モーツァルト:レクイエム
ワルター指揮 ニューヨークフィル (S)イルムガルト・ゼーフリート (T)レオポルド・シモノー ウェストミンスター合唱団他1956年3月10&12日録音
Mpzart:レクィエム ニ短調 K.626 「入祭唱」
Mpzart:レクィエム ニ短調 K.626 「キリエ」
Mpzart:レクィエム ニ短調 K.626 「怒りの日」
Mpzart:レクィエム ニ短調 K.626 「奇しきラッパの響き 」
Mpzart:レクィエム ニ短調 K.626 「恐るべき御稜威の王 」
Mpzart:レクィエム ニ短調 K.626 「思い出したまえ」
Mpzart:レクィエム ニ短調 K.626 「呪われた人々が 」
Mpzart:レクィエム ニ短調 K.626 「涙の日」
Mpzart:レクィエム ニ短調 K.626 「主イエス・キリスト」
Mpzart:レクィエム ニ短調 K.626 「賛美の生け贄と祈り」
Mpzart:レクィエム ニ短調 K.626 「サンクトゥス」
Mpzart:レクィエム ニ短調 K.626 「祝せられたまえ」
Mpzart:レクィエム ニ短調 K.626 「神の小羊よ」
Mpzart:レクィエム ニ短調 K.626 「聖体拝領唱 」
モーツァルトの絶筆となった作品です
モーツァルト毒殺説を下敷きにしながら、芸術というものがもつ「酷薄さ」と、その「酷薄さ」を鮮やかに浮かび上がらせるかのようにモーツァルトの音楽の魅力を振りまいた映画が「アマデウス」でした。
そのラストのクライマックスのシーンで、魔笛とレクイエムの音楽がこの上もなく効果的に使われていました。
魔笛の輝くような明るい音楽と、陰鬱なレクイエムの音楽。光と陰が交錯する中から、モーツァルトの天才が浮かび上がってくる場面です。
それは、同時に天才モーツァルトと、凡人サリエリの違いを残酷なまでに明らかにする場面でした。
いや、凡人サリエリという言う方は正しくありません。真の凡人はモーツァルトの偉大さを全く知りません。
しかし、サリエリは悲しいまでにモーツァルトの天才を知っています。
死を目前にしたモーツァルトが口述するレクイエムのスコア、それを必死で理解しながらスコアに書き留めていくサリエリ。
それは、悲しいまでにこの二人の関係を象徴的に表した場面でした。
神の声が訪れるのはモーツァルトであって、決してサリエリではなく、彼にできるのは、モーツァルトを通して語られる神の声を、ただ必死で理解してそれをスコアに書き写すだけ。
おそらく、そのような存在として自分を認識することは、「芸術家」として最も辛く、苦痛に充ちたものであったはずです。
もっとも、そのような辛い認識に到達したのは、コンスタンツェが夫に内緒でサリエリのもとにスコアを持ち込んだときです。しかし、そのような残酷な認識をこれほども見事に映像として提示しているのはこのラストのシーン以外にはありません。
そして、そのような場面にふさわしい音楽もまた、この「レクイエム」以上のものはちょっと思い当たりません。
濃厚で熱気あふれた世界
これもまた「落ち穂拾い」です。データベースの方にはアップしてあったのですが、こちらに追加するのを忘れていたようです。(^^;
言うまでもないことですが、20世紀という時代における最良のモーツァルト指揮者がワルターでした。もちろん異論もあるかもしれませんが、私は堅くそう信じています。そして、その「信仰(?)}はピリオド楽器全盛の時代にあっても揺らぐことはありませんでした。
そんなワルターの手になる最良のレクイエムは戦前に録音された37年盤だろうと思います。しかし、惜しむらくは録音の悪さだけはどうしようもありません。
「もう少し録音さえよければ、あらゆるモツレクはこの演奏の前にひれ伏すべきだとユング君は確信します。」
こう書いたことは、今も訂正する必要は感じません。
しかし、ながら、録音のことを天秤にかければ、おそらくはこの56年盤をとるのが妥当でしょう。確かに、ベーム&ウィーンフィルによる71年盤も素晴らしい演奏ですが、このワルターによる56年盤も、それとはひと味違うものの、濃厚で熱気あふれた世界を描き出してくれています。
ああ、やはり私はどこまで行ってもピリオド楽器による演奏にはなじめない男のようです。
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