クラシック音楽へのおさそい~Blue Sky Label~

オッフェンバック:歌劇「ホフマン物語」より舟歌

ゲオルク・ショルティ指揮 コヴェント・ガーデン王立歌劇場管弦楽団 1958年6月録音





Offenbach:Les contes d'Hoffmann-Barcarolle


オペレッタ形式の生みの親

オッフェンバックはフランスの作曲家のように思われていますが生まれはドイツのケルンです。(1819年)その後、チェロの勉強をするためにフランスに渡り(1833年)、そのままフランスで指揮活動や作曲活動を行うようになりました。
1850年にはテアトル・フランセの指揮者になり、さらには1855年に自らブフ・パリジャンという小さな劇場を立ちあげます。その劇場はあまりにも手狭だったためその年の暮れにはテアトル・コントに小屋を移し、そこを拠点として自作のオペレッタなどを上演して絶大な人気を博すようになります。
1861年には、小屋の経営からは撤退して、自作オペレッタの指揮者としての活動に専念するようになり、世界各地を演奏旅行して回るようになります。とりわけ、1876年に実施したアメリカ旅行は大成功を納めています。
オッフェンバックがその生涯に作曲したオペレッタは102曲に及ぶと言われています。とりわけ、「地獄のオルフェ(天国と地獄)」(1858年)、「うるわしのエレーヌ」(1864年)、「青ひげ」(1866年)、「パリの生活」(1866年)などは現在でもたびたび上演されています。また、「オペレッタ」という形式もオッフェンバックが確立したものであり、その後のヨハン・シュトラウスやスッペなどにに大きな影響を与えたことは言うまでもありません。
しかし、晩年はフランスでの一時の人気を失い、オッフェンバックにとっては唯一となるオペラ作品「ホフマン物語」で復活を期しますが、未完のまま1880年にこの世を去ります。このオペラはオッフェンバックがその持てる力の全てを注いだ作品だけに、その後多くの手が加えられて上演されるようになっています。

恐るべし、ハンガリーの猛獣


コヴェント・ガーデンの歌劇場の歴史を振り返ってみると、初代の音楽監督は1946年に就任したカール・ランクルでした。しかしながら、歌劇場の歴史は18世紀初頭まで遡るのですから、その間はどうしていたんだという疑問が脳裏をよぎります。ちなみに、ウィーンの歌劇場などは建物が完成したのは1869年なのですが、その翌年にはヨハン・ヘルベック が初代の音楽監督に就任しています。

実はこの違いこそが、このイギリスの歌劇場の性格を決定しています。それは、歌劇場と言えば、そこには専属のオーケストラやバレエ団などが存在しているのが普通なのですが、イギリスの歌劇場にはそう言う普通の体制が存在していなかったのです。

つまりは、歌劇場という「箱」は存在しているのですが、そこでオペラを上演するのは「興行主」達であって、彼らは自らの「興業」のたびに必要なオーケストラや歌手、そして必要とあればバレエ団などを調達していたのです。
当然の事ながら、その様なシステムでは演奏のクオリティが上がるはずもなく、さらには聴衆に分かりやすいように英語で歌唱するという習慣も長く存在し続けました。

ですから、1946年にカール・ランクルが音楽監督に就任したのは、そう言う「箱」だけの存在だった「歌劇場」が、ようやくにして専属のオーケストラや歌手などを抱えるようになったことを意味するのです。
ところが、この初代の音楽監督はワーグナーの楽劇の上演においてアンサンブルや演出をうまくまとめられないとして馘首になると言う体たらくだったのです。
そして、その後は音楽監督不在の状態が続き、1955年にラファエル・クーベリックが2代目の監督に就任するのですが、それも58年には辞任してしまってまたまた監督不在の状態になるのです。

そんなコヴェント・ガーデンの歌劇場に3代目の音楽監督として乗り込んできたのがショルティだったのです。
コヴェント・ガーデンの歌劇場というのは、仲良く和気藹々と音楽をすることをモットーとしていましたから、そんなところにハンガリー出身の猛獣のような指揮者がやってくると言うことで恐慌状態に陥ります。
そして、その次に彼らが行ったことは陰に日向に、ありとあらゆる手段を使ってこの猛獣を追い出すことでした。

しかしながら、そう言う抵抗がどういう結果をもたらすかは、例えばパリのコンセルヴァトワールのオケがどういう目に遭わされたかを思い出せば容易に想像が付こうかというものです。
ショルティはこのアマチュア気分の抜けないこの仲良し集団にシステム化されたプロフェッショナル意識を注入しました。

彼らが自らの音楽監督として「ルドルフ・ケンペ」の名前を叫んでも、この猛獣は一切気にすることなく改革の大鉈を振るい続けるのです。

当然の事ながら、実力の伴わないイギリス人歌手達が英語で歌唱するというような「愚かしい伝統」は一掃され、世界中から一流の歌手が招かれるようになりました。
オーケストラの水準もこの猛獣の恐怖によってめざましい進歩を見せるようになり、瞬く間に世界の二流、三流の歌劇場に過ぎなかったこのオペラ・ハウスを世界のトップクラスに肩を並べる存在へと成長させていったのです。

アマチュアの仲良し集団ならば和気藹々とやっていればいいのでしょうが、プロがプロとしての相応しい姿に変身するためには猛獣が必要なのです。
ただし、組織の中において、誰からも歓迎されない骨の折れる仕事をやり遂げることが出来る人は滅多にいないのです。

この1958年に録音された「オペラからの名曲集」は、そんなぬるま湯につかっていたオーケストラが始めて猛獣と相まみえた瞬間を切り取ったものです。
驚くことに、そこにはそんな緩い雰囲気は微塵も存在していないのです。

恐るべし、ハンガリーの猛獣!!

Orchestra Of the Royal Opera House Covent Garden, Georg Solti - Venice



Rossini:Semiramide, Overture



Rossini:L'Italiana Algeri, Overture



Verdi:La Traviata, Prelude Act1



Verdi:La Traviata, Prelude Act3



Ponchielli:La Gioconda Danza delle ore



Offenbach:Les contes d'Hoffmann-Barcarolle



よせられたコメント

【リスニングルームの更新履歴】

【最近の更新(10件)】



[2024-11-21]

ショパン:ピアノ協奏曲 第1番 ホ短調, Op.11(Chopin:Piano Concerto No.1, Op.11)
(P)エドワード・キレニ:ディミトリ・ミトロプーロス指揮 ミネアポリス交響楽団 1941年12月6日録音((P)Edword Kilenyi:(Con)Dimitris Mitropoulos Minneapolis Symphony Orchestra Recorded on December 6, 1941)

[2024-11-19]

ブラームス:ヴァイオリン協奏曲 ニ長調 Op.77(Brahms:Violin Concerto in D major. Op.77)
(Vn)ジネット・ヌヴー:イサイ・ドヴローウェン指揮 フィルハーモニア管弦楽 1946年録音(Ginette Neveu:(Con)Issay Dobrowen Philharmonia Orchestra Recorded on 1946)

[2024-11-17]

フランク:ヴァイオリンソナタ イ長調(Franck:Sonata for Violin and Piano in A major)
(Vn)ミッシャ・エルマン:(P)ジョセフ・シーガー 1955年録音(Mischa Elman:Joseph Seger Recorded on 1955)

[2024-11-15]

モーツァルト:弦楽四重奏曲第17番「狩」 変ロ長調 K.458(Mozart:String Quartet No.17 in B-flat major, K.458 "Hunt")
パスカル弦楽四重奏団:1952年録音(Pascal String Quartet:Recorded on 1952)

[2024-11-13]

ショパン:「華麗なる大円舞曲」 変ホ長調, Op.18&3つの華麗なるワルツ(第2番~第4番.Op.34(Chopin:Waltzes No.1 In E-Flat, Op.18&Waltzes, Op.34)
(P)ギオマール・ノヴァエス:1953年発行(Guiomar Novaes:Published in 1953)

[2024-11-11]

ドヴォルザーク:ヴァイオリン協奏曲 イ短調, Op.53(Dvorak:Violin Concerto in A minor, Op.53)
(Vn)アイザック・スターン:ディミトリ・ミトロプーロス指揮 ニューヨーク・フィルハーモニー交響楽団 1951年3月4日録音(Isaac Stern:(Con)Dimitris Mitropoulos The New York Philharmonic Orchestra Recorded on March 4, 1951)

[2024-11-09]

ワーグナー:「神々の黄昏」夜明けとジークフリートの旅立ち&ジークフリートの葬送(Wagner:Dawn And Siegfried's Rhine Journey&Siegfried's Funeral Music From "Die Gotterdammerung")
アルトゥール・ロジンスキー指揮 ロイヤル・フィルハーモニ管弦楽団 1955年4月録音(Artur Rodzinski:Royal Philharmonic Orchestra Recorded on April, 1955)

[2024-11-07]

ベートーベン:ピアノ協奏曲第4番 ト長調 作品58(Beethoven:Piano Concerto No.4, Op.58)
(P)クララ・ハスキル:カルロ・ゼッキ指揮 ロンドン・フィルハーモニック管弦楽団 1947年6月録音(Clara Haskil:(Con)Carlo Zecchi London Philharmonic Orchestra Recorded om June, 1947)

[2024-11-04]

ブラームス:交響曲第3番 ヘ長調, Op.90(Brahms:Symphony No.3 in F major, Op.90)
アルトゥーロ・トスカニーニ指揮 フィルハーモニア管弦楽団 1952年9月29日&10月1日録音(Arturo Toscanini:The Philharmonia Orchestra Recorded on September 29&October 1, 1952)

[2024-11-01]

ハイドン:弦楽四重奏曲 変ホ長調「冗談」, Op.33, No.2,Hob.3:38(Haydn:String Quartet No.30 in E flat major "Joke", Op.33, No.2, Hob.3:38)
プロ・アルテ弦楽四重奏団:1933年12月11日録音(Pro Arte String Quartet]Recorded on December 11, 1933)

?>