モーツァルト:歌曲集
(S)シュヴァルツコップ (P)ギーゼキング 1955年4月13~16日録音
Mozart:Ridentelacalma k152 「静けさはほほえみつつ」
Mozart:Oiseaux,sitouslesans k307 「鳥たちよ、毎年」
Mozart:Dansunboissolitaire k308 「さびしく暗い森で」
Mozart:Die kleineSpinnerin k531 「小さな紡ぎ娘」
Mozart:AlsLuisedieBriefe k520 「ルイーゼが不実な恋人の手紙を焼いた時」
Mozart:Abendempfindung k523 「夕べの想い」
Mozart:Das kinderspiel k598 「子供の遊び」
Mozart:DieAlte k517 「ひめごと」
Mozart:DasTraumbild k530 「夢の像」
Mozart:DasVeilchen k476 「すみれ」
Mozart:DerZauberer k472 「魔術師」
Mozart:ImFruhlingsanfang k597 「春のはじめに」
Mozart:DasLiedderTrennung k519 「別れの歌」
Mozart:DieZufriedenheit k349 「満足」
Mozart:AnChloe k524 「クローエに」
Mozart:SehnsuchtnachdemFruhlinge k596 「春へのあこがれ」
琥珀が蠅を保存している
モーツァルトにとって「歌曲」というジャンルはあまり大きな位置を占めていません。その大部分は気心の知れた友人たちとの音楽活動のために作曲されたものであり、そのような作品はモーツァルトにとっては世間に向けて発表するような性質のものではなかったようです。
ですから、現時点で確認されているモーツァルトの歌曲は30曲程度ですが、実際はこれよりもはるかに多くの作品が作曲されたのではないかと思われます。もったいない話です。
またその作品群は、シューベルト以降のドイツ・リートの世界においてみるとかなり雰囲気が異なります。アインシュタインも「彼は確かにドイツ語のテクストに作曲はしているものの、それがドイツリートになったかどうかは疑問である」と述べています。
その理由として、モーツァルトが選択したテクストの大部分が「小詩人、もしくは最小詩人」の手になるものであり、そのテクストは音楽をつけるための一つのきっかけにしかすぎなかったことを上げています。
それは、詩に対する鋭敏な感覚を持ち、決して三文詩人の詩には音楽をつけようとしなかったシューベルトとは根本的に異なります。
では、モーツァルトの歌曲はシューベルトに対して劣るのかと言われれば、返答に困ってしまいます。
おそらく、シューベルト以降のドイツリートの世界において眺めてみれば不十分さは感じるのでしょう。しかし、モーツァルトは疑いもなくシューベルト以前の音楽家であり、そう言う「お約束ごと」から解放してその音楽に浸ってみれば実にチャーミングであり魅力的です。
そう言えば、アインシュタインはモーツァルトの音楽とテクストを提供した詩人の関係を「琥珀が蠅を保存している」と言いました。何とも強烈な物言いですが正鵠を射ています。
シューベルトの歌曲は音楽によって詩がより高い次元へと引き上げられます。しかし、モーツァルトの音楽は決して「蠅」を高めることはありません。しかし、たとえ中に保存されているものが「蠅」であっても琥珀はやはり美しいのです。
この上もなくチャーミングなモーツァルト
シュヴァルツコップの全盛期は疑いもなく50年代です。それは、カラヤンの指揮で録音した「薔薇の騎士」(そう言えばこれもまたアップするのを忘れている・・・^^;)などを聞けば分かることですが、もう一つ、このモーツァルトの歌曲集が実に魅力的です。
彼女はギーゼキングという最高のサポートを得て16曲の歌曲を55年に録音しています。17曲が収録された国内盤も発売されたことがあるようなのですが、本家のレコードでは常に16曲でリリースされています。
これは、おそらくはシュヴァルツコップが途中で駄目出しをしたのだろうと思います。それも。最後の編集段階で「NG」を出したので、既にマスターのコピーを送ってしまったところではそのままリリースされたのだろうと想像されます。
実際、シュヴァルツコップという人はなかなか「OK」を出さないので有名な人で、その判断基準も余人では推測しかねるようなものだったので、かなりレコード会社泣かせだったようです。
ということで、今回は16曲の方でアップしています。
さて、演奏の方ですが、これはもうチャーミングの一言につきます。そして、それを支えるギーゼキングのピアノが実に透明感の高い冴え冴えとした響きを聞かせてくれます。
つまりは、お互いのベクトルは正反対とまでは言わないものの、異種格闘技のような風情が漂います。
しかし、それが一つに出会うと、ギーゼキングのピアノはより冴え冴えとした魅力が引き立ち。逆にシュヴァルツコップの歌はよりチャーミングに響くから不思議です。
そして、この時代のシュヴァルツコップはまだ声を失っていない時機ですので、妙なテクニックに頼ることもなく実に自然で素直な歌いぶりなので違和感も感じません。
録音もきわめて良好なので、未だにこれと肩を並べうるモーツァルトの歌曲は、白井光子以外には思い浮かびません。
実に大きな取りこぼしがあったものです。
<収録されている作品>
1:Ridentelacalma k152 「静けさはほほえみつつ」
2:Oiseaux,sitouslesans k307 「鳥たちよ、毎年」
3:Dansunboissolitaire k308 「さびしく暗い森で」
4:Die kleineSpinnerin k531 「小さな紡ぎ娘」
5:AlsLuisedieBriefe k520 「ルイーゼが不実な恋人の手紙を焼いた時」
6:Abendempfindung k523 「夕べの想い」
7:Das kinderspiel k598 「子供の遊び」
8:DieAlte k517 「ひめごと」
9:DasTraumbild k530 「夢の像」
10:DasVeilchen k476 「すみれ」
11:DerZauberer k472 「魔術師」
12:ImFruhlingsanfang k597 「春のはじめに」
13:DasLiedderTrennung k519 「別れの歌」
14:DieZufriedenheit k349 「満足」
15:AnChloe k524 「クローエに」
16:SehnsuchtnachdemFruhlinge k596 「春へのあこがれ」
よせられたコメント
2011-01-09:ヨシ様
- 何と言う清楚でチャーミングな歌声なのでしょう。
「素晴らしい。」の一言に尽きますね。
2011-01-16:W. Amadeus M.
- 素晴らしい演奏ですね。
私の愛聴盤です。これほど素晴らしいリート歌手は二度と現れないでしょうね。
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