ショーソン:詩曲 作品25
Vn.オイストラフ ミュンシュ指揮 ボストン交響楽団 1955年12月14日録音
Chausson:詩曲 作品25
世紀末を反映した音楽
ショーソンは若くして(44歳)不慮の事故(一部では自殺説もあるそうです)で亡くなったために、日本での認知度はあまり高くないようです。
そんな中で、唯一知れ渡っているのがこの「詩曲」です。
しかし、神秘的に静かに始まって、そしてあまりおおきな盛り上がりも見せずに最後も静かに曲を閉じるこの作品は、それほど一般受けする作品とも言えません。
ショーソンは表面的には非常に恵まれた環境のもとでその人生を送ったかのように見えます。幼い頃から優れた家庭教師によって英才教育を施され、幸せな結婚と裕福な家庭生活を築き上げると言う、ヨーロッパにおける典型的な中産階級の一員でした。
しかし、そんな表面的な豊かさとは裏腹に、彼の作品からは、その内面に巣くっているどうしようもないペシミズムが見え隠れします。
この「詩曲」の全編を覆っている夢も、儚さだけでなく、何だかゾッとするような情念があちこちで姿を見せます。それは疑いもなく、世紀末ヨーロッパを蔽っていた、とらえ所のない漠然とした焦燥感や苛立ちのようなものが反映しています。
最初はツルゲーネフの『勝ち誇れる恋の歌』に触発されて書き始められたものの、やがてはその標題性を破棄して、ただ単に『詩曲』とされたのは、狭い文学世界のテーマを乗り越えて、その様な時代の風を反映したより普遍性の高い作品になった事への自負もあったのでしょう。
豊かな響きが楽しめます
オイストラフがアメリカにデビューした頃の録音です。オイストラフはよく言われているように、若い時代の切れ味の鋭い演奏と、晩年のゆったりとした演奏とで、別人のような姿を見せます。ただし、それは技術的な衰えからくるものではなくて、何か音楽に対する「価値観」が変わったかのような変貌ぶりだったように思えます。ですから、若い頃のオイストラフが好きな人は晩年の演奏が好きになれず、晩年のオイストラフが好きな人は若い頃の演奏を「発展途上」としか感じられないようです。
私などは、あまり難しいことは考えずに、それぞれのスタイルを楽しめばいいのに、などと思ってしまいます。
さて、ここでのオイストラフは太めの豊かな響きでグイグイと作品を描いていきます。それに対してミュンシュの方もオケをバンバン鳴らして世紀末の儚い夢など吹っ飛ばしてしまいそうです。
それでも、オイストラフは負けないですね。
その意味で、この作品の表現としては正統派でないことは事実ですが、若き日のオイストラフの凄さは十分に感じ取れる録音です。
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