クラシック音楽へのおさそい~Blue Sky Label~

ラフマニノフ:ピアノ協奏曲第3番

P:ギーゼキング メンゲルベルグ指揮アムステルダム・コンセルトヘボウ管弦楽団 1940年3月28日録音





Rachmaninov:ピアノ協奏曲第3番「第1楽章」

Rachmaninov:ピアノ協奏曲第3番「第2楽章」


難曲中の難曲

今では映画「シャイン」のおかげで、2番のコンチェルトよりも有名になってしまったかもしれません。なんといっても、古今東西のあらゆるピアノ協奏曲の中でこれほどまでに演奏が困難なものはちょっと思い当たりませんし、映画でもその点を強調して主人公はその困難さにとりつかれて精神に異常をきたしてしまうのですから、話題性は満点です。

しかし、どうなんでしょうか?最近のバカウマの若手連中なら誰でも弾きこなすのではないでしょうか。確かに難しいことは難しいでしょうし、とりわけ2種類あるカデンツァのうち「ossia」と呼ばれる方はとんでもなく難しいものです。それでも、演奏するだけなら何とかやり遂げるだけの能力は今の若手ならほとんどが身につけているのではないでしょうか。

それはさておき、この作品を聞けば、派手さはあるものの2番のコンチェルトで聞けたロシアの郷愁のようなものは後退していることに気づかされます。それは、この作品がラフマニノフのアメリカへの演奏旅行のために創作されたという経緯とも関係しているのかもしれません。当時のアメリカではとにかく派手な名人芸がもてはやされていましたから、この作品ではラフマニノフの芸人魂が爆発したかのような作品が出来上がってしまったのではないでしょうか。
とにかくピアノという楽器を使ってどこまで圧倒的に音楽を盛り上げることができるのかという課題に対する一つの模範解答がここにあることは間違いありません。
ただしなのです。
この作品に限ったことではないのですが、私には彼の作品に散漫でとりとめのない雰囲気を感じ取ってしまうのです。その散漫さが2番のコンチェルトでは影を潜めていたのが、ここでまたあふれ出してきたように感じられます。
ピアノの響きはどこまでも分厚くて重厚であり、それがここぞという場面ではクレッシェンドに続くクレッシェンドで音楽を圧倒的に盛り上げていくのですが、聞き終わった後になんと見えない空虚さを感じてしまいます。その芸人魂には感服するのですが、果たして歴史の審判に耐えて芸術作品として後世に残るのかと聞かれれば自信を持ってイエスとは言えないユング君です。

晩年のギーゼキングとは別人のよう!!


リクエストコーナーで教えていただいてはじめて知った演奏ですが、聞いてみてびっくりしました。ギーゼキングといえば最晩年のモーツァルトのソナタ全集のイメージが強いものですから、それと同一人物による演奏とはにわかに信じがたいほどの奔放な演奏です。
また、それを支えるメンゲルベルグの棒もさえています。何ともいえず重厚でコッテリとした音楽で、ギーゼキングの「熱い」ピアノをさらに熱くあおり立てています。

ただ、硬質で透明感のある冴えた音色は晩年のギーゼキングと共通するものがあります。録音に関して言えばオケにはつぶれ気味なのですが、ピアノはけっこうクリアにとらえられているのでそのことははっきりと感じ取れます。解釈というかスタイルというか、そういうものは年につれて大きくかわることがあっても、ピアノの音色という基本に関わるようなことは余り変化しないものなんだと妙なところで感心させられました。

晩年の素っ気ないほどに枯れた演奏しか知らない人には、ギーゼキングのもう一つの顔を知る上で貴重な録音だといえます。

よせられたコメント

2010-08-22:Joshua


2018-01-14:na~san


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