クラシック音楽へのおさそい~Blue Sky Label~

ベートーベン:ピアノソナタ第8番「悲愴」

シュナーベル 1934年4月23日 録音





Beethoven:ピアノソナタ第8番「第1楽章」

Beethoven:ピアノソナタ第8番「第2楽章」

Beethoven:ピアノソナタ第8番「第3楽章」


これを若書きの作品といえばベートーベンに失礼かもしれません。

凡百の作曲家のピアノ作品と比べれば堂々たる音楽です。
 しかし、中期・後期の傑作を知っているものには、やはりこのソナタは若書きの範疇に入らざるを得ません。

 冒頭の一度聞いたら絶対に忘れることのない動機がこの楽章全体の基礎になっていることは明らかです。この動機をもとにした序奏部が10小節にわたって展開され、その後早いパッセージノ経過句をはさんで核心のソナタ部へ突入していきます。
 悲愴、かつ幻想的な序奏部からソナタの核心へのこの一気の突入はきわめて印象的です。
 その後、この動機は展開部やコーダの部分で繰り返しあらわれますが、それが結果としてある種の悲壮感が楽章全体をおおうこととなります。
 それがベートーベン自身がこの作品に「悲愴」という表題をつけたゆえんです。


 しかし、ここに聞ける悲壮感は後期の作品に聞ける、心の奥底を揺さぶるような性質のものではありません。
 長い人生を生きたものが苦さと諦観の彼方に吐き出す悲しみではなく、それはあくまでも若者が持つところの悲壮感です。

 ならば、それは後期の一連の作品と比べれば劣るのかと言われれば、答えはイエスであると同時にノーです。
 なぜなら、後期のベートーベンの作品は後期のベートーベンにしか書けなかったように、この作品もまた若きベートーベンにしか書けない作品です。
 年を重ねた人間にはかけない音楽です。

 そして、重い主題を背負った音楽ばかり聞くというのはしんどいことです。時には、悲壮感のなかに甘さをたっぷりと含みながらも、若者らしい瑞々しさを失わない音楽もいいものです。
 それに、ユング君には無理ですが、この作品はベートーベンのピアノソナタのなかでは演奏が最も優しい部類に属します。

 ある程度ピアノが弾ける人なら、過ぎ去りし青春の日々に思いを馳せながら演奏してみるのも楽しいのではないでしょうか。
 (ユング君もこれぐらいの曲が弾けるようになればいいなといつも思っているのですが、道は遠いです。)

初期ピアノソナタの傑作


第1楽章
 クラーヴェ(4分の4拍子)−アレグロ・ディ・モルト・エ・コン・ブリオ ハ短調 2分の2拍子 ソナタ形式

第2楽章
 アダージョ・カンタービレ 変イ長調 4分の2拍子 3部形式

ベートーベンが書いたもっとも優れた音楽の一つ、と言って過言はないでしょう。今までの緩徐楽章も申し分なく美しい音楽でしたが、ここではその美しさが一種の祈りにもにた形へと昇華されています。

第3楽章
 アレグロ ハ短調 2分の2拍子 ロンド形式

よせられたコメント

2009-02-23:うに


【リスニングルームの更新履歴】

【最近の更新(10件)】



[2025-07-24]

コダーイ: ガランタ舞曲(Zoltan Kodaly:Dances of Galanta)
ユージン・オーマンディ指揮 フィラデルフィア管弦楽団 1962年12月9日録音(Eugene Ormandy:Philadelphis Orchestra Recorded on December 9, 1962)

[2025-07-22]

エルガー:行進曲「威風堂々」第2番(Elgar:Pomp And Circumstance Marches, Op. 39 [No. 2 in A Minor])
サー・ジョン・バルビローリ指揮 ニュー・フィルハーモニア管弦楽団 1966年7月14日~16日録音(Sir John Barbirolli:New Philharmonia Orchestra Recorded on July 14-16, 1966)

[2025-07-20]

ショパン:ポロネーズ第6番 変イ長調, Op.53「英雄」(管弦楽編曲)(Chopin:Polonaize in A flat major "Heroique", Op.53)
ルネ・レイボヴィッツ指揮 ロンドン新交響楽団 1961年録音(Rene Leibowitz:New Symphony Orchestra Of London Recorded 1961)

[2025-07-18]

バッハ:トッカータとフーガ ニ短調 BWV.565(Bach:Toccata and Fugue in D Minor, BWV 565)
(Organ)マリー=クレール・アラン:1959年11月2日~4日録音(Marie-Claire Alain:Recorded November 2-4, 1959)

[2025-07-16]

ワーグナー:ローエングリン第3幕への前奏曲(Wagner:Lohengrin Act3 Prelude)
ユージン・オーマンディ指揮 フィラデルフィア管弦楽団 1959年12月30日録音(Eugene Ormandy:Philadelphis Orchestra Recorded on December 30, 1959)

[2025-07-15]

ワーグナー:「タンホイザー」序曲(Wagner:Tannhauser Overture)
ユージン・オーマンディ指揮 フィラデルフィア管弦楽団 1964年12月7日録音(Eugene Ormandy:Philadelphis Orchestra Recorded on December 7, 1964)

[2025-07-11]

ベートーベン:交響曲第6番 ヘ長調 作品68 「田園」(Beethoven:Symphony No.6 in F major, Op.68 "Pastoral")
ヨーゼフ・カイルベルト指揮 バンベルク交響楽団 1960年録音(Joseph Keilberth:Bamberg Symphony Recorded on 1960)

[2025-07-09]

エルガー:行進曲「威風堂々」第1番(Elgar:Pomp And Circumstance Marches, Op. 39 [No. 1 In D Major])
サー・ジョン・バルビローリ指揮 フィルハーモニア管弦楽団 1962年8月28日~29日録音(Sir John Barbirolli:Philharmonia Orchestra Recorded on August 28-29, 1962)

[2025-07-07]

バッハ:幻想曲とフーガ ハ短調 BWV.537(J.S.Bach:Fantasia and Fugue in C minor, BWV 537)
(organ)マリー=クレール・アラン:1961年12月10日~12日録音(Marie-Claire Alain:Recorded December 10-12, 1961)

[2025-07-04]

メンデルスゾーン:ヴァイオリン協奏曲 ホ短調, Op.64(Mendelssohn:Violin Concerto in E minor Op.64)
(Vn)ヨーゼフ・シゲティ:トーマス・ビーチャム指揮 ロンドン・フィルハーモニー管弦楽団 1933年録音(Joseph Szigeti:(Con)Sir Thomas Beecham London Philharmonic Orchestra Recoreded on 1933)

?>