ベートーベン:劇音楽「エグモント」 Op. 84 序曲
アンタル・ドラティ指揮 ロンドン交響楽団 1962年7月録音
Beethove:Egmont, Op.84 [Overture]
尊敬するゲーテから依頼された音楽
この序曲はゲーテの戯曲「エグモント」のために作曲されたものなのですが、今日ではこの序曲だけがよく演奏されます。
音楽全体は序曲と9曲の付随音楽からなり、通して演奏すると40分程度になル、規模の大きな音楽です。
歌曲: Vivace
第1幕第3場の民家の場面で、クレールヒェンが糸を巻きながら得意の「兵隊さんの歌」を歌う。
幕間の音楽1: Andante
失恋したブラッケンブルグが自殺してしまおうと悩んで幕が下りると演奏される幕間の音楽。
幕間の音楽2: Larghetto
エグモントの独白の後に第2幕の幕が下りると演奏される幕間の音楽
歌曲:Andante con moto
第3幕第2場でエグモントを待つクレールヒェンが母に向かって歌う歌曲
幕間の音楽3: Allegro - Marcia
第3幕の幕が下りると演奏される幕間の音楽で、エグモントからの愛の言葉を喜ぶクレールヘェンの心の余韻を伝える。
幕間の音楽4: Poco sostenuto e risoluto
第4幕のエグモントの台詞が終わらないうちに演奏される幕間の音楽。音楽が力なく終了するとそのまま第5幕に進んでいく。
クレールヒェンの死: Clarchens Tod
第5幕第3場でクレールヒェンが毒をあおって自殺した後に流れる音楽。オーボエが哀しみの旋律を美しく歌い上げる。
メロドラマ:Poco sostenuto
第5幕の獄中の場で、エグモントのモノローグとともに演奏される音楽
勝利のシンフォニア: Allegro con brio
エグモントの最後の台詞「最愛のものを救うために、喜んで命を捨てること、わがごとくあれ」の後に幕が下り始めると演奏される音楽。序曲のコーダと同一の楽曲であるが、こちらが先に完成されたと言われている。
この戯曲に音楽をつけるように依頼したのはゲーテ本人であり、いろいろあっても彼のことを深く尊敬していたベートーベンは喜んでその仕事を引き受けたのです。
ただし、残念ながら戯曲の方はそれほど成功を収めませんでした。その事もあって、今日では序曲だけが演奏される機会が多いと言うことなのでしょう。
コーダに突入していく迫力とそれを捉えた録音の優秀さは出色です。
これもまた、レオノーレの3番でも述べたように、アメリカ的なザッハリヒカイトの見本みたいな音楽かもしれませんが、少しばかりテイストが違う部分があります。
それは冒頭部分から分かることなのですが、他の演奏と較べれば短めに音価を切り上げている場面が目につきます。また、一つ一つのフレーズに対しても強めのアタックを与えることで彫りを深くしています。
そのあたりがややドラティの個性が滲んでいるような感じがします。
ただし、縦のラインを重視してザクッザクッとエッジを立てて造形していくやり方は、やはりアメリカンでしょうか。オケはロンドン響ですが、この時代のドラティはそう言う方法論が身にしみこんでいたのかもしれません。
ただし、その棒に追随していくロンドン響は文句なく上手いですし、コーダに突入していく迫力とそれを捉えた録音の優秀さは出色です。
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