クラシック音楽へのおさそい~Blue Sky Label~

バッハ:無伴奏フルートのためのパルティータ イ短調 BWV1013

(Fl)ランパル 1962年1月27日&2月8日録音



Bach:Partita in A minor, BWV 1013[1.Allemande]

Bach:Partita in A minor, BWV 1013[2.Corrente]

Bach:Partita in A minor, BWV 1013[3.Sarabande]

Bach:Partita in A minor, BWV 1013[4.Bourree anglaise]


名人芸が必要

さすがに同じフルートによる無伴奏音楽でもバッハとなると格が違うのは誰の耳にも明らかです。もっとも、どういう風に「格」が違うのかきちんと説明してみろ、と言われると困ってしまうのですが、まあ無理して言葉に変換すると、演奏時間はテレマンのものと較べて2倍ちょっとくらいなのですが、その時間の中でこちらに伝わってくる情報量は2倍どころではないと言う・・・あたりでしょうか。

とにかく、音楽全体を支配する疾走感というかスピード感というか、そう言うものが半端じゃないです。

ただし、そのぶん、アマチュアでも十分演奏が可能だったテレマンの音楽と較べると、こちらの方はかなりの名人芸が求められます。
例えば、第1楽章「アルマンド」の常に揺れ動くような音楽は、フルートを想定して書かれたとは思えないものです。一つのフレーズの終わりが次の新しいフレーズのはじまりになっているような部分もありますから、どう考えてもブレスする必要のある楽器を前提としているとは思えません。
聞くところによると、この作品の楽譜は有名な「無伴奏ヴァイオリンのためのソナタとパルティータ」全6曲とまとめて写譜されていたそうです。そして、「無伴奏ヴァイオリン・ソナタ BWV1003」のアレグロとこのアルマンドは雰囲気が非常に似通っていますから、おそらくは当初は弦楽器を想定して書かれたものかもしれません。
もっとも、最終的に、バッハはフルートを前提として作品を完成させたのですから演奏できないわけはないのですが、かなりたいへんであることは事実です。
また、最後の「ブレー・アングレーズ」もかなりのスピード感が要求されますから、こちらもまたかなりの名人芸が必要です。

ただし、この作品はケーテン時代に書かれているのですが、果たしてこの作品を真っ当に演奏できるフルート奏者がいたのだろうか、と言う疑問は残ります。

立て続けに録音しているのですが・・・


ランパルはこの作品を1962年に録音しているのですが、何を思ったのかわずか1年後の63年にもう一度録音しています。


  1. 1962年1月27日&2月8日録音

  2. 1963年3月9日&29日録音



普通に考えればあり得ないことなので、おそらくは、ランパル自身が一度はOKを出した62年の録音に、その後どうしても我慢できない問題点を感じたとしか思えません。
そこで、この二つの演奏を聞き比べてみたのですが、一聴して気がつくのはテンポ設定の違いです。63年録音の方が圧倒的に早いのです。

62年盤:11分39秒



  1. アルマンド:3分16秒

  2. クーラント:2分22秒

  3. :サラバンド4分21秒

  4. ブーレ・アングレーズ:2分17秒



63年盤:10分45秒



  1. アルマンド:2分53秒

  2. クーラント:2分14秒

  3. サラバンド:4分4秒

  4. ブーレ・アングレーズ:1分33秒



11分程度の音楽で、トータルの演奏時間は1分以上も短くなっているのですから、聞いた感じとしてはかなり早くなっていると感じます。また、フレーズの作り方も少し間延びした感じのする62年盤に対して63年盤の方はかなり引き締まった造形になっています。さらに細かく聞いていくと叙情的なサラバンドなどでもフレーズの浮き上がらせ方がより明確になっています。
ですから、ただ端に、おれはもっと早く吹けるぞ!みたいな自今顕示欲で録り直したわけではないようです。

最初に62年盤を聞いたすぐ後に63年盤を聞くと、いささか「前のめり」になっている雰囲気がして落ち着かなかったのですが、じっくり聞いてみると、確かにじっくりと作り込まれた演奏になっていることは間違いないようです。

よせられたコメント

【リスニングルームの更新履歴】

【最近の更新(10件)】



[2025-07-24]

コダーイ: ガランタ舞曲(Zoltan Kodaly:Dances of Galanta)
ユージン・オーマンディ指揮 フィラデルフィア管弦楽団 1962年12月9日録音(Eugene Ormandy:Philadelphis Orchestra Recorded on December 9, 1962)

[2025-07-22]

エルガー:行進曲「威風堂々」第2番(Elgar:Pomp And Circumstance Marches, Op. 39 [No. 2 in A Minor])
サー・ジョン・バルビローリ指揮 ニュー・フィルハーモニア管弦楽団 1966年7月14日~16日録音(Sir John Barbirolli:New Philharmonia Orchestra Recorded on July 14-16, 1966)

[2025-07-20]

ショパン:ポロネーズ第6番 変イ長調, Op.53「英雄」(管弦楽編曲)(Chopin:Polonaize in A flat major "Heroique", Op.53)
ルネ・レイボヴィッツ指揮 ロンドン新交響楽団 1961年録音(Rene Leibowitz:New Symphony Orchestra Of London Recorded 1961)

[2025-07-18]

バッハ:トッカータとフーガ ニ短調 BWV.565(Bach:Toccata and Fugue in D Minor, BWV 565)
(Organ)マリー=クレール・アラン:1959年11月2日~4日録音(Marie-Claire Alain:Recorded November 2-4, 1959)

[2025-07-16]

ワーグナー:ローエングリン第3幕への前奏曲(Wagner:Lohengrin Act3 Prelude)
ユージン・オーマンディ指揮 フィラデルフィア管弦楽団 1959年12月30日録音(Eugene Ormandy:Philadelphis Orchestra Recorded on December 30, 1959)

[2025-07-15]

ワーグナー:「タンホイザー」序曲(Wagner:Tannhauser Overture)
ユージン・オーマンディ指揮 フィラデルフィア管弦楽団 1964年12月7日録音(Eugene Ormandy:Philadelphis Orchestra Recorded on December 7, 1964)

[2025-07-11]

ベートーベン:交響曲第6番 ヘ長調 作品68 「田園」(Beethoven:Symphony No.6 in F major, Op.68 "Pastoral")
ヨーゼフ・カイルベルト指揮 バンベルク交響楽団 1960年録音(Joseph Keilberth:Bamberg Symphony Recorded on 1960)

[2025-07-09]

エルガー:行進曲「威風堂々」第1番(Elgar:Pomp And Circumstance Marches, Op. 39 [No. 1 In D Major])
サー・ジョン・バルビローリ指揮 フィルハーモニア管弦楽団 1962年8月28日~29日録音(Sir John Barbirolli:Philharmonia Orchestra Recorded on August 28-29, 1962)

[2025-07-07]

バッハ:幻想曲とフーガ ハ短調 BWV.537(J.S.Bach:Fantasia and Fugue in C minor, BWV 537)
(organ)マリー=クレール・アラン:1961年12月10日~12日録音(Marie-Claire Alain:Recorded December 10-12, 1961)

[2025-07-04]

メンデルスゾーン:ヴァイオリン協奏曲 ホ短調, Op.64(Mendelssohn:Violin Concerto in E minor Op.64)
(Vn)ヨーゼフ・シゲティ:トーマス・ビーチャム指揮 ロンドン・フィルハーモニー管弦楽団 1933年録音(Joseph Szigeti:(Con)Sir Thomas Beecham London Philharmonic Orchestra Recoreded on 1933)

?>