フランク:交響曲 ニ短調(Franck:Symphony in D Minor)
ディミトリ・ミトロプーロス指揮 ミネアポリス交響楽団 1940年1月8日録音(Dimitris Mitropoulos:Minneapolis Symphony Orchestra Recorded on January 8, 1940)
Franck:Symphony in D Minor [1.Lento]
Franck:Symphony in D Minor [2.Allegretto]
Franck:Symphony in D Minor [3.Allegro non troppo]
偉大なるマイナー曲
ギリシャ正教の司祭の家系で育った環境や、信じがたいほどの記憶力に恵まれていた数多くのエピソードはミトロプーロスにある種の神秘性を与えました。さらに、ピアニストがお手上げになって逃げ出したプロコフィエフの3番を、急遽ピアノと指揮を同時に引き受けて演奏したとか(今で言うところの弾き振り)、様々な超人的なエピソードに包まれた人物です。
ところが、そういうエピソードがなんだか人間離れしたイメージを自分の中で勝手につくり出してしまったようで、私から彼を遠ざけていたようです。
また、市場に出回っているのがアメリカ時代の古い録音が多かったことも遠ざかる要因だったかもしれません。
しかし、いつまでも食わず嫌いではいけないだろうと言うことで、彼の録音をポツポツと聞き始めました。まずは、SP盤時代の録音であっても非常に音質がいいことに驚かされました。おそらく、かつて聞いた彼の古い録音は正規の復刻盤ではなかったので、その本来の音質がスポイルされていた可能性がありますね。
さらに、あらためて驚いたのは神秘的なイメージどころか驚くほどの「エンターテイメント性」に溢れていたことです。最初に聞いたときに、こんな簡単なことに何故に気づかなかったのでしょうか。
彼の演奏を一言で言えば、驚くほどに聞かせ上手なのです。そして、それがショーソンやボロディン等という今でもかなりマイナーな部類に入る交響曲でも、歌わせるべきところは美しく歌わせ、盛りあげるべきところでは圧倒的な響きで聞き手を慶ばせます。
これが、メンデルスゾーンやシューマン等のそれなりにメジャーな作品になると比較対象が増えるので、ミトロプーロスの聞かせ上手な側面がはっきりと見えてきます。
フランクの交響曲なんてのはどこか避けたい雰囲気が漂うのですが、彼はそれを実にからりと楽しく聞かせてくれます。
聞くところによると、彼はオケに対して常に寛容であり、叱ると言うことをしなかったようです。
確かに、ミトロプーロスは聞かせ上手と言っても作品の構造はしっかりと把握していて、その大きな枠からはみ出すことは絶対にありません。彼のエンターテイメント性は確たる論拠に裏付けられています。
ですから、ミトロプーロスが求めるものはもっと上にあるかと思うのですが、それでもその大きな枠の中からはみ出さない限りは、時にははみ出してしまっていても「それでも仕方がないか」と受け入れている感じなのです。とにかく、オケに無理強いはしない指揮者だったようです。
そして、そう言う寛容な姿勢がオケのやる気と自発性がフルに発揮されて、結果として驚くほどのエンターテイメント性の高い音楽が出来上がっているようなのです。
アメリカを離れた晩年はヨーロッパに活動の場を移すのですが、そんなミトロプーロスがもっとも相性が良かったというのはウィーン・フィルでした。
オケの力をフルに発揮させる聞かせ上手
ギリシャ正教の司祭の家系で育った環境や、信じがたいほどの記憶力に恵まれていた数多くのエピソードはミトロプーロスにある種の神秘性を与えました。さらに、ピアニストがお手上げになって逃げ出したプロコフィエフの3番を、急遽ピアノと指揮を同時に引き受けて演奏したとか(今で言うところの弾き振り)、様々な超人的なエピソードに包まれた人物です。
ところが、そういうエピソードがなんだか人間離れしたイメージを自分の中で勝手につくり出してしまったようで、私から彼を遠ざけていたようです。
また、市場に出回っているのがアメリカ時代の古い録音が多かったことも遠ざかる要因だったかもしれません。
しかし、いつまでも食わず嫌いではいけないだろうと言うことで、彼の録音をポツポツと聞き始めました。まずは、SP盤時代の録音であっても非常に音質がいいことに驚かされました。おそらく、かつて聞いた彼の古い録音は正規の復刻盤ではなかったので、その本来の音質がスポイルされていた可能性がありますね。
さらに、あらためて驚いたのは神秘的なイメージどころか驚くほどの「エンターテイメント性」に溢れていたことです。最初に聞いたときに、こんな簡単なことに何故に気づかなかったのでしょうか。
彼の演奏を一言で言えば、驚くほどに聞かせ上手なのです。そして、それがショーソンやボロディン等という今でもかなりマイナーな部類に入る交響曲でも、歌わせるべきところは美しく歌わせ、盛りあげるべきところでは圧倒的な響きで聞き手を慶ばせます。
これが、メンデルスゾーンやシューマン等のそれなりにメジャーな作品になると比較対象が増えるので、ミトロプーロスの聞かせ上手な側面がはっきりと見えてきます。
フランクの交響曲なんてのはどこか避けたい雰囲気が漂うのですが、彼はそれを実にからりと楽しく聞かせてくれます。
聞くところによると、彼はオケに対して常に寛容であり、叱ると言うことをしなかったようです。
確かに、ミトロプーロスは聞かせ上手と言っても作品の構造はしっかりと把握していて、その大きな枠からはみ出すことは絶対にありません。彼のエンターテイメント性は確たる論拠に裏付けられています。
ですから、ミトロプーロスが求めるものはもっと上にあるかと思うのですが、それでもその大きな枠の中からはみ出さない限りは、時にははみ出してしまっていても「それでも仕方がないか」と受け入れている感じなのです。とにかく、オケに無理強いはしない指揮者だったようです。
そして、そう言う寛容な姿勢がオケのやる気と自発性がフルに発揮されて、結果として驚くほどのエンターテイメント性の高い音楽が出来上がっているようなのです。
アメリカを離れた晩年はヨーロッパに活動の場を移すのですが、そんなミトロプーロスがもっとも相性が良かったというのはウィーン・フィルでした。
こういう昔の録音を聞くと、さもありなんと納得した次第です。
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