われます。
こんなにもモダン楽器としての艶やかな美しさをふりまく演奏を「ピリオド楽器演奏の原型」などといわれるのは、到底納得行くものではありません。
おそらく、こういう演奏スタイルの背景には、彼が長年率いていた「ニューヨーク・シンフォニエッタ」というオーケストラが小ぶりな編成だったこと起因しているのかも知れません。
そして、それはミュージカル演奏のオケにおいても同様でしょう。
さらに言えば、長年ミュージカルという世界で人気を博してきたことが、音楽というものは重くてむっつりと演奏するのではなくて、明るく軽やかに振る舞うというスタイルが身にしみついていたのかもしれません。
ただし、それが「ポール・モーリア」とか「レイモン・ルフェーブル」のようなイージー・リスニング風の音楽にはならなかったのは、その根っこがクラシック音楽の世界に深く食い込んでいたからでしょう。
聞くところによると、「ポール・モーリア」とか「レイモン・ルフェーブル」のようなオケは、コンサートツアーなどが行われるたびに人を集めて編成されるようなので、そもそも「固有のオケの響き」などと言うものは存在しないとのことです。
そう考えれば、ゴバーマンが長年過ごしたブロードウェイの方がまだ音楽的だったのかも知れません。
そして、そんなゴバーマンが再びクラシック音楽の世界に帰ってきて最初に取り組んだのがハイドンの初期シンフォニーやヴィヴァルディの音楽だったというのは実に賢い選択肢だったと言えます。
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