クラシック音楽へのおさそい~Blue Sky Label~

シューマン:交響曲第2番 ハ長調 作品61

ジョージ・セル指揮 クリーブランド管弦楽団 1957年5月31日録音



Schumann:Symphony No.2 in C major Op.61 [1.Sostenuto assai - Allegro, ma non troppo]

Schumann:Symphony No.2 in C major Op.61 [2.Scherzo: Allegro vivace]

Schumann:Symphony No.2 in C major Op.61 [3.Adagio espressivo]

Schumann:Symphony No.2 in C major Op.61 [4.Allegro molto vivace]


作曲家であると同時に、評論家であったのがシューマンです。

その最大の功績はショパンやブラームスを世に出したことでしょう。

 しかし、音楽家としてのシューマンの評価となると、その唯一無二の魅力は認めつつも、いくつかの疑問符がいつもつきまといました。特に交響曲のオーケストレーションは常に論議の的となってきました。
 曰く、旋律線を重ねすぎているためどこに主役の旋律があるのか分かりにくく、そのため、オケのコントールを間違うと何をしているのか分からなくなる。
 そして、楽器を重すぎているため音色が均質なトーンにならされてしまい、オケがいくら頑張っても演奏効果もあがらない、などなどです。

そんなシューマンの交響曲は常に舵の壊れた船にたとえられてきました。
 腕の悪い船長(指揮者)が操ると、もうハチャメチャ状態になってしまいます。オケと指揮者の性能チェックには好適かもしれませんが、とにかく問題の多い作品でした。

 こういう作品を前にして、多くの指揮者連中は壊れた舵を直すことによってこの問題を解決してきました。その直し方が指揮者としての腕の見せ所でもありました。
 最も有名なのがマーラーです。
 自らも偉大な作曲家であったマーラーにとってはこの拙劣なオーケストレーションは我慢できなかったのでしょう。
 不自然に鳴り響く金管楽器やティンパニー、重複するパートを全部休符に置き換えるというもので、それこそ、バッサリという感じで全曲に外科手術を施しています。
 おかげで、すっきりとした響きに大変身しました。

 しかし、世は原点尊重の時代になってくると、こういうマーラー流のやり方は日陰に追いやられていきます。
 逆に、そのくすんだ中間色のトーンこそがシューマン独特の世界であり、パート間のバランス確保だけで何とか船を無事に港までつれていこうというのが主流となってきました。

 特に、原典尊重を旗印にする古楽器勢の手に掛かると、まるで違う曲みたいに響きます。
 モダンオケでもサヴァリッシュやシャイーなどは原典尊重でオケをコントロールしています。

 しかし今もなおスコアに手を入れる指揮者も後を絶ちません。(ヴァントやジュリーニ、いわゆる巨匠勢ですね。)
 そう言うところにも、シューマンのシンフォニーのかかえる問題の深刻さがうかがえます。

 しかし、演奏家サイドに深刻な問題を突きつける音楽であっても、、聞き手にとっては、シューマンの音楽はいつも魅力的です。。
 例えば、この第3楽章のくすんだ音色で表現される憂愁の音楽は他では絶対に聴けないたぐいのものです。これを聞くと、これぞロマン派のシンフォニーと感じ入ります。

 そんなユング君は、どちらかといえばスコアに手を加えた方に心に残る演奏が多いようです。その手の演奏を最初に聞いてシューマン像を作り上げてしまった「すり込み現象」かもしれませんが。
 色々と考えさせられる音楽ではあります。

有名なルガーノライヴです。


有名なといっても、有名なのはセルに関心を寄せている人の間だけでしょうから、少し詳しく説明しておきます。

セルとクリーヴランドが始めて行ったヨーロッパ公演でのライブ録音です。場所はスイスの小さな町ルガーノでのコンサートで、プログラムはシューマンの2番とドビュッシーのラ・メール、そしてアンコール曲と思われるベルリオーズのラコッティ行進曲です。
この録音は厳密に言えばセルがOKを出したものではないでしょうから、海賊盤の内にはいるのでしょう。

1957年5月31日の行われたこの演奏会の記録での最大の聴きものはシューマンの2番です。
もともと、シューマンの交響曲はセルの得意技の一つでした。スタジオ録音の交響曲全集はおそらくシューマン演奏の最良なるものの一つです。

しかし、このライヴの演奏はそのスタジオ録音とは次元の違う演奏です。
なぜなら、スタジオ録音では到底窺えなかったロマンティシズムの横溢が聴けるからです。
凄いのが、スケルツォ楽章とアレグロ・モルト・ヴィヴァーチェという指示のある最終楽章です。

特に第2楽章では、高速でコーナーに突っ込んで、スピードを落とすことなくそのコーナーをスリリングに駆け抜けていくような爽快感を味わえます。
そして一番感心させられるのが、クリーヴランドのオケはそんなセルの棒に追随しながら、完璧なアンサンブルを崩すことなく驀進していくことです。一糸乱れぬ鬼のアンサンブルが生み出す底光りするような強靱な響きが、セルの棒に応えてアクセル全開で突っ走っていきます。
これこそが、セルが理想とした響きでしょうし、私たちが耳にできる最良の音楽の一つです。
疑いもなく。

確かに、ウィーンフィルとの演奏のような人肌のぬくもりを感じさせる演奏ではありません。ゆったりと聴けるような代物ではありませんん。
しかし、指揮者とオーケストラが最高の集中力をもって作り出す音楽は、昨今の軟弱きわまる演奏を聴かされてきた耳には極上の喜びを与えてくれます。
それにしてもこの集中力は凄いの一言に尽きます。

ただし、一部では「アンコールのハンガリー行進曲はハチャメチャになっていますから、逆にその大変さを感じさせてくれます。」などと書いている人もいるのですが、それは間違っています。あの曲はもともとあんなリズムの音楽なのです。
セルという人は、ライヴでも強固な形式観を崩さないと言う印象があったのですが、逆に言えばそういう演奏しかOKを出さなかったのかも知れません。

セルの、おそらくはあずかり知らないところで発売されたCDでこんな演奏が聴けるとすると、結構爆発する人だったのかも知れません。
逆に言えば、よほど自分自身の手綱を締めておかないと内なる情熱が奔馬のように暴れ出すことを知っていたのかも知れません。
そんなあふれるような情熱の手綱を締めるだけ締めて、より高い次元で止揚したセルの芸術を多くの人に再評価してほしいと思います。

よせられたコメント

2026-08-02:アドラー


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