ショパン:ピアノ協奏曲第2番 へ短調, Op.21(Chopin:Piano Concerto No.2 in F minor, Op.21)
(P)ギオマール・ノヴァエス:オットー・クレンペラー指揮 ウィーン交響楽団 1951年6月9日~11日録音(Guiomar Novaes:(Con)Otto Klemperer Vienna Symphony Orchestra Published in June 9-11, 1951)
Chopin:Piano Concerto No.2 in F minor, Op.21 [1.Maestoso]
Chopin:Piano Concerto No.2 in F minor, Op.21 [2.Larghetto]
Chopin:Piano Concerto No.2 in F minor, Op.21 [3.Allegro vivace]
僕は悲しいかな、僕の理想を発見したようだ
ナンバーリングは第2番となっていますが、ショパンにとって最初の協奏曲はこちらの方です。
1829年にウィーンにおいてピアニストデビューをはたしたショパンは、その大成功をうけてこの協奏曲の作曲に着手します。そして、よく知られているようにこの創作の原動力となったのは、ショパンにとっては初恋の女性であったコンスタンティア・グワドコフスカです。
第1番の協奏曲が彼女への追憶の音楽だとすれば、これはまさに彼女への憧れの音楽となっています。
とりわけ第2楽章のラルゲットは若きショパン以外の誰も書き得なかった瑞々しくも純真な憧れに満ちた音楽となっています。
「僕は悲しいかな、僕の理想を発見したようだ。この半年というもの、毎晩彼女を夢見るがまだ彼女とは一言も口をきいていない。あの人のことを想っているあいだに僕は僕の協奏曲のアダージョを書いた」
友人にこう書き送ったおくように、まさにこれこそが青年の初恋の音楽です。
第1楽章 Maestoso
第2楽章 Larghetto
ショパンが恋心を抱いていた、コンスタンツィヤ・グワトコフスカへの想いを表現されている。まさに「初恋」の音楽です。
第3楽章 Allegro vivace
セルの時とは異なったテイスト
ノヴァエスはセルが指揮するニューヨークフィルと、1951年にショパンのピアノ協奏曲第2番、1952年にベートーヴェンのピアノ協奏曲第4番を演奏しています。どちらもニューヨークフィルの定期演奏会だったのですが、どちらもすでに紹介しています。
そして、最近気づいたのですが、これとほぼ同時期にクレンペラーの指揮で上記の2曲を録音しているのです。
おそらく、この時期にこの2曲をノヴァエスは集中的に演奏していたのでしょうが、その結果としてセルとクレンペラーという厳しい指揮者をバックに2種類の録音が残ったというのは興味深いことです。
しかし、この時期は、考えてみればクレンペラーにとっては不遇の時代であったことを思い出させます。
1939年に脳腫瘍に倒れたクレンペラーはロサンジェルス・フィルの音楽監督の座を失い、さらには元来患っていた躁鬱病も悪化して奇行が目立つようになり、戦後になってもアメリカでの活躍の道は閉ざされていました。さらにはヨーロッパに渡っても活動は思うにまかせず、ようやくレッグによって見いだされて1952年にEMIとレコード契約を交わすことになるものの、市民権継続の問題などからしばらくアメリカに留まることを余儀なくされます。
彼がEMIで本格的に録音活動をはじめるのは1954年からですから、この1950年代初頭ははまさに不遇のどん底ともいうべき時期だったはずです。
その事が関係しているのかどうかは分かりませんが、この狷介な男にしては珍しいほどにソリストの持ち味を引き立たせるように万全のサポートに徹しています。
そう言えば、彼はEMIの表看板になってからは協奏曲の伴奏なんてほとんどやっていないのではないでしょうか。
そして、ノヴァエスはそう言うサポートを得て、集中的に取り組んできたであろう作品を考え抜いた結果をそこで思う存分に披露しているように聞こえます。
ノヴァエスの魅力を味わうには非常に貴重な録音と言えるでしょう。
さらに序でながらあれこれ調べてみると、この二つの録音は1951年6月9日から11日にかけてのセッションで録音されたものであることが分かりました。レーベルはアメリカの新興レーベルである「Vox Records」によるもので、当時クレンペラーにとって唯一の活躍の舞台でした。
さらに、この3日間でもう一曲、シューマンのピアノ協奏曲も録音していたことが分かりました。
個人的には、このシューマンの協奏曲が両者の持ち味が一番上手く噛み合っていて、もっとも魅力的な録音ではないかと思いました。
世間的にはベートーヴェンのピアノ協奏曲第4番の録音の評価が高いようですね。
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