シベリウス:交響詩『タピオラ』 op.112
エドワルド・フォン・ベイヌム指揮 アムステルダム・コンセルトヘボウ管弦楽団 1952年録音
Sibelius:交響詩『タピオラ』 op.112
シベリウスの交響曲第8番・・・???
シベリウスと言えばいつも話題になるのが、最晩年の謎の空白(最後の交響詩「タピオラ」を発表したのが1925年ですから、その空白は30年にも及びます)と、幻の交響曲第8番です。残された手紙などを見ると、シベリウスは7番に続く交響曲を創作し続けていて、一度は完成を見たものの、結局はその出来に満足できなかったためにスケッチも含めて全てのスコアをアイノラの庭で燃やしてしまった事がうかがわれます。
「交響曲第8番は括弧つきでの話だが何度も“完成”した。燃やしたことも1度ある」
しかし、反語的な言い方になりますが、私たちはシベリウスの生前にすでに第8交響曲を持っていたという人もいます。それは、この最後の交響詩「タピオラ」を第8交響曲に見立ててもいいだろうという主張です。
実は、シベリウスは第7交響曲を最初は「交響詩」として発表する予定でした。実際、初演の時には『交響的幻想曲』として演奏され、出版の時に第7番の交響曲とされました。単一楽章と言う、ある意味では交響曲仲間の「鬼子」のような存在であっても作曲家が最終的に「交響曲」と位置づけたのですから、規模でも、その構成の緻密さにおいても譲ることのないこの交響詩「タピオラ」を第8番の交響曲と見立てたとしてもそれほどのお叱りは出ないだろう・・・と言うわけです。
ちなみに、「タピオラ」とは、森の神「タピオ」の領土という意味です。
ただし、カレワラでは、この森の神は決して姿は表さず、ただ祈りや呼びかけの中にその名が出てくるだけの存在です。その意味では、この交響詩はそれ以外のカレワラを題材にした作品のような物語性はなく、ただフィンランドの深い森を抽象的、象徴的に描き出した作品だといえます。
冒頭の単純なモチーフが音程を変えて執拗に繰り返される中で、知らず知らず引き込まれていくあの世ともこの世とも思えぬ雰囲気が、実にシベリウスの最後の作品にピッタリです。
実にダイナミックなシベリウスです
シベリウスが未だ存命中は、今からでは想像も出来ないほど彼のポジションは高かったようです。ですから、この50年代の初頭という時期はまさにシベリウスの評価が絶頂にあった時期で、実に多くの指揮者が彼の作品を取り上げています。
調べてみるとあのフルトヴェングラーやトスカニーニも50年代にはシベリウスのかなりマイナーな曲でさえ録音を残しているのです。ですから、コンセルトヘボウとシベリウスというのは何だかミスマッチな気がするのですが、この時代ならばみんなシベリウスを取り上げていたのです。
さて、ベイヌムの指揮によるこの演奏ですが、実にダイナミックで雄大な音楽に仕上がっています。果たしてシベリウスがこの作品にこのような派手な身振りを期待していたかは疑問ですが、聞いていて楽しいのは間違いありません。
さらに注目するのは、録音の質の高さです。録音を担当したのはデッカのカルショウらしいのですが、流石と言うしかありません。
よせられたコメント
【最近の更新(10件)】
[2026-03-08]

ベルワルド:交響曲第4番 変ホ長調 「素朴な交響曲」(Berwald:Symphony No.4 in E-flat major "Naive" )
イーゴリ・マルケヴィチ指揮:ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団 1955年12月録音(Igor Markevitch:Berlin Philharmonic Orchestra Recorded on December, 1955)
[2026-03-05]

ヨーゼフ・マルクス:ヴァイオリンソナタ「春のソナタ」(Joseph Marx:Sonata for Violin and Piano in A major "Spring")
(Vn)ヴァーシャ・プシホダ:(P)オットー・アルフォンス・グレーフ 1954年録音(Vasa Prihoda:(P)Otto Alphonse Greif Recorded on 1954)
[2026-03-03]

ハイドン:弦楽四重奏曲 ニ長調, Hob.III:63(Op.64-5) 「雲雀」(Haydn:String Quartet in D major, Hob.III:63(Op.64-5) "Lark")
ウィーン・コンツェルトハウス四重奏団:1954年5月録音(Vienna Concert House Quartet:Recorded on May, 1954)
[2026-02-28]

グラズノフ:ヴァイオリン協奏曲イ短調 作品82(Glazunov:Violin Concerto in A minor, Op.82)
(Vn)マイケル・レビン:ロヴロ・フォン・マタチッチ指揮 フィルハーモニア管弦楽団 1954年12月17日録音(Michael Rabin:(Con)Lovro von Matacic The Philharmonia Orchestra Recorded on December 17. 1954)
[2026-02-25]

ハイドン:弦楽四重奏曲第60番 イ長調 Op.55, No.1, Hob.3:60(Haydn:String Quartet No.60 in A Major, Op.55, No.1, Hob.3:60)
プロ・アルテ弦楽四重奏団:1936年11月19日録音(Pro Arte String Quartet]Recorded on November 19, 1936)
[2026-02-22]

ベートーヴェン:弦楽三重奏曲 第1番 変ホ長調, Op.3(Beethoven:String Trio in E-flat major, Op.3)
パスキエ・トリオ:1950年代録音(Pasquier Trio:Recorded on 1950s)
[2026-02-18]

ベートーヴェン:弦楽四重奏曲第16番へ長調, Op.135(Beethoven:String Quartet No.16 in F major Op.135)
ハリウッド弦楽四重奏団:1957年4月22日,5月11日&6月1日,3日,12日,20日録音(The Hollywood String Quartet:Recorded on April 22, May 11 & June 1, 3, 12, 1957)
[2026-02-16]

スメタナ:わが故郷より(Smetana:from my hometown)
(Vn)ヴァーシャ・プシホダ:(P)リディア・ベフトルト 1949年録音(Vasa Prihoda:(P)Lydia Beftot Recorded on 1949)
[2026-02-12]

シベリウス:ヴァイオリン協奏曲 ニ短調, Op.47(Sibelius:Violin Concerto in D minor Op.47)
(Vn)ダヴィド・オイストラフ:シクステン・エールリンク指揮 ストックホルム・フェスティヴァル管弦楽団 1954年録音(David Oistrakh:(Con)Sixten Ehrling Royal Stockholm Philharmonic Orchestra Recorded on 1954)
[2026-02-10]

フォーレ:夜想曲第12番 ホ短調 作品107(Faure:Nocturne No.12 in E minor, Op.107)
(P)エリック・ハイドシェック:1960年10月21~22日録音(Eric Heidsieck:Recorded 0n October 21-22, 1960)