エルガー:エニグマ変奏曲
バルビローリ指揮 ハレ管弦楽団 1947年10月23日録音
Elgar:エニグマ変奏曲
エルガーの出世作
エルガーはこの作品によって成功を勝ち取り、世界的作曲家へと駆け上がっていきました。
よく知られていることですが、この作品にはいくつかの謎(エニグマ)が存在しているため、正式名称である「独奏主題による変奏曲」よりは「エニグマ変奏曲」の方が通りがよくなっています。
まず、第1の謎ですが、「実際に作品では演奏されていないけれども、全曲を通じて沈黙の伴奏の役割を果たしている別の主題が隠されている。」というものです。
これに関しては、イギリス国家だとか蛍の光だとか、はたまたBACHであるとか諸説が入り乱れています。
エルガー自身はこの謎に関しては最後まで黙したままだったので、この謎解きは今もって解明されていません。
第2に謎は、各変奏に添えられているイニシャルです。
エルガーは、「必ずしも音楽家ばかりとは限らないが、私の友人達の特徴を、彼らを愉しませ、自分の愉しみのために、私がこれらの変奏の中にスケッチしたことは事実である。」と語っています。
こちらの方もエルガーは何も語っていないのですが、イニシャルはモデルとなった人物のものをそのまま使用しているので、こちらの方は全て明らかになっています。
参考までに列記しておきます。
主題:Andante 4分の4拍子
変奏1:C.A.E.→エルガーの妻、"Caroline Alice Elgar"(キャロライン・アリス・エルガー)
変奏2:H.D.S-P.→ピアニストの"H.D.Steuart-Powell"(H.D.スチュワート=パウエル)。
変奏3: R.B.T.→アマチュア俳優の”R.B.Townshend”(リチャード・バクスター・タウンゼント)
変奏4:W.M.B.→"William Meath Baker"(ウィリアム・ミース・ベイカー)
変奏5:R.P.A.→"R.P.Arnold"(リチャード・ペンローズ・アーノルド
変奏6:Ysobe→エルガーの教え子のヴィオラ奏者"Miss Isabel Fitton"(ミス・イザベル・フィットン)
変奏7:Troyte.→建築家の"Arthur Troyte Griffith"(アーサー・トロイト・グリフィス)
変奏8:W.N.→"Miss Winifred Norbury"(ウィニフレッド・ノーペリー)。
変奏9:Nimrod→エルガーの友人の"A.J.Jaeger"
変奏10:Intermezzo.; Dorabella.→エルガーの友人の"Miss Dora Penny"(ドーラ・ペニ)。
変奏11:G.R.S.→ヘリフォード大聖堂のオルガニストである"George R.Sinclarir"(ジョージ・ロバートソン・シンクレア)とその愛犬のブルドッグである"Dan"(ダン)
変奏12:B.G.N.→チェロ奏者、"Basil G.Nevinson"(バージル・G・ネヴィンソン)。
変奏13:Romanza.→エルガーが作曲中に乗船していた"Lady Mary Trefusis"
変奏14:Finale.;E.D.U.→エルガー自身の自画像
認定エルガー指揮者?
バルビローリとボールトはエルガーの作品を聞き込んでいく上で絶対に外すことのできない指揮者でしょう。
私の手元にある資料でも、バルビローリは実に多くのエルガー作品を録音していますし、その多くが決定盤的なポジションを占めています。
彼はエニグマ変奏曲を生涯に3度も録音していますが、ここでお聞きいただいているのは一番最初のものです。虚仮威しというものが全くないこの作品に実にふさわしい誠実な演奏だと思います。
よせられたコメント
【最近の更新(10件)】
[2024-11-24]
ブラームス:交響曲第4番 ホ短調, Op.98(Brahms:Symphony No.4 in E minor, Op.98)
アルトゥーロ・トスカニーニ指揮 フィルハーモニア管弦楽団 1952年9月29日&10月1日録音(Arturo Toscanini:The Philharmonia Orchestra Recorded on September 29&October 1, 1952)
[2024-11-21]
ショパン:ピアノ協奏曲 第1番 ホ短調, Op.11(Chopin:Piano Concerto No.1, Op.11)
(P)エドワード・キレニ:ディミトリ・ミトロプーロス指揮 ミネアポリス交響楽団 1941年12月6日録音((P)Edword Kilenyi:(Con)Dimitris Mitropoulos Minneapolis Symphony Orchestra Recorded on December 6, 1941)
[2024-11-19]
ブラームス:ヴァイオリン協奏曲 ニ長調 Op.77(Brahms:Violin Concerto in D major. Op.77)
(Vn)ジネット・ヌヴー:イサイ・ドヴローウェン指揮 フィルハーモニア管弦楽 1946年録音(Ginette Neveu:(Con)Issay Dobrowen Philharmonia Orchestra Recorded on 1946)
[2024-11-17]
フランク:ヴァイオリンソナタ イ長調(Franck:Sonata for Violin and Piano in A major)
(Vn)ミッシャ・エルマン:(P)ジョセフ・シーガー 1955年録音(Mischa Elman:Joseph Seger Recorded on 1955)
[2024-11-15]
モーツァルト:弦楽四重奏曲第17番「狩」 変ロ長調 K.458(Mozart:String Quartet No.17 in B-flat major, K.458 "Hunt")
パスカル弦楽四重奏団:1952年録音(Pascal String Quartet:Recorded on 1952)
[2024-11-13]
ショパン:「華麗なる大円舞曲」 変ホ長調, Op.18&3つの華麗なるワルツ(第2番~第4番.Op.34(Chopin:Waltzes No.1 In E-Flat, Op.18&Waltzes, Op.34)
(P)ギオマール・ノヴァエス:1953年発行(Guiomar Novaes:Published in 1953)
[2024-11-11]
ドヴォルザーク:ヴァイオリン協奏曲 イ短調, Op.53(Dvorak:Violin Concerto in A minor, Op.53)
(Vn)アイザック・スターン:ディミトリ・ミトロプーロス指揮 ニューヨーク・フィルハーモニー交響楽団 1951年3月4日録音(Isaac Stern:(Con)Dimitris Mitropoulos The New York Philharmonic Orchestra Recorded on March 4, 1951)
[2024-11-09]
ワーグナー:「神々の黄昏」夜明けとジークフリートの旅立ち&ジークフリートの葬送(Wagner:Dawn And Siegfried's Rhine Journey&Siegfried's Funeral Music From "Die Gotterdammerung")
アルトゥール・ロジンスキー指揮 ロイヤル・フィルハーモニ管弦楽団 1955年4月録音(Artur Rodzinski:Royal Philharmonic Orchestra Recorded on April, 1955)
[2024-11-07]
ベートーベン:ピアノ協奏曲第4番 ト長調 作品58(Beethoven:Piano Concerto No.4, Op.58)
(P)クララ・ハスキル:カルロ・ゼッキ指揮 ロンドン・フィルハーモニック管弦楽団 1947年6月録音(Clara Haskil:(Con)Carlo Zecchi London Philharmonic Orchestra Recorded om June, 1947)
[2024-11-04]
ブラームス:交響曲第3番 ヘ長調, Op.90(Brahms:Symphony No.3 in F major, Op.90)
アルトゥーロ・トスカニーニ指揮 フィルハーモニア管弦楽団 1952年9月29日&10月1日録音(Arturo Toscanini:The Philharmonia Orchestra Recorded on September 29&October 1, 1952)