マーラー:交響曲第4番 ト長調
クレンペラー指揮 フィルハーモニア管弦楽団 (S)エリーザベト・シュヴァルツコップ 1961年4月録音
Mahler:交響曲第4番 ト長調 「第1楽章」
Mahler:交響曲第4番 ト長調 「第2楽章」
Mahler:交響曲第4番 ト長調 「第3楽章」
Mahler:交響曲第4番 ト長調 「第4楽章」
マーラーの間奏曲・・・?

この作品をそのようにいった人がいました。
2番・3番と巨大化の方向をたどったマーラーの作品が、ここでその方向性を変えます。ご存じのように、この後に続く5〜7番は声楽を伴わない器楽の3部作と言われるものです。
この第4番はそれらとは違って第4楽章にソプラノの独唱を伴いますが、それは前2作のように、声楽の追加によってよりいっそうの表現の巨大化を求めたものとは明らかに異なります。
牧歌的小景とか天国的な夢想と称されるこの作品の雰囲気をより高めるために、実に細やかな歌となっています。まさに、前期の2,3番と中期の4〜7番をつなぐ「間奏曲」というのはまさにこの作品を言い表すのにはぴったりの表現かもしれません。
しかし、そこはマーラーの事ですから、間奏曲と言っても普通に演奏すれば1時間近い作品ですから、一般的な交響曲のサイズから言えばかなりの大作であることは事実です。
とりわけ、第3楽章の美しいメロディは、ユング君の見るところでは、第3番の最終楽章と並んでマーラーが書いたもっとも美しい音楽の一つだと思います。
古典的均衡をもって構築された交響曲
クレンペラーとワルターはともにマーラーの弟子筋にあたるのですが、師の作品を取り上げるときのコンセプトは随分と異なります。
ワルターの基本は理解されがたい師の作品をできる限り多くの人に理解してもらうために、作品の本質を損なわない範囲で「分かりやすく」「かみ砕いて」提供するというスタンスでした。それに対して、クレンペラーは「分かりやすく」「かみ砕いて」提供するのではなく、作品の本質を損なわない範疇で古典派の交響曲であるかのように料理して提供しました。
ただくせ者は、この「作品の本質を損なわない範囲・範疇」という言いましであって、煩雑とも言えるマーラーの指示をできる限り忠実に実行することが「常識」となっている今の時代にあっては、それは「作品の本質を損なっているだろう!」という突っ込みが入ることは避けられないのです。
特に、ものの見事なまでにマーラーが指示した曲線路を無視したクレンペラーの演奏には昔から批判の声が寄せられていました。
その意味では、この第4番の録音は、マーラー・ルネッサンスとも言うべきバーンスタインの4番の録音とほぼ同じ時期の録音なのですが、本質的にはバーンスタイン以前の「紀元前のマーラー」の範疇に入る演奏だと言えます。そして、マーラー自身が思い描いていたであろう音楽の世界とは全く異質な世界であることも事実です。
それはきっと間違いないだろうと思います。
しかし、作品というものは創作者の手を離れてしまえば一人歩きを始めます。
おそらく、マーラーは想像もしなかったと思うのですが、この古典的均衡をもって構築された交響曲は、それはそれなりに立派なものです。ファースト・インプレッションは極めて素っ気ないように見えて、その実は、たとえばこの作品の中心とも言うべき第3楽章などは真摯な感情があふれていることに気づかされるはずです。
もちろん、コアなマーラーファンであれば、「これはマーラーではない」という思いは否定できないでしょう。しかし、こういう形でマーラーを提供されると、意外なほどにマーラー作品は懐が広いかかもしれないと思わせられます。まあ、一度は聞いてみる価値は充分にあると思います。
よせられたコメント
2013-07-05:ろば
- マーラーの4番はこの演奏で知りました。
その他に色々聴いて来ましたけど、結局クレンペラーのに戻ってきてしまいます。
自分にはホームポジション的な録音です。
2025-08-12:cappucino
- クレンペラーはマーラーが監修するオスカー・フリート指揮の復活演奏会で、舞台裏楽器の指揮をしたことがあります。ワルターとならんで、マーラー交響曲の実演を知る人物なので、彼の演奏にはそうした歴史的価値があります。
クレンペラーの復活実演をラジオで聴いたアルマがクレンペラーへの書簡で「マーラー本人のテンポを思い出した」と伝えたそうです。
その意味で「ワルター・クレンペラーとバーンスタインと、どちらがマーラーの意図に近いか」という問いには、無理して答えない方がよい一面があるかと思います。
クレンペラーのマーラー4番の特徴としては、3楽章アダージョを引き伸ばさないことがあげられます。
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