テレマン:独奏フルートのための12の幻想曲集第6番 ニ短調
(Fl)ジャン=ピエール・ランパル 1963年10月9日&29日録音
Telemann:12 Fantasias for Flute without Bass, TWV 40:7 [1.Dolce]
Telemann:12 Fantasias for Flute without Bass, TWV 40:7 [2.Allegro]
Telemann:12 Fantasias for Flute without Bass, TWV 40:7 [3.Spirituoso]
新しさを感じる音楽
ここにも大きな欠落がありました。気がつけばテレマンの作品を一つも紹介していないことに気がつきました。(^^;
テレマンと言えば「ターフェルムジーク(食卓の音楽)」が思い浮かぶほど有名なのですが、その作品を実際に聞いた人は意外と少ないのではないでしょうか。
バロック時代の最後を飾るビッグネームであり、ヘンデルの友人であり、あのバッハとも交流のあった作曲家なのに、残念と言えば残念です。
しかし、そう言いながら、この私も今まで紹介することすら忘れていたというのは、結局私も彼の作品を聞くことがほとんど無いという「事実」を自白しているようなものです。
とはいえ、欠落のままに出来る名前ではないので、自分なりに聞いてみて気に入った作品から幾つか紹介していきたいと思い、最初に取り上げたのが「独奏フルートのための幻想曲」です。
この12の小曲からなるフルートの音楽は、バロック時代の作品としては珍しい無伴奏のための音楽になっています。
バロック時代というのは「通奏低音の時代」と呼ばれるほど、チェンバロなどによる通奏低音の伴奏が音楽の重要な構成要素でした。ですから、旋律楽器が一つの無伴奏の曲は少数しか書かれていません。言うまでもなく、もっとも有名なのはバッハのヴァイオリンやチェロ、フルートの無伴奏音楽です。そして、そう言う「斬新」なスタイルでテレマンも音楽を書いていると言うことで興味をひいたわけです。
この無伴奏という形式は、バッハの作品でもそうなのですが、不思議なほどに古さを感じさせないどころか、何処か20世紀的な新しさを感じてしまうような部分を持っています。このテレマンの音楽も、どの作品も長くてもせいぜい5分程度なので、何処か雰囲気的に20世紀の新ウィーン楽派の音楽を聴いているような手触りがあります。
もちろん、旋律のラインは耳に優しいので、ウェーベルンみたいな厳しさとは無縁です。ですから、本質的には全く異なる音楽なのですが、それでもそう言う新しい音楽に似通った手触りみたいなものを感じてしまいます。
おそらくは、無伴奏という形式が持っている功徳なのでしょう。
独奏フルートのための12の幻想曲集 TWV40:2-13
- 第1番 イ長調 ヴィヴァーチェ/アレグロ 2部
- 第2番 イ短調 グラーヴェ/ヴィヴァーチェ?アダージョ/アレグロ 3部
- 第3番 ロ短調 ラルゴ?ヴィヴァーチェ?ラルゴ?ヴィヴァーチェ/アレグロ 2部
- 第4番 変ロ長調 アンダンテ/アレグロ/プレスト 3部
- 第5番 ハ長調 プレスト?ラルゴ?プレスト?ドルチェ/アレグロ/アレグロ 3部
- 第6番 ニ短調 ドルチェ/アレグロ/スピリトゥオーゾ 3部
- 第7番 ニ長調 アラ・フランチェーゼ/プレスト 2部
- 第8番 ホ短調 ラルゴ/スピリトゥオーゾ/アレグロ 3部
- 第9番 ホ長調 アフェットゥオーゾ/アレグロ/グラーヴェ/ヴィヴァーチェ 4部
- 第10番 嬰ヘ短調 ア・テンポ・ジュスト/プレスト/モデラート 3部
- 第11番 ト長調 アレグロ/アダージョ?グラーヴェ/アレグロ 3部
- 第12番 ト短調 グラーヴェ?アレグロ?グラーヴェ?アレグロ?ドルチェ?アレグロ/プレスト 2部
フルートによる音楽の裾野を広げた
フルーティストと言えば今まではマルセル・モイーズしか取り上げていないことにも気づきました。
これもまた大きな欠落と言わざるを得ないでしょう。
マルセル・モイーズは現在のフルート演奏の基礎を築き上げた偉大な存在と言われているのですが、さすがに古い人と言わざるを得ません。出来ればもう少しいい録音でフルートの音楽を聴きたいとなれば、モイーズの後を受けてフランスのフルート音楽を支えたランパルを取り上げるべきでしょう。
このランパルという人はサービス精神が旺盛で、たびたび日本にやってきては、「ちんちん千鳥」みたいな音楽まで録音したりするので、随分と軽く見られる向きがあります。しかし、その業績を振り返れば、偉大なモイーズの後継者がこのランパルであったことは否定しようがありません。
ただ、いろんな面で器用な人だったようで、それ故にフルートにかける執念みたいな点ではモイーズとはかなり肌合いが違ったようです。そのため、常に高いレベルの演奏を維持したと伝えられているモイーズと較べれば出来不出来の差が小さくなかったとも言われています。
しかし、その器用さのおかげで、随分たくさんのマイナー作品まで積極的に取り上げて、フルートによる音楽の裾野を広げたことも事実です。
このテレマンの無伴奏音楽なんかも、私はここで取り上げるために初めて聞いたのですが、彼はこの作品を7年代にももう一度取り上げています。実際にフルートを演奏する人たちにとっては、この作品は決してマイナー作品ではなのかもしれませんね。
聞くところによると、無伴奏でありながらも、演奏テクニック的にはそれほど難しくなくて、アマチュアでも十分楽しめるそうです。
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