クラシック音楽へのおさそい~Blue Sky Label~

アイルランド民謡「ミンストレル・ボーイ」(Rose Plays the Minstrel Boy & Others)

(T)クリストファー・リンチ:(Cello)レナード・ローズ (Flute)ジョン・ワマー (Harp)ローラ・ニューウェル 1947年録音(Christopher Lynch:(Cello)Leonard Rose (Flute)John Wummer (Harp)Laura Newell Recorded on 1947)



Traditional:The Minstrel Boy

Traditional:The Garden Where the Praties Grow

Charles William Glover:The Rose of Tralee

Traditional:The Palatine's Daughter

Ernest Roland Ball:A Little Bit Of Heaven (Sure, They Call It Ireland)

Traditional:A Ballynure Ballad

Ernest Roland Ball:When Irish Eyes Are Smiling

Traditional:The Young May Moon

Hermann Lohr:You'd Better Ask Me


アイルランド歌曲集

「Rose Plays the Minstrel Boy & Others」におさめられているのですが、そのタイトルに反して、メインはレナード・ローズ ではなくてテノールのクリストファー・リンチです。
アイルランド出身のクリストファー・リンチの歌唱に、レナード・ローズ(チェロ)、ジョン・ワマー(フルート)、ローラ・ニューエル(ハープ)というメンバーが伴奏をつけたアイルランド歌曲集です。
これらの楽曲はすべて、アイルランドの伝統的な歌曲と、20世紀初頭にアメリカなどで流行したアイリッシュ・ソングです。

  1. The Minstrel Boy(ミンストレル・ボーイ / 吟遊詩人の少年)
    アイルランドを代表する非常に有名な愛国歌です。
    詩人トーマス・ムーアが古くからある伝統的なメロディ(The Moreen)に歌詞をつけました。
    ハープを背負って戦場に赴き、自由のために命を捧げた少年兵の悲壮な覚悟が描かれています。

  2. The Garden Where the Praties Grow(プラティが育つ庭)
    「Praties(プラティ)」とはアイルランドの主食であるジャガイモのこと。
    ジャガイモ畑で働く美しい少女に恋をした男の、少し不器用でチャーミングな求婚の様子を描いた、ユーモラスで温かみのある伝統歌です。

  3. The Rose of Tralee(トラリーの薔薇)作曲: チャールズ・ウィリアム・グローヴァー
    アイルランド南西部の町トラリーを舞台にした、時代を超えて愛される美しく切ないラブソングです。
    現在でもアイルランドでは、世界中のアイルランド系女性から「トラリーの薔薇」を選ぶ有名なフェスティバルが毎年開催されています。

  4. The Palatine's Daughter(パラタインの娘)
    軽快なリズムが特徴的なアイルランドの伝統歌。
    18世紀初頭にドイツ(プファルツ地方=Palatinate)からアイルランドのリムリックやティペラリーに移住してきた「パラタイン(ドイツ系移民)」の娘と、地元の若者の恋と結婚をテンポよく歌っています。

  5. A Little Bit Of Heaven (Sure, They Call It Ireland)(天国のかけら、人はそれをアイルランドと呼ぶ)作曲: アーネスト・ローランド・ボール
    「アイルランドという島は、天使が天国から落としたほんの少しの“かけら”でできているんだ」と歌う、祖国(または祖父母の故郷)への愛に満ちたノスタルジックな名曲です。

  6. A Ballynure Ballad(バリーニュアのバラッド)
    アルトリム州のバリーニュアという町を舞台にした、リズミカルで少しとぼけた味わいのある伝統的な恋の歌です。

  7. When Irish Eyes Are Smiling(アイルランドの瞳が微笑むとき)作曲: アーネスト・ローランド・ボール
    アメリカのブロードウェイ・ミュージカルのために書かれ、世界中で大ヒットした「アイリッシュ・アメリカン」の代名詞的な名曲。
    非常に明るく、聴くだけで心が温かくなるメロディで、アイルランド系の人々が集まる場(セント・パトリックス・デーなど)では今も必ず歌われます。

  8. The Young May Moon(若い五月の月)
    こちらもトーマス・ムーアの詩によるもので、伝統的な空気感を持つロマンチックな夜の恋歌。
    「五月の美しい月夜に、恋人よ、起きて一緒に出かけよう」と誘う、軽やかで美しいメロディです。

  9. You'd Better Ask Me(私に聞いてごらんなさい)作曲: ヘルマン・レール
    イギリスの作曲家ヘルマン・レール(「どこか遠くへ(Where My Caravan Has Rested)」などで有名)による、どこかアイルランドのフォークソング風の情緒を持った、愛らしくキャッチーな歌曲です。



完璧なプロポーションをこそ大切氏にした演奏


クリストファー・リンチはアイルランド出身のテノール歌手です。
幼少期から地元の聖歌隊で歌っていました。
1942年、映画館のステージでアマチュアとして歌っていたところを地元の芸術パトロンに見出され、本格的な声楽教育を受けるようになります。
そして、ダブリンでのコンサートで客席にいた名テノール歌手ジョン・マコーマックにその卓越した才能を絶賛されました。マコーマックは晩年の1年間、自らリンチの熱心な指導者となり、彼に歌手として必要な多くのことを教えました。

第2次大戦後の1946年にアメリカ・デビューを果たし、1949年から1954年にかけてクラシック音楽のラジオ・テレビ番組「Voice of Firestone」にレギュラー出演しました。
高名なリリック・テノールであったリチャード・クルックスの後任としてソロを務め、全米のお茶の間で親しまれました。

ここではチェロのソリストをつとめている「レナード・ローズ」について先にふれておきましょう。今となってはその名前を記憶している人はそれほど多くはないでしょう。しかし、アイザック・スターンから託されたヨーヨー・マを9歳から育て上げた教育者として記憶に残っている人はいるかもしれません。
では、何故にこの国では知名度が低いのかというと、彼は基本的にオーケストラ・プレーヤーだったことに起因しているようです。ローズがオーケストラでの活動を退いてソロ活動に専念したのは30歳を超えた1951年からでした。
彼は20歳にしてトスカニーニから招かれてNBC交響楽団の首席チェリストに就任し、その翌年にはアルトゥール・ロジンスキからの招きでクリーブランド管に移籍しています。そして、このロジンスキーとの結びつきは長く続いて、彼が1943年にニューヨーク・フィルの首席指揮者に移籍した時にはローズもまたニューヨークに移籍をしました。

そして、その活動を1951年まで続けてソロに転向したのです。
しかし、それは「ソリスト>オーケストラ・プレーヤー」という概念が彼になかったためであり、彼が育てた多くの弟子たちにもオーケストラ・プレーヤーになることをすすめています。

つまりは、実力は十分すぎるほどあるにもかかわらず、ソリストとして脚光を浴びることには余り頓着しなかったことが、余り多くの人の注意をひかなかった原因だったのかもしれません。さらに言えば、ソロに転向しても、ある意味ではそれ以上に教育活動に専念し、多くの弟子を育て上げることにも多大なる時間を費やしたことも、表舞台にでることの少なくなった理由だったようです。

しかしながら、アメリカでは彼への評価は今でも高いようで「完全無欠のテクニックに恵まれたスケールの大きい名人」と言われているようです。

何しろ、彼の心情はハイフェッツと同じで「まずは練習、そして練習」というタイプで、演奏会のある日であっても5時間の練習は欠かさなかったと言われています。そして、その音楽もどこかハイフェッツと似たところがあって、ある種の閃きで音楽を飾り立てることには否定的で、徹底した練習によって築き上げた完璧なプロポーションをこそ大切にした演奏家でもありました。

ですから、そう言うローズがセルと汲んで録音したこのチャイコフスキーも、民族的な薫りなどはどこを探しても見つからず、そこにあるのは両者が徹底的に計算しつくした上で実現させた完璧なプロポーションがあるだけです。
そして、それはこの50年代のアメリカにおいて最も高く評価された音楽の形だったのです。

ただし、今の時代の耳からすると、立派すぎるほどに立派であることは認めながらも、どこかもう少し愛想があっても良さそうなものなのに、等とは思ってしまいます。

よせられたコメント

2026-06-27:さとる


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