メンデルスゾーン:交響曲第3番 イ短調 作品56 「スコットランド」
フランツ・コンヴィチュニー指揮 ライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団 1962年録音
Mendelssohn:Symphony No.3 in A minor, Op.56 Scottish [1.Introduction. Andante con moto - Allegro un poco agitato]
Mendelssohn:Symphony No.3 in A minor, Op.56 Scottish [2.Scherzo. Vivace non troppo]
Mendelssohn:Symphony No.3 in A minor, Op.56 Scottish [3.Adagio cantabile]
Mendelssohn:Symphony No.3 in A minor, Op.56 Scottish [4.Finale guerriero. Allegro vivacissimo - Allegro maestoso assai]
標題をつけるが好きだったみたいです(^^)
3番には「スコットランド」、4番には「イタリア」と副題がついています。
あまりポピュラーではありませんが、5番には「宗教改革」、2番にも「賛歌」と言う副題がついています。
そして、絶対音楽の象徴みたいに言われるシンフォニーですが、何故か副題がついている方が人気がでます。
もちろん、シンフォニーでなくても、副題がついている方がうんと人気がでます。もっとも、その副題も作曲者自身がつけたものもあれば、あとの時代で別人が勝手につけたものもあります。
中には、人気曲なのに名無しでは可哀想だと思ったのか、全く訳の分からない副題がついているものもあります。
あまりひどいものは次第に使われなくなって消えていくようですが、それなりに的を射ているものは結構通用しています。
そう言えば、すてきなメロディーを耳にしたときに、「この曲なんて言うの?」なんて聞かれることがよくあります。(よくあるわけないよな(^^;、時々あるほどでもないけれど、でも、たまーにこういう状況があることはあります。)
そんなときに知ったかぶりをして、「あーっ、これはね『ロッシーニの弦楽のためのソナタ』第1番から第2楽章ですよ、いい曲でしょう!」等と答えようものなら、せっかくの和んだ空気が一瞬にして硬直していくのが分かります。
ああ、つまらぬ事を言うんじゃなかったと思っても、後の祭りです。
でも、そんなときでも、その作品にしゃれた副題がついていると状況は一変します。
「あーっ、これはねショパンの革命ですよ。祖国を失った悲しみと怒りをピアノにたたきつけたんですね、ふふふっ!」と言えば、実にかっこいいのである。
ところが、全く同じ事を言っているのに、「あーっ、これはねショパンのエチュードから第12番ハ短調、作品番号10の12です、祖国を失った悲しみと怒りをピアノにたたきつけたんですね、ふふふっ!」と答えれば、これは馬鹿である。
クラシック愛好家がこのような現実をいかに理不尽であると怒っても、それは受け入れざるを得ない現実です。
流行歌の世界でも、「ウタダの待望の新作「作品番号12の3変ホ長調!」なんていった日には売れるものも売れなくなります。
もっともっと素敵な標題をみんなでつけましょう(^^)
そして、クラシック音楽にいささかいかがわしい副題がついていても目くじらをたてるのはやめましょう。
中には、そう言うことは音楽の絶対性を損なうといって「僕は許せない!」と言うピューリタン的禁欲主義者のかたもおられるでしょうが、そう言う方は「クラシック音楽修道院」にでも入って世俗との交流を絶たれればすむ話です。
いや、私たちは逆にどんどんすてきな副題をつけるべきかもしれません。
だって、今流れているこの音楽にしても、メンデルスゾーンの「交響曲第3番イ短調作品番号56」、と言うよりは、メンデルスゾーンの「スコットランド」と言う方がずっと素敵だと思いませんか。
それにしても、メンデルスゾーンは偉い、1番をのぞけば全て副題をつけています。有名なヴァイオリンコンチェルトも今では「メンコン」で通じますから大したもです。(うーん、でもこれが通じるのは一部の人間だけか、それに付け方があまりにも安直だ、チャイコン、ブラコンあたりまでは許せても、ベトコンとなると誤解が生じる。)
ピアノ曲集「無言歌」のネーミングなんかも立派なものです。
「夢」「別れ」「エレジー」あたりは月並みですが、「「眠れぬ夜に」「安らぎもなく」、「失われた幸福」と「失われた幻影」に「眠れぬままに」「朝の歌」と来れば、立派なものだと思いませんか。
ヨーロッパの田舎オケの凄さ
メンデルスゾーンの「スコットランド」と言えば真っ先に思い浮かぶ録音が
クレンペラーの60年盤 です。
あの空前絶後のフィナーレを聞いて「これを聞くと、メンデルゾーンのすぐ隣にブルックナーがたたずんでいることに気づかされます」と書いて、随分批判されたことを思い出します。
「ブルックナーとメンデルスゾーンとを同列に論じられるなんて私には想像もつかないユニークな見方です。」
15年以上も前の話です。
レコ芸の威光は未だ衰えをみせず、あらゆる情報と価値観はマスメディアの上流から下流へと流れていた時代の最後の頃でした。
特定の評論家の影響力が絶大な意味を持った時代であり、その中でブルックナーは神にも比すべき音楽として称揚されていたのですから、それと金持ちの凡であるメンデルスゾーンを同列に論じるなどと言うことは、冒涜以外の何物でもなかったのでしょう。
しかし、純粋に音楽的に考えてみれば、メンデルスゾーンのコーダとブルックナーのコーダは同じ線上に並んでいると思います。
そして、その事をクレンペラー以上に分からせてくれるのが、このコンヴィチュニーによるスコットランドの演奏です。
クレンペラーの録音はフィルハーモニー管の機能を存分に生かすことによって、底光りのする強靱な響きで造形されていました。
それと比べると、このコンヴィチュニーとゲヴァントハウス管の響きはかなりくすんでいます。響きの表面は磨くのではなく、生成りのザラッとした感触を最大限に生かしています。
結果として、もしかしたらクレンペラー以上に巨大かもしれないフィナーレは、よりオルガン的な響きとなっています。
そして、このフィナーレがただの虚仮威しになっていないのは、そこに至る3つの楽章がこの上もなく重厚で強固な音楽として造形されているからです。
その点はクレンペラーと同じであり、もしかしたらそれ以上に「立派」かもしれません。
コンヴィチュニーという指揮者は今となっては次第に忘却の彼方に消えつつあるのかもしれません。
しかし、こうして残された録音を聞いてみると、かつてのヨーロッパの田舎オケの「凄み」を刻み込んだ世界遺産として、永久に記憶にとどめるべき存在です。
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