クラシック音楽へのおさそい~Blue Sky Label~

ショパン: ピアノ協奏曲第2番 ヘ短調 Op.21(Chopin:Piano Concerto No.2 in F minor, Op.21)

(P)ジーナ・バッカウアー:アンタル・ドラティ指揮 ロンドン交響楽団 1964年6月録音(Gina Bachauer:(Con)Antal Dorati London Symphony Orchestra Recorded on June, 1964)



Chopin:Piano Concerto No.2 in F minor, Op.21 [1.Maestoso]

Chopin:Piano Concerto No.2 in F minor, Op.21 [2.Larghetto]

Chopin:Piano Concerto No.2 in F minor, Op.21 [3.Allegro vivace]


僕は悲しいかな、僕の理想を発見したようだ

ナンバーリングは第2番となっていますが、ショパンにとって最初の協奏曲はこちらの方です。
1829年にウィーンにおいてピアニストデビューをはたしたショパンは、その大成功をうけてこの協奏曲の作曲に着手します。そして、よく知られているようにこの創作の原動力となったのは、ショパンにとっては初恋の女性であったコンスタンティア・グワドコフスカです。

第1番の協奏曲が彼女への追憶の音楽だとすれば、これはまさに彼女への憧れの音楽となっています。
とりわけ第2楽章のラルゲットは若きショパン以外の誰も書き得なかった瑞々しくも純真な憧れに満ちた音楽となっています。

「僕は悲しいかな、僕の理想を発見したようだ。この半年というもの、毎晩彼女を夢見るがまだ彼女とは一言も口をきいていない。あの人のことを想っているあいだに僕は僕の協奏曲のアダージョを書いた」
友人にこう書き送ったおくように、まさにこれこそが青年の初恋の音楽です。


  1. 第1楽章 Maestoso

  2. 第2楽章 Larghetto
    ショパンが恋心を抱いていた、コンスタンツィヤ・グワトコフスカへの想いを表現されている。まさに「初恋」の音楽です。

  3. 第3楽章 Allegro vivace



野太い!ごっつい!!荒っぽい!!!


ジーナ・バッカウアー。
この名を冠したコンクールによって、ピアノ学習者にとってはそれなりに名の知れたピアニストのようです。
ちなみに、このジーナ・バッカウアー国際ピアノコンクールはそれほど名のあるピアニストは輩出していないのですが、18歳以下を対象としたヤングアーティスト部門では1999年にユンディ・リが優勝しています。彼は、この翌年のショパンコンクールで優勝を成し遂げたことは今さら言うまでもないことです。

しかし、「聴き専」にとってはほとんど忘れ去られた存在となっています。かろうじて、「マーキュリー・リヴィング・プレゼンス」シリーズがリリースされたことでかろうじて記憶の端に引っ掛かっているというレベルです。ただし、タワーレコードの宣伝文句に「イギリスの名女流ピアニストのジーナ・バッカウアー(ブラームスの協奏曲第2番など)」と書かれていたのはご愛敬です。

長いキャリアですから、イギリスで演奏会を開いたことはあるでしょうが、彼女はギリシャの出身であり、たとえ父親がオーストリア人であっても自分はギリシャ人だというのが彼女のアイデンティティでした。そして、活動の中心がアメリカに移っても、彼女はアメリカ人にはなりませんでしたし、当然の事ながらイギリス人にもなりませんでした。
ちなみに、彼女の経歴についてはこちらのページが一番詳しいようです。
現役時代には「鍵盤の女王」ともたたえられたピアニストも、死後40年も経過するとその出自さえ間違われてしまうことに、時の流れの儚さを感じさせてくれます。

さて、その様な彼女のピアノなのですが、ファーストインプレッションとしては以下の2点に尽きます。

  1. 野太い、ごっつい!!

  2. 荒っぽい!!


つまりは、女性のピアニストにイメージされるものとは全く縁がないと言うことです。そして、その荒っぽさはマーキュリーのハイクオリティの録音によって克明にとらえられていますので、彼女の大柄で力強いピアノを感心しながらも、どうしてあっちでもこっちでも、こんなに響きが混濁するの?という思いを最後まで持ち続けることになってしまいます。
確かに、このように記録されたレコードだけで演奏家を評価するのは大きな間違いを引き起こします。その事には留意しながら聴き進めたとしても、それでも、例えばショパンの二つの協奏曲などを聴かされると、響きだけでなく音楽のとらえ方そのものまでもが、あまりにも大雑把すぎるだろうと思わずにはおれません。

確かに、こういう大雑把さは実演ではレコードほどには気にならないことは事実です。構えの大きさや、前につき進んでいく勢いみたいなものに揺さぶられてしまえば細部はあまり気になりません。それどころか、あまりにも細部を精緻に仕上げることに専念している演奏にであうと、時には「何を辛気くさいことやっている」などという恐れ多いことをほざいてしまう誤りを犯すことすらあります。

しかし、何度も繰り返し聞かれることを前提としたレコードでは、その様な大雑把さと荒っぽさはマイナス以外の何ものでもありません。そして、不思議に思うのは、どうして上手くいっていない部分の録り直しをしなかったのかということです。
しかし、これもまた彼女の気性によるところが大きかったのかもしれません。

レコード産業が爆発的に発展していくこの時代に、繰り返し聞かれることを前提とした録音では通常のコンサートとは異なるアプローチが必要なことを自覚する演奏家が次々と現れてきます。その最たる存在がカラヤンでした。
しかし、このバッカウアー女史は、そう言う新しい動きには無頓着であり、基本的には「劇場の人」だったんだろうと思います。演奏全体の勢いを殺いでまで細部に拘る理由が彼女には理解できなかったのかもしれません。

そして、彼女が駆け出しのピアニストであれば録音プロデューサーも駄目出しできたでしょうが、相手が時の「鍵盤の女王」であれば、「何も言えない」と言うことになったのでしょう。

ただし、これを実演で聞けばかなりの迫力があったことは事実です。
残念なのは、彼女の名刺代わりでもあったブラームスのコンチェルトが意外と大人しいことです。しかし、その代わりといっては何ですが、ミスターSこと、スクロヴァチェフスキーのサポートが素晴らしいです。一部では響きが薄すぎると文句を言う向きもあるのですが、それなりのシステムで再生すれば、その響きの美しさには感嘆させられます。薄いのではなくて、精緻なのです。
彼がサポートしているベートーベンの5番でも同じ事が言えます。あの美しい第2楽章が本当に美しく響きます。

よせられたコメント

【リスニングルームの更新履歴】

【最近の更新(10件)】



[2026-09-04]

シューマン:アダージョとアレグロ 変イ長調 Op.70(Schumann:Adagio and Allegro, Op.70)
(Hr)デニス・ブレイン:(P)ジェラルド・ムーア 1952年録音(Dennis Brain:(P)Gerald Moore Recorded on 1952)

[2026-09-02]

C.P.E. バッハ:フルート・ソナタ ト短調, H.542.5(C.P.E.Bach:Flute Sonata in G minor, H.542.5)
(Fl)オーレル・ニコレ (Harpsichord)カール・リヒター 1963年6月12日~15日録音(Aurele Nicolet(Harpsichord)Karl Richter Recorded on June 12-15,1963)

[2026-08-30]

アルビノーニ:オーボエ協奏曲 ニ長調, OP.7 No.6(Albinoni:Oboe Concerto in D major, Op.7 No.6)
レナート・ファッサーノ指揮:(Ob)レナート・ザンフィーニ ローマ合奏団 1958年発行(Renato Fasano:(Ob)Renato Zanfini Virtuosi Di Roma Published in 1958)

[2026-08-28]

J.S.バッハ:管弦楽組曲第1番 ハ長調 BWV1066(J.S.Bach:Orchestral Suite No.1 in C major, BWV 1066)
クルト・レーデル指揮:ミュンヘン・プロ・アルテ室内管弦楽団 1962年2月録音(Kurt Redel:The Pro Arte Chamber Orchstra of Munich Recorded on February, 1962)

[2026-08-26]

ヒンデミット:葬送音楽(Hindemith:Funeral Music)
ルドルフ・バルシャイ指揮モスクワ室内管弦楽団 1958年録音(Rudolf Barshai:Moscow Chamber Orchestra Recorded on 1958)

[2026-08-23]

J.S.バッハ:リュート組曲 第3番 ト短調, BWV 995(Bach:Suite For Lute No.3 In G Minor, BWV 995)
(Lute)ヴァルター・ゲルヴィッヒ:1949年11月22日録音(Walter Gerwig:Recorded on November 22, 1949)

[2026-08-20]

ヘンリー・パーセル:ヴィオールのための幻想曲集(Henry Purcell:Fantasies For Viols)
スコラ・カントゥルム・バジリエンシス・ヴィオール属合奏団:1954年4月29日~5月3日録音(Gambenconsortder Schola Cantorum Basiliensis:Recorded on April 29-May 3,1954)

[2026-08-18]

ホルスト:セント・ポール組曲(Gustav Holst:St. Paul's Suite, Op.29 No.2)
マルコム・サージェント指揮 ロイヤル・フィルハーモニー管弦楽団 1965年1月4日~5日録音(Sir Malcolm Sargent:Royal Philharmonic Orchestra Recorded on January 4-5, 1965)

[2026-08-16]

モーツァルト:交響曲第40番ト短調 K.550(Mozart:Symphony No.40 in G minor, K.550)
エーリッヒ・クライバー指揮 ロンドン・フィルハーモニー管弦楽団 1949年4月録音(Erich Kleiber:London Philharmonic Orchestra Recorded on April, 1949)

[2026-08-14]

ベートーベン:グレトリーの歌劇「焼き尽くすわが心」の主題による8つの変奏曲 WoO 72(Beethoven:8 Variations on the Romance Un fievre brulante from Gretry's Richard Coeur-de-lion, WoO 72)
(P)アルフレッド・ブレンデル 1958年&1960年録音(Alfred Brendel:Recorded on 1958 & 1960)

?>