ブルックナー:交響曲第4番「ロマンティック」
ハンス・クナッパーツブッシュ指揮 ベルリン・フィル 1944年9月8日 バーデン・バーデンにおいてライブ録音
Bruckner:交響曲第4番「第1楽章」
Bruckner:交響曲第4番「第2楽章」
Bruckner:交響曲第4番「第3楽章」
Bruckner:交響曲第4番「第4楽章」
わかりやすさがなにより・・・でしょうか
短調の作品ばかり書いてきたブルックナーがはじめて作曲した長調の作品がこの第4番です(変ホ長調)。この後、第5番(変ロ長調)、第6番(イ長調)、第7番(ホ長調)と長調の作品が続きます。
その中にあっても、この第4番は長調の作品らしい明るい響きと分かりやすい構成のためか、ブルックナー作品の中では早くから親しまれてきました。
「ロマンティック」という表題もそのような人気を後押ししてくれています。
この表題はブルックナー自身がつけたものでありません。弟子たちが作品の解説をブルックナーに求めたときに、ブルックナー自身が語ったことをもとに彼らがつけたものだと言われています。
世間にはこのような表題にむきになって反論する人がいるのですが、(曰く、絶対音楽である交響曲にこのような表題は有害無益、曰く、純粋な音楽の美を語るには無用の長物、などなど・・・)ユング君はけっこう楽しんでいます。それに、この作品の雰囲気に「ロマンティック」と言う表題はなかなか捨てたもんではありません。
それから、ブルックナーというと必ず版と稿に関わる問題がでてきます。この4番についても1874年に作曲されてから、81年に初演されるまでに数え切れないほどの改訂を繰り返しています。そういう詳細にこだわるブルックナーファンは多いのですが、ユング君にはその詳細をおってここに詳述する能力もやる気もありませんので、そういう情報が必要な人は別のサイトを当たってください。(メールで訪ねられても困ります・・・よろしく!)
第3帝国の没落
第3帝国の没落が誰の目にも明らかになってきたときにでもこんな演奏会を行っていたのですね。
1888年生まれのクナ(クナッパーツブッシュのこと。あまりにも長いので、業界では一般的にこう言われます)ですから、この時56歳です。
クナは1922年には早くもバイエルン国立歌劇場の音楽監督に就任しながら、35年にはナチスによって追放されています。ところが、どこでどう手を回したのか翌年にはウィーン国立歌劇場の指揮者として復活し、45年には再びバイエルン国立歌劇場の音楽監督に返り咲いています。
そのおかげで、(^^;戦後は占領軍から一時演奏活動を禁止されてしまいます。
この感覚というか、感性がユング君には理解できません。政治と芸術の間で悩み苦しんだフルトヴェングラーと比べれば、あまりにも脳天気としかいいようがありません。しかし、そういうところがクナらしいと言うことでしょうか。
はっきり言って、この演奏からはフルトヴェングラーの同時代の演奏から伝わってくるような悲壮感は伝わってきませんね。
冒頭のホルンのこけ方も、あまりにも日常的です。(^^;
何と言っても、この冒頭のホルンのソロは、ミスをしないことで有名な某ホルン奏者が、恐いものの一つとして上げた部分ですからね。
そして、いかにもクナらしい音楽をいつものように展開していることにも驚かされます。
精緻に分析された今風のブルックナー演奏になじんだ耳からすれば、あまりにも大雑把な演奏です。細部にはかまうこともなく(かまうことができず・・・?)、うねるように音楽が展開していく様は限りなくワーグナー的です。
ヴァントのブルックナーが好きな人は、一聴ししただけで拒絶反応がおきそうな演奏ですが、ユング君はけっこう好きです。
理由は簡単で、こういう演奏は今となっては絶対に聞くことができないからです。テンシュテットも死んじゃった今となっては、すでに絶滅した演奏と言わざるを得ません。
ドイツ近代史の悲劇としか言いようのないこの時代を一体どのような思いでクナが過ごしたのでしょうか。この演奏を聞く限り、ほとんど平時の一駒のように演奏を行っているようにしか見えず、正直言って驚かされます。
フルトヴェングラーとクナッパーツブッシュ、様々な悲劇のやりすごし方があるということでしょうか。
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