ショパン:ワルツ集
P:マウツジンスキ 1959年5月19~21日録音
Chopin:Waltz No.01 op18
Chopin:Waltz No.02 op34-1
Chopin:Waltz No.03 op34-2
Chopin:Waltz No.04 op34-3
Chopin:Waltz No.05 op42
Chopin:Waltz No.06 op64-1
Chopin:Waltz No.07 op64-2
Chopin:Waltz No.08 op64-2
Chopin:Waltz No.09 op69-1
Chopin:Waltz No.10 op69-2
Chopin:Waltz No.11 op70-1
Chopin:Waltz No.12 op70-2
Chopin:Waltz No.13 op70-3
Chopin:Waltz No.14
簡単な作品の解説
いわゆるウィーン風のワルツからはほど遠い作品群です。
ショパンがはじめてウィーンを訪れたときはJ.シュトラウスのワルツが全盛期の頃でしたが、その音楽を理解できないと彼は述べています。
いわゆる踊るための実用音楽としてのワルツではなく、シューマンが語ったようにそれはまさに「肉体と心が躍り上がる円舞曲」、それがショパンのワルツでした。また、全体を通して深い叙情性をたたえた作品が多いのも特徴です。
ショパンの手によってはじめてワルツと言う形式は芸術として昇華したと言えます。
ワルツ第1番 変ホ長調 作品18 「華麗なる大円舞曲」
ワルツ第2番 変イ長調 作品34-1
ワルツ第3番 イ短調 作品34-2
ワルツ第4番 ヘ長調 作品34-3「子猫のワルツ」
ワルツ第5番 変イ長調 作品42
ワルツ第6番 変ニ長調 作品64-1「子犬のワルツ」
ワルツ第7番 嬰ハ短調 作品64-2
ワルツ第8番 変イ長調 作品64-3
ワルツ第9番 変イ長調 作品69-1(遺作)
ワルツ第10番 ロ短調 作品69の2(遺作)
ワルツ第11番 変ト長調 作品70-1
ワルツ第12番 ヘ短調 作品70-2
ワルツ第13番 変ニ長調 作品70の3(遺作)
ワルツ第14番(ヘンレ版第16番)ホ短調(遺作)
ショパンてぇのは、こんな風に弾くモンだよ
「Malcuzynski」は「マウツジンスキ」と読むそうです。読み方さえ曖昧になるほどに、今ではほとんど忘れ去られた存在のピアニストですが、50年代から60年代にかけてはショパン弾きとしてそれなりのポジションを占めていたようです。それがどうして忘れ去られてしまったのかという興味もあって彼の一連の録音を聞いてみたのですが、正直なところ、その理由が全くもって分からないのです。
彼の録音を聞く前に、カペルの録音をまとめて聞いていました。カペルは若くして亡くなったこともあって、かなり忘却の淵に足を踏み込んではいるものの、知っている人は知ってるという存在で踏みとどまっています。それと比べれば、マウツジンスキの凋落ぶりは著しいものがあります。
ところが、この二人の録音を聞いてみれば、私の好みは明らかに「マウツジンスキ」です。
まず、彼の録音を聞いて真っ先に気に入ったのは、その響きの軽さです。
実に飄々と何の気負いもなくショパンのロマンを描き出していくピアノは実に魅力的です。それは、ともすれば鍵盤をぶっ叩くことに力を注ぎすぎているカペルやホロヴィッツのピアノとは対極に位置する世界です。そして、そう言う軽やかなショパンを聴いていると、カペルみたいな若手連中に対して「何もそんな青筋たててピアノを叩くモンじゃないよ。ショパンてぇのは、こんな風に弾くモンだよ」というマウツジンスキの呟きが聞こえてきそうな気になりました。
そして、彼のピアノでショパンを聴いていると、改めてショパンの音楽というのは基本的に「サロンの音楽」だったことに気づかされます。そう言う意味では、ソナタなんかよりはマズルカやワルツみたいな音楽の方がマウツジンスキにはあっているように思います。そして、もしも彼が終生このようなショパンを演奏していればもう少し彼の名前を多くの人の記憶にとどまったことでしょう。
これはあくまでも他人からの受け売りなので、自分の耳で確かめたことはにのですが、聞くところによれば60年代以降のマウツジンスキはさらに軽く淡泊なショパンになっていったそうです。50年代から60年代初めの頃のショパンが端麗な味わいだとすれば、その後は端麗が行き過ぎて「水くさく」なってしまったようなのです。そう言う意味では、60年前後に英EMIで録音された一連のショパン録音は彼の絶頂期を記録したものかもしれません。
埋もれさせるに惜しい録音をうまく拾いあげることができました。
よせられたコメント
【最近の更新(10件)】
[2025-10-02]
J.S.バッハ:幻想曲 ハ短調 BWV.562(Bach:Fantasia and Fugue in C minor, BWV 562)
(Organ)マリー=クレール・アラン:1959年11月2日~4日録音(Marie-Claire Alain:Recorded November 2-4, 1959)
[2025-09-30]
ベートーベン:合唱幻想曲 ハ短調 Op.80(Beethoven:Fantasia in C minor for Piano, Chorus and Orchestra, Op.80)
(P)ハンス・リヒター=ハーザー カール・ベーム指揮 ウィーン交響楽団 ウィーン国立歌劇場合唱団 (S)テレサ・シュティヒ=ランダル (A)ヒルデ・レッセル=マイダン (T)アントン・デルモータ (Br)パウル・シェフラ 1957年6月録音(Hans Richter-Haaser:(Con)Karl Bohm Wiener Wiener Symphoniker Staatsopernchor (S)Teresa Stich-Randall (A)Hilde Rossel-Majdan (T)Anton Dermota (Br)Paul Schoffler Recorded on June, 1957)
[2025-09-28]
エルガー:コケイン序曲 Op.40(Elgar:Cockaigne Overture, Op.40)
サー・ジョン・バルビローリ指揮 フィルハーモニア管弦楽団 1962年5月9日&8月27日録音(Sir John Barbirolli:The Philharmonia Orchestra Recorded on May 9&August 27, 1962)
[2025-09-26]
ベートーベン:交響曲第4番 変ロ長調 作品60(Beethoven:Symphony No.4 in Bflat major ,Op.60)
ジョルジュ・ジョルジェスク指揮 ブカレスト・ジョルジェ・エネスク・フィルハーモニー管弦楽団 1962年1月録音(George Georgescu:Bucharest George Enescu Philharmonic Orchestra Recorded on January, 1962)
[2025-09-24]
フォーレ:夜想曲第3番 変イ長調 作品33-3(Faure:Nocturne No.3 in A-flat major, Op.33 No.3)
(P)エリック・ハイドシェック:1960年10月21~22日録音(Eric Heidsieck:Recorded 0n October 21-22, 1960)
[2025-09-22]
ブラームス:弦楽四重奏曲 第2番 イ短調 Op. 51-2(Brahms:String Quartet No.2 in A minor, Op.51 No.2)
アマデウス弦楽四重奏団 1955年2月11日~12日&14日録音(Amadeus String Quartet:Recorde in February 11-12&14, 1955)
[2025-09-20]
エルガー:序曲「フロワッサール」, Op.19(Elgar:Froissart, Op.19)
サー・ジョン・バルビローリ指揮 ニュー・フィルハーモニア管弦楽団 1966年7月14日~16日録音(Sir John Barbirolli:New Philharmonia Orchestra Recorded on July 14-16, 1966)
[2025-09-18]
バッハ:トッカータ、アダージョとフーガ ハ長調 BWV.564(Bach:Toccata, Adagio and Fugue in C major, BWV 564)
(Organ)マリー=クレール・アラン:1959年11月2日~4日録音(Marie-Claire Alain:Recorded November 2-4, 1959)
[2025-09-16]
メンデルスゾーン:厳格な変奏曲 Op.54(Mendelssohn:Variations Serieuses, Op.54)
(P)エリック・ハイドシェック:1957年9月20日録音(Eric Heidsieck:Recorded 0n September 20, 1957)
[2025-09-14]
フランク:天使の糧(Franck:Panis Angelicus)
ルネ・レイボヴィッツ指揮 ロンドン新交響楽団 1961年録音(Rene Leibowitz:New Symphony Orchestra Of London Recorded 1961)