シューマン:マンフレッド序曲 作品115
カール・シューリヒト指揮 南西ドイツ放送交響楽団 1960年12月録音
Schumann:Manfred Overture, Op115
流浪の旅を続けるマンフレッド
バイロンの詩劇「マンフレッド」に触発されて作曲されたもので、序曲と15の場面かな成り立っています。しかし、序曲だけは非常に有名であるのに対して、それに続く15の音楽が演奏されることはほとんどありません。
やはり、オペラでもなければオラトリオでもない、「詩劇」というスタイルが今の時代にはマッチしないのでしょうか。
また、バイロンの「マンフレッド」も、今ではどの程度のポピュラリティがあるのかも疑問です。少なくとも、日本でこの題名を聞いてシューマンの序曲を思い出す人はいても、バイロンの作品を思い出せる人は少数でしょう。
流浪の旅を続けるマンフレッドが、かつて捨て去った女性(アスタルテ)の霊と地下の国で会い、その許しを得ることで救われるという話です。
そして、このバイロンの作品全体を総括するような音楽がこの序曲なのですが、それはストーリーを標題音楽的にまとめるのではなくて、物語の中でシューマンが感じとったマンフレッドの姿を純粋器楽の形式で表現したものになっています。
何気なくさらさらと流れているだけに見えながら、アメリカ的なザッハリヒカイトになっていないのは凄いことなのかもしれません
シューマン:交響曲第3番 変ホ長調 「ライン」 作品97の演奏へのコメントです
シューリヒトの音楽と言えば淡彩でさらさららと流れていくというのが一般的です。しかし、50年代の録音などを聞いていると、さらさらと流れているようで、細かく見ていると結構微妙なニュアンスを付与していることに気づく場面があります。
しかし、この60年代のコンサート・ホールの録音に関しては、やや薄味の録音も考慮しないといけないのでしょうが、本当にさらさらと流れて終わっていると感じる場面があります。
そんな「さらさらと流れて終わっている」と感じてしまう一枚がこのシューマンの第3番「ライン」の交響曲です。
かなり速めのテンポで始まり、その流れに乗って音楽は最後まで一気に流れていきます。ただし、その速めのテンポはミュンシュのように響きが凝縮することはなくひたすら淡彩の響きで終始します。
しかし、ここでふと考えてしまうのです。
この数日、ヨーロッパとアメリカの「重さ」の違いみたいなもの考えていたのですが、確かに、シューリヒトの演奏からはバルビローリやサヴァリッシュから感じたような「重さ」は感じません。
ならば、そこにはアメリカ的な世界が広がっているのかと言えば、それはもう、全く違っています。
なるほど、もしかしたら、この不思議な感覚こそが、他の指揮者にはないシューリヒトの魅力なのかもしれません。
ただし、この感覚を明瞭な言葉にするのが非常に難しいのです。
シューリヒトという人は、例えばサヴァリッシュのように、地方の歌劇場からたたき上げてケルンやバイエルンの歌劇場のシェフになると言う定番コースとは違うキャリアを歩みました。
彼はそのような表通りを歩むのではなく、そう言う表通りを横目に見ながら、客演活動をメインにこなしてきた人でした。
優れた教養と音楽的才能がありながら、何故にそう言う脇役人生を歩んでしまったのか不思議としか言いようがないのですが、結局はそれがシューリヒトと言う音楽家の骨格を作ったのかもしれません。
ですから、そのさらさらと流れていく「軽さ」はヨーロッパの劇場において継承されてきた約束事などは知った事じゃないと言って、そんなものからは殆どフリーな状態で音楽がやれるアメリカ的な気楽さとは明らかに異なります。
そうではなくて、彼はいわゆるヨーロッパ的伝統というものは知りすぎるほど知り尽くしていました。
しかし、その表通りではなかったキャリアのおかげで、伝統の何たるかは知り尽くしていながら、その「重さ」に絡め取られる「義理」を持つ必要もなかったというのがシューリヒト特有の立ち位置だったのかもしれません。
ですから、この何気なくさらさらと流れているだけに見えながら、それが決してアメリカ的なザッハリヒカイトになっていない演奏というのは、考えようによっては凄いことなのかもしれません。
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