シュタルケル チェロ・リサイタル
(Vc)ヤーノシュ・シュタルケル (P)ジェラルド・ムーア 1958年7月6日~7日録音
Johann Sebastian Bach:Air ( From Suite No. 3 In D Major BWV. 1068)
Camille Saint-Saens:Allegro Appasionato, Op. 43
Claude Debussy:La Fille Aux Cheveux De Lin (No. 8 Of "Preludes" , Book 1)
Frederic Chopin:Nocturne In E Flat Major Op. 9 No. 2
David Popper:Hungarian Rhapsody
Johann Sebastian Bach:Arioso ( From Concerto No. 5 In F Minor Bwv. 1056)
Franz Schubert:Allegretto Grazioso
Franz Schubert:AMoment Musical D.780 No. 3
Modest Mussorgsky:Gopak (From "Sorotschinski Fair", Act. 3)
Robert Schumann:Traumerei (Reverie) (No. 7 Of "Kinderscenen", Op. 15)
Claude Debussy:Menuet ( From "Petite Suite")
Niccolo Paganini:Caprice, Op. 1, No. 13
収録曲
- バッハ:組曲第3番ニ長調 BWV1068~G線上のアリア
- サン=サーンス:アレグロ・アパッショナート op.43
- ドビュッシ/フェイヤール編:前奏曲集第1巻~第8曲『亜麻色の髪の乙女』
- ショパン/ポッパー編:夜想曲変ホ長調 op.9-2
- ポッパー:ハンガリア狂詩曲
- バッハ/クランユ編:ピアノ協奏曲第5番ヘ短調 BWV 1056~第2楽章
- シューベルト/カサド編:アレグレット・グラツィオーソ
- シューベルト/ベッカー編:『楽興の時』第3番 D.780-3
- ムソルグスキー/ストウチェウスキー編:歌劇『ソロチンスクの市場』~ゴパック
- シューマン/パラシェコ編:子供の情景 op.15~トロイメライ
- ドビュッシー/グールト編:小組曲~メヌエット
- パガニーニ/クライスラー編:カプリース第13番 op.1-13
静かな音楽
1958年に、珍しくもシェベックではなくて、名伴奏ピアニストとして評価の高かったジェラルド・ムーアとのコンビで録音したのが「Cello Recital」というアルバムでした。
どうして、いつも相棒を務めるシェベックではなく、ムーアなんだろうと思ったのですが、聞いてみてその理由が分かりました。
シェベックという人はシュタルケルの相棒というくらいでしか認知度がないのですが、意外と優れたピアニストで、お互いの気心が知れていることもあってシュタルケルのチェロを向こうに回して、結構ガンガンと前に出てきます。
それに対して、ムーアという人は骨の髄まで伴奏指揮者でした。
ただし、その「伴奏」というのは「二流」ということではなくて、お互いの調和を取るということにこの上もない集中力を発揮したということです。
彼が晩年に記したが「お耳ざわりですか ~ある伴奏者の回想」は実に面白い読み物で、音楽ではあれほど相手を立てることに心を尽くしたのに、この回想録はかなり辛口でシニカルなのです。しかし、そんなシニカルな回想の中でカザルスとの共演に関しては幸せな思い出として次のように語っています。
偉大なチェロ奏者 カザルスが、初顔合わせの練習で 選んだのは、ベートーヴェン 後期のソナタ ニ長調 作品102の第2楽章 であった。
遅いテンポの 第2楽章は、音符を 弾くだけなら、とても 簡単。
最初の20小節は、素人でも すぐに 読めるような 楽譜である。
しかし、ゆったり弾く フレーズの中に、繊細な強弱・抑揚をつけなければならないし、伴奏が 強すぎたり弱すぎたら、調和がとれず台なしになってしまう。
共演者として、うまく溶け合うか 試されているわけだ。
私は、神経を 研ぎ澄まし、指先に 精神を 集中させて、鍵盤に 向かった …
20数小節 進んだところで、カザルスは、突然 弾くのを 止めてしまった。
彼は 楽器を静かに横に置き、私を真正面から 見つめて言った。
「 私は、とても 満足です。」
ここには彼の誇らしい気持ちと同時に、伴奏ピアニストとして彼が何を大切にしてきたかがあっはきりと記されています。
そして、そういうムーアが持つ美質がここでも遺憾なく発揮されています。シュタルケルもそのようなムーアに全幅の信頼を寄せて、肩の力を抜いて実に静かに、そしてゆったりとチェロを歌わせています。
結果として、とても美しく、そして静かな時間が流れていきます。
できれば、こういう音楽を誰もいない山巓で聞いてみたいものです。
よせられたコメント
【最近の更新(10件)】
[2024-11-21]
ショパン:ピアノ協奏曲 第1番 ホ短調, Op.11(Chopin:Piano Concerto No.1, Op.11)
(P)エドワード・キレニ:ディミトリ・ミトロプーロス指揮 ミネアポリス交響楽団 1941年12月6日録音((P)Edword Kilenyi:(Con)Dimitris Mitropoulos Minneapolis Symphony Orchestra Recorded on December 6, 1941)
[2024-11-19]
ブラームス:ヴァイオリン協奏曲 ニ長調 Op.77(Brahms:Violin Concerto in D major. Op.77)
(Vn)ジネット・ヌヴー:イサイ・ドヴローウェン指揮 フィルハーモニア管弦楽 1946年録音(Ginette Neveu:(Con)Issay Dobrowen Philharmonia Orchestra Recorded on 1946)
[2024-11-17]
フランク:ヴァイオリンソナタ イ長調(Franck:Sonata for Violin and Piano in A major)
(Vn)ミッシャ・エルマン:(P)ジョセフ・シーガー 1955年録音(Mischa Elman:Joseph Seger Recorded on 1955)
[2024-11-15]
モーツァルト:弦楽四重奏曲第17番「狩」 変ロ長調 K.458(Mozart:String Quartet No.17 in B-flat major, K.458 "Hunt")
パスカル弦楽四重奏団:1952年録音(Pascal String Quartet:Recorded on 1952)
[2024-11-13]
ショパン:「華麗なる大円舞曲」 変ホ長調, Op.18&3つの華麗なるワルツ(第2番~第4番.Op.34(Chopin:Waltzes No.1 In E-Flat, Op.18&Waltzes, Op.34)
(P)ギオマール・ノヴァエス:1953年発行(Guiomar Novaes:Published in 1953)
[2024-11-11]
ドヴォルザーク:ヴァイオリン協奏曲 イ短調, Op.53(Dvorak:Violin Concerto in A minor, Op.53)
(Vn)アイザック・スターン:ディミトリ・ミトロプーロス指揮 ニューヨーク・フィルハーモニー交響楽団 1951年3月4日録音(Isaac Stern:(Con)Dimitris Mitropoulos The New York Philharmonic Orchestra Recorded on March 4, 1951)
[2024-11-09]
ワーグナー:「神々の黄昏」夜明けとジークフリートの旅立ち&ジークフリートの葬送(Wagner:Dawn And Siegfried's Rhine Journey&Siegfried's Funeral Music From "Die Gotterdammerung")
アルトゥール・ロジンスキー指揮 ロイヤル・フィルハーモニ管弦楽団 1955年4月録音(Artur Rodzinski:Royal Philharmonic Orchestra Recorded on April, 1955)
[2024-11-07]
ベートーベン:ピアノ協奏曲第4番 ト長調 作品58(Beethoven:Piano Concerto No.4, Op.58)
(P)クララ・ハスキル:カルロ・ゼッキ指揮 ロンドン・フィルハーモニック管弦楽団 1947年6月録音(Clara Haskil:(Con)Carlo Zecchi London Philharmonic Orchestra Recorded om June, 1947)
[2024-11-04]
ブラームス:交響曲第3番 ヘ長調, Op.90(Brahms:Symphony No.3 in F major, Op.90)
アルトゥーロ・トスカニーニ指揮 フィルハーモニア管弦楽団 1952年9月29日&10月1日録音(Arturo Toscanini:The Philharmonia Orchestra Recorded on September 29&October 1, 1952)
[2024-11-01]
ハイドン:弦楽四重奏曲 変ホ長調「冗談」, Op.33, No.2,Hob.3:38(Haydn:String Quartet No.30 in E flat major "Joke", Op.33, No.2, Hob.3:38)
プロ・アルテ弦楽四重奏団:1933年12月11日録音(Pro Arte String Quartet]Recorded on December 11, 1933)