クラシック音楽へのおさそい~Blue Sky Label~

サンマルティーニ:チェロ・ソナタ ト長調(Sammartini:Cello Sonata in G major)

(Cello)レナード・ローズ:(P)レオニード・ハンブロ 1953年5月11日~12日録音(Leonard Rose:(P)Leonid Hambro Recorded on May 11-12, 1953)



Sammartini:Cello Sonata in G major [1.Allegro]

Sammartini:Cello Sonata in G major [2.Grave]

Sammartini:Cello Sonata in G major [3.Vivace]


バロックから古典派への過渡期

この曲は長年、イタリア初期古典派のシンフォニスト、ジョヴァンニ・バッティスタ・サンマルティーニ(Giovanni Battista Sammartini, 1700~1775)の作品として広く知られ、楽譜もその名前で出版されてきました。
しかし近年の研究により、実際にはフランスのチェロ奏者・作曲家であるマルタン・ベルトー(Martin Berteau, 1708~1771)が書いた「チェロ・ソナタ ト長調 Op.1 No.3」であることが判明しています。

当時「シニョール・マルティーノ(Signor Martino)」の名で出版されたため、名前が酷似しているサンマルティーニの作と混同されたまま定着してしまったようです。
「偽作・誤認」のエピソードは数多くあるのですが、名前が似ていたために取り違えたというのはあまり聞きません。著作権などと言う概念すらなかった時代ならではのエピソードです。


  1. 第1楽章:Allegro
    軽快で明るく、前向きなエネルギーに満ちた楽章です。チェロの快活なボウイングと、音階を駆け上がるような伸びやかな旋律が特徴です。

  2. 第2楽章:Grave
    一転して、哀愁を帯びた深く美しい楽章です。イタリア・バロック風の重厚な美しさと、チェロの朗々とした歌心が存分に生かされています。

  3. 第3楽章:Vivace
    再び明るいト長調に戻り、3拍子の軽やかな舞曲風のリズムで生き生きと展開します。

  4. 第4楽章:Rondo Amoroso
    優美で愛らしいロンドですが、現代の演奏では省略され、第3楽章で締めくくられることが多くなっています。



バロックから古典派への過渡期ならではの優雅な歌心と躍動感に溢れた音楽です。

作品の核心に迫っていく完璧なプロポーション


「レナード・ローズ」は基本的にはオーケストラ・プレーヤーでした。それ故に、ソリストとしての「レナード・ローズ」の知名度は高くはありません。
しかし、オーケストラ・プレーヤーと言っても、その経歴を見ればただ者ではないことはすぐに分かります。

彼は20歳にしてトスカニーニから招かれてNBC交響楽団の首席チェリストに就任し、その翌年にはアルトゥール・ロジンスキからの招きでクリーブランド管に移籍しています。そして、このロジンスキーとの結びつきは長く続いて、彼が1943年にニューヨーク・フィルの首席指揮者に移籍した時にはローズもまたニューヨークに移籍をしました。

トスカニーニからロジンスキーというラインで評価されたのですから、それが何を意味しているのかは多くの人にとってはすぐに理解できるでしょう。
そして、1951年にソリストに転向した後にはセル&クリーブランド管との共演も数多くこなしているのですから、そりゃ、ただ者じゃないですよね。

しかしながら、彼はソリストに転向してからも、多くの人から賞賛され脚光を浴びることにはあまり興味はなく、どちらかと言えば多くの弟子を育てる教育活動に熱心でした。(ヨーヨー・マは彼の弟子です)
演奏会のある日であっても5時間の練習は欠かさなかったと言われている彼の信念は、今も多くの弟子に引き継がれているようです。

そんなローズの信念は「まずは練習、そして練習」でした。その点ではハイフェッツなどと同じライン上の存在かもしれません。
彼は「実演における霊感」などと言うものは一切信用しなかったようで、練習によって築き上げた完璧なプロポーションをこそ大切にした演奏家でした。おそらく、オーケストラ・プレーヤとしての長い経歴の中で、ひとりよがりの「霊感」に自己満足しているソリストの姿にウンザリしていたのでしょう。
それ故に、アメリカでは彼への評価は今でも高いようで「完全無欠のテクニックに恵まれたスケールの大きい名人」と言われているようです。

派手さはなくても、作品の核心に迫っていく完璧なプロポーションは、こののソナタでも揺らぐことはありません。
あまり聞く機会の多くない作品ですから、ファースト・コンタクトとしてこれほど相応しい演奏はないでしょう。

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