クラシック音楽へのおさそい~Blue Sky Label~

ブラームス:交響曲第1番 ハ短調 作品68

カラヤン指揮 フィルハーモニア管弦楽団 1952年5月&7月録音





Brahms:交響曲第1番 「第1楽章」

Brahms:交響曲第1番 「第1楽章」

Brahms:交響曲第1番 「第1楽章」

Brahms:交響曲第1番 「第1楽章」


ベートーヴェンの影を乗り越えて

 ブラームスにとって交響曲を作曲するということは、ベートーヴェンの影を乗り越えることを意味していました。それだけに、この第1番の完成までには大変な時間を要しています。

 彼がこの作品に着手してから完成までに要した20年の歳月は、言葉を変えればベートーヴェンの影がいかに大きかったかを示しています。そうして完成したこの第1交響曲は、古典的なたたずまいをみせながら、その内容においては疑いもなく新しい時代の音楽となっています。


 この交響曲は、初演のときから第4楽章のテーマが、ベートーヴェンの第9と似通っていることが指摘されていました。それに対して、ブラームスは、「そんなことは、聞けば豚でも分かる!」と言って、きわめて不機嫌だったようです。

 確かにこの作品には色濃くベートーヴェンの姿が影を落としています。最終楽章の音楽の流れなんかも第9とそっくりです。姿・形も古典派の交響曲によく似ています。
 しかし、ここに聞ける音楽は疑いもなくロマン派の音楽そのものです。

 彼がここで問題にしているのは一人の人間です。人類や神のような大きな問題ではなく、個人に属するレベルでの人間の問題です。
 音楽はもはや神をたたるものでなく、人類の偉大さをたたえるものでもなく、一人の人間を見つめるものへと変化していった時代の交響曲です。

 しかし、この作品好き嫌いが多いようですね。
 嫌いだと言う人は、この異常に気合の入った、力みかえったような音楽が鬱陶しく感じるようです。
 好きだと言う人は、この同じ音楽に、青春と言うものがもつ、ある種思いつめたような緊張感に魅力を感じるようです。

 ユング君は、若いときは大好きでした。
 そして、もはや若いとはいえなくなった昨今は、正直言って少し鬱陶しく感じてきています。(^^;;
 かつて、吉田秀和氏が、力みかえった青春の澱のようなものを感じると書いていて、大変な反発を感じたものですが、最近はこの言葉に幾ばくかの共感を感じます。
 それだけ年をとったということでしょうか。

 なんだか、リトマス試験紙みたいな音楽です。

カラヤンはこの交響曲が大好きだったようです。


彼がこの作品を初めて録音したのは確か戦時中の事で、お相手はコンセルトヘボウだったはずです。戦後は一時日の目を見ない日々を送ったカラヤンですが、レッグに見込まれてフィルハーモニアと活動を始めると、早速にブラ1を録音しています。(ここで紹介している演奏です)
そして、その後ベルリン、ウィーンを手中に収めた50年代の末にはウィーンフィルと録音し、その後も手兵のベルリンフィルと何回も(確か3回?)録音・録画をしています。ある人は、このベルリンフィルとの録音を「60年代=素直、70年代=ドーピング、80年代=重厚」と評していて、「70年代=ドーピング」には、あまりにもピッタリの表現なので思わず笑ってしまいました。
では、ベルリン以前の演奏はどうかと聞かれると、これは残念ながら、「実に見事だった!」と答えざるを得ません。特に、59年録音のウィーンフィル盤についてはすでに語り尽くされています。この作品の決定盤と言ってもいいほどの演奏だと言えます。そして、それ以前のフィルハーモニア盤も、味わいは全く違いますが、これはこれで、実に立派です。

そして、この演奏から受ける印象が以前にベートーベンについて書いたものと全く同一です。
以前、こんな風に書きました。

「この時代のカラヤンは「ドイツのトスカニーニ」と呼ばれたこともあるそうですが、この50年代の録音を聞くとトスカニーニよりはワインガルトナーなんかの方がより近しいのではないかと思ってしまいます。奇をてらわず音楽を自然な形で構築していく姿はそう言う先人たちの姿にだぶるものがあります。」

「ぼんやり聞いていると、この50年代のフィルハーモニア管弦楽団との録音は特徴のない面白味のないものに聞こえるかもしれません。しかし、一切のはったりを排して音楽をあるがままに造形することでこれほども説得力の強いものを作っていくというのはなかなかどうして、並大抵の力量ではありません。」

聞き終わった後に、いい音楽を聴かせてもらったなと言う充実感をもらえる演奏であることは事実です。
人というのは、年を重ねるにつれて進歩していくというのは、時には「虚構」のようです・・・なんて書いたらカラヤンファンから叱られるかな?

よせられたコメント

2012-01-17:沖 敏文


2013-02-19:マオ


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