クラシック音楽へのおさそい~Blue Sky Label~

シューベルト:ピアノソナタ(第20番) イ長調 D.959

シュナーベル:1937年1月15日録音





Schubert:ピアノソナタ第20番 D.959 「第1楽章」

Schubert:ピアノソナタ第20番 D.959 「第2楽章」

Schubert:ピアノソナタ第20番 D.959 「第3楽章」

Schubert:ピアノソナタ第20番 D.959 「第4楽章」


心屈したときにこそ聴きたい音楽

シューベルト死の年の3連作の第2番目の作品で、D.664のイ長調ソナタと区別するために「大きなイ長調」というニックネームがついています。実際それは大きな作品であり、ベートーベン的な語法によって完成された最も優れたソナタだといえます。
シューベルトはベートーベン的な動機労作を自由自在に操り、それによってベートーベン的なものを総決算して次の新たな一歩への踏み切り板とした作品です。
うがった見方かもしれませんが、それは一年前になくなったベートーベンその人への追悼であると同時に、シューベルトの内にあり続けたベートーベン的なものへの追悼であったのかもしれません。

しかし、ベートヴェニアーナの一つの頂点を築く作品でありながら、その作品のあちこちからはシューベルトならではの哀愁に満ちた歌も聞こえてきます。例えば終楽章は彼の歌曲を思わせるような親しみ深いメロディで始まります。第3楽章も妖精のダンスを思わせるような愛らしさに満ちています。
そしてもっとも素晴らしいのは、黄昏の中、孤独をかみしめて一人彷徨うような風情の第2楽章です。
憂いに満ちた旋律がひっそりと歌いつがれていくあたりは、シューベルト以外の誰も書き得なかった音楽です。そして、その印象的なメロディは即興的な中間部を経て再びかえってくるのですが、それが様々な装飾をほどこされて変奏されていく中で憂愁の気配はますます強くなっていきます。

心屈したときにこそ聴きたい音楽です。

シューベルトのピアノソナタを積極的に紹介したシュナーベル


シューベルトのピアノソナタは今日ではピアニストたちにとって貴重なプログラムとなっていますが、20世紀の初期においては決して重要な作品とはなっていませんでした。
これは歴史的録音を探していて気づいたことなのですが、録音そのものが非常に少ないのです。
そんな中にあって、シュナーベルは演奏会でもよく取り上げ、録音も数多く残して、シューベルトのピアノソナタの普及につとめました。

そして、これはユング君の私見ですが、シュナーベルにとってベートーベンよりもシューベルトの方が体質的に相性が良かったのではないかと思ってしまいます。
ベートーベンのソナタでは、ストイックに演奏することを自らに強いているように感じるときがありますが、シューベルトではもっとくつろいで演奏しているに感じられます。シューベルトらしい歌心に満ちたところではテンポを動かしてロマンティックに演奏していて、それはシュナーベル自身の肉声にふれるような思いがします。

よせられたコメント

【リスニングルームの更新履歴】

【最近の更新(10件)】



[2025-06-04]

エルガー:交響曲第2番変ホ長調Op.63(Elgar:Symphony No.2 in E-flat major, Op.63)
サー・ジョン・バルビローリ指揮 ハレ管弦楽団 1954年6月日~9日録音(Sir John Barbirolli:Philharmonic Hall Recorded on June 8-9, 1954)

[2025-06-01]

ベートーベン:交響曲第2番 ニ長調 作品36(Beethoven:Symphony No.2 in D major)
ヨーゼフ・カイルベルト指揮 バンベルク交響楽団 1959年録音(Joseph Keilberth:Bamberg Symphony Recorded on 1959)

[2025-05-29]

ラヴェル:組曲「クープランの墓(管弦楽版)」(Ravel:Le Tombeau de Couperin)
ユージン・オーマンディ指揮 フィラデルフィア管弦楽団 1958年11月16日録音(Eugene Ormandy:Philadelphis Orchestra Recorded on November 16, 1958)

[2025-05-26]

チャイコフスキー:ヴァイオリン協奏曲 ニ長調, Op.35(Tchaikovsky:Violin Concerto in D major Op.35)
(Vn)アルフレード・カンポーリ:アタウルフォ・アルヘンタ指揮 ロンドン交響楽団 1956年12月27日~28日録音(Alfredo Campoli:(Cin)Ataulfo Argenta London Symphony Orchestra Recorded on December 27-28, 1955)

[2025-05-22]

ベートーベン:交響曲第1番 ハ長調 作品21(Beethoven:Symphony No.1 in C major , Op.21)
ヨーゼフ・カイルベルト指揮 バンベルク交響楽団 1959年録音(Joseph Keilberth:Bamberg Symphony Recorded on 1959)

[2025-05-18]

ラヴェル:スペイン狂詩曲(Ravel:Rhapsodie espagnole)
ユージン・オーマンディ指揮 フィラデルフィア管弦楽団 1963年2月24日録音(Eugene Ormandy:Philadelphis Orchestra Recorded on February 24, 1963)

[2025-05-15]

エルガー:ヴァイオリン協奏曲 ロ短調, Op.61(Elgar:Violin Concerto in B minor, Op.61)
(Vn)アルフレード・カンポーリ:サー・エードリアン・ボールト指揮 ロンドン・フィルハーモニー管弦楽団 1954年10月28日~29日録音(Alfredo Campoli:(Con)Sir Adrian Boult The London Philharmonic Orchestra Recorded on October 28-29, 1954)

[2025-05-12]

ラヴェル:舞踏詩「ラ・ヴァルス」(Ravel:La valse)
ユージン・オーマンディ指揮 フィラデルフィア管弦楽団 1963年1月30日録音(Eugene Ormandy:Philadelphis Orchestra Recorded on January 30, 1963)

[2025-05-09]

ブラームス:交響曲第4番 ホ短調, Op.98(Brahms:Symphony No.4 in E minor, Op.98)
ヨーゼフ・カイルベルト指揮 ハンブルク・フィルハーモニー管弦楽楽団 1960年録音(Joseph Keilberth:Hamburg Philharmonic Orchestra Recorded on 1960)

[2025-05-06]

ショパン:ノクターン Op.55&Op.62&Op.72&Op-posth(Chopin:Nocturnes for piano, Op.55&Op.62&Op.72)
(P)ギオマール・ノヴァエス:1956年発行(Guiomar Novaes:Published in 1956)

?>