モーツァルト:ディヴェルティメント第17番 K334
レナー四重奏団 Hr:オーベリー&デニス・ブレイン 1939年2月16日録音
Mozart:ディヴェルティメント第17番 K334「?.Allegro」
Mozart:ディヴェルティメント第17番 K334「?.Tema con variazioni」
Mozart:ディヴェルティメント第17番 K334「?.Menuetto」
Mozart:ディヴェルティメント第17番 K334「?.Adagio」
Mozart:ディヴェルティメント第17番 K334「?.Menuetto」
Mozart:ディヴェルティメント第17番 K334「?.Rondo. Allegro」
ザルツブルグ時代最後のディヴェルティメント
失意のパリ旅行からウィーンへの旅立ちまでの数年間がモーツァルトにとっての最後のザルツブルグ時代となります。彼はこの数年間に何曲かのディヴェルティメントを残していますが、このK334はその中の最後を飾る作品です。
創作のきっかけはモーツァルト一家の親しい友人であり、かつ大富豪の貴族でもあったロービニヒ家からの依頼によるものです。ですから、モーツァルト自身もこの作品のことを「ロービニヒの音楽」と呼んでいました。
ディヴェルティメントという音楽はお祝い事や式典のための実用音楽として依頼されるものですから、一定の「長さ(演奏時間)」が要求されます。ですから、どこか無理をして引き延ばしたような、言葉をかえれば水で薄めたワインのような味気なさを感じることがよくあります。それは、モーツァルトと言えども同じであって、特に庭園音楽として演奏されることを前提とした管楽器によるディヴェルティメントなどではその傾向は顕著です。アインシュタインも「これら管楽器のためのディヴェルティメントを一つ一つ扱う必要はない。・・・気むずかしい案出もなく緊張もない、形式の遊びである」と述べています。
しかし、このザルツブルグ時代の最後を飾るK334のディヴェルティメントは、その情愛の深さとときおり顔を見せる憂愁の影によって、同時代のディヴェルティメントからは一つ頭の抜けた作品となっています。
この作品は、第3楽章が「モーツァルトのメヌエット」としてあまりにも有名です。しかし、本当にすばらしいのは中間の緩序楽章です。
最初の緩序楽章はアンダンテの主題と6つの変奏曲から成り立つのですが、まるで厳粛な四重奏曲を聴くような趣があります。ウィーンフィルの名コンサートマスターであったヘッツェルが「曲の真ん中あたりから作曲者は娯楽音楽ということを忘れているようだ。」と述べていますが、全く同感です。
2番目のアダージョはヴァイオリンのためのコンチェルトになっています。独奏ヴァイオリンが始めから終わりまで雄弁に語っていながら、他の伴奏楽器も沈黙してしまうことはありません。さらに、両端の楽章が持つ優美な感覚にあふれた音楽はただ単に耳に心地よいというレベルを突き抜けた天国的なものを感じさせてくれます。この両端楽章はともに9分をこえる長大な楽章なのですが、水で薄めたような味気なさとは無縁の音楽です。
そして、中間に挟み込まれた二つのメヌエットがこの作品を深刻なものにすることをふせぎ、この作品がディヴェルティメントであったことを私たちに思い出させてくれます。
疑いもなく、ディヴェルティメントの理想の姿がここにあります。
第1楽章 Allegro ニ長調 4分の4拍子 ソナタ形式。
第2楽章 Andante ニ短調 4分の2拍子 主題と6つの変奏
第3楽章 Menuetto ニ長調 4分の3拍子 モーツァルトの最も有名なメヌエット
第4楽章 Adagio イ長調 2分の2拍子 ソナタ形式
第5楽章 Menuetto ニ長調 4分の3拍子
第6楽章 Allegro ニ長調 8分の6拍子 ロンド形式
デニス・ブレインの初録音
この演奏は、不世出のホルン奏者、デニス・ブレインの初録音として長く記憶されてきました。ユング君もそのつもりでこの音源を入手したのですが、聞いてみて感心させられたのはレナー四重奏団の方です。
確かにこのようにねっちりと歌い上げたモーツァルトというのは今の時代には違和感があるかもしれませんし、拒絶反応を感じる人もいるでしょう。おまけに、アンサンブルもゆるめですから、何かぬるま湯に使っているような風情もあります。
でも、たまにはそうしてのんびりとお湯につかっているのもいいものだと思わせてしまう力があることも事実です。
デニス・ブレインを偲び、さらには一昔前のモーツァルト演奏のスタイルを話の種として聞くだけでも値打ちはあるといえます。
よせられたコメント 2014-02-12:Joshua ブレイン父子の演奏を聴いて思い出すことがあります。
30年も昔、わたしはホルンを吹いていましたが、
M・W君という、すばらしいアマチュア奏者がいて、彼のセカンドで
音楽経験をさせてもらいました。上手い人と吹くと、自分の実力以上のものが
出るのは事実です。息子のデニスがうまくなるのは当然です。 2021-09-17:笑枝 素晴らしい演奏ですね。SP ならではのライヴ感!
貴重な音源、アップに感謝です。 2022-12-08:トリス ブレイン親子のホルン目当てで聞かせてもろうと聞いていたのですがユングさんのおっしゃるとうりレナークァルテットが素晴らしいかったです。あの歌いましたまらないですね、これぞディヴェルティントの楽しさですね
【最近の更新(10件)】
[2025-09-06]
バッハ:小フーガ ト短調 BWV.578(Bach:Fugue in G minor, BWV 578)
(Organ)マリー=クレール・アラン:1959年11月2日~4日録音(Marie-Claire Alain:Recorded November 2-4, 1959)
[2025-09-04]
レスピーギ:ローマの噴水(Respighi:Fontane Di Roma)
ジョン・バルビローリ指揮 ニューヨーク・フィルハーモニー交響楽団 1939年1月21日録音(John Barbirolli:Philharmonic-Symphony Of New York Recorded on January 21, 1939)
[2025-09-01]
フォーレ:夜想曲第1番 変ホ短調 作品33-1(Faure:Nocturne No.1 in E-flat minor, Op.33 No.1)
(P)エリック・ハイドシェック:1960年10月21~22日録音(Eric Heidsieck:Recorded 0n October 21-22, 1960)
[2025-08-30]
ベートーベン:交響曲第2番 ニ長調 作品36(Beethoven:Symphony No.2 in D major ,Op.36)
ジョルジュ・ジョルジェスク指揮 ブカレスト・ジョルジェ・エネスク・フィルハーモニー管弦楽団 1961年4月20日録音(George Georgescu:Bucharest George Enescu Philharmonic Orchestra Recorded on April 20, 1961)
[2025-08-28]
ラヴェル:舞踏詩「ラ・ヴァルス」(Ravel:La valse)
ルネ・レイボヴィッツ指揮 パリ・コンセール・サンフォニーク協会管弦楽団 1960年録音(Rene Leibowitz:Orcheste de la Societe des Concerts du Conservatoire Recorded on 1960)
[2025-08-26]
フランク:交響詩「呪われた狩人」(Franck:Le Chasseur maudit)
アルトゥール・ロジンスキー指揮 ウィーン国立歌劇場管弦楽団 1954年6月27~7月11日録音(Artur Rodzinski:Wiener Staatsoper Orchester Recorded on June 27-July 11, 1954)
[2025-08-24]
J.S.バッハ:トッカータとフーガ ヘ長調 BWV.540(J.S.Bach:Toccata and Fugue in F major, BWV 540)
(Organ)マリー=クレール・アラン:1959年11月2日~4日録音(Marie-Claire Alain:Recorded November 2-4, 1959)
[2025-08-22]
ドビュッシー:牧神の午後への前奏曲(Debussy:Prelude a l'apres-midi d'un faune)
ルネ・レイボヴィッツ指揮 ロンドン・フェスティヴァル管弦楽団 1960年録音(Rene Leibowitz:London Festival Orchestra Recorded on 1960)
[2025-08-20]
エルガー:行進曲「威風堂々」第5番(Elgar:Pomp And Circumstance Marches, Op. 39 [No. 5 in C Major])
サー・ジョン・バルビローリ指揮 ニュー・フィルハーモニア管弦楽団 1966年7月14日~16日録音(Sir John Barbirolli:New Philharmonia Orchestra Recorded on July 14-16, 1966)
[2025-08-18]
ベートーベン:交響曲第1番 ハ長調 作品21(Beethoven:Symphony No.1 in C major , Op.21)
ジョルジュ・ジョルジェスク指揮 ブカレスト・ジョルジェ・エネスク・フィルハーモニー管弦楽団 1961年5月録音(George Georgescu:Bucharest George Enescu Philharmonic Orchestra Recorded on May, 1961)