クラシック音楽へのおさそい~Blue Sky Label~

バルトーク:アレグロ・バルバロ Sz.49(Bartok:Allegro barbaro, Sz.49)

(P)ジェルジ・シャーンドル:1951年1951年9月12日録音(Gyorgy Sandor: Recorded on September 12, 1951)



Bartok:Allegro barbaro, Sz.49


破壊と創造のエネルギー源

バルトークの初期の代表作であると同時に、20世紀ピアノ音楽の歴史においても重要な転換点となった作品です。

この作品の最大の新しさは、ピアノをメロディを奏でる楽器としてだけでなく、「打楽器」として扱った事です。
当時主流だった印象派的な繊細な響きとは対照的な、荒々しく原始的な力強さが表現されています。

「バルバロ(barbaro)」はイタリア語で「野蛮な」「粗野な」を意味します。
この刺激的なタイトルは、当時の批評家たちがバルトークの作風を「野蛮だ」と揶揄したことに対する、彼なりの皮肉とユーモアを込めた挑戦状だったとも言われています。

バルトークは熱心な民俗音楽の研究者でした。
この曲には特定の民謡が引用されているわけではありませんが、ハンガリーやルーマニアの農民音楽から得たインスピレーションが骨格となっています。
この作品において民俗音楽は、単なる「飾り」ではなく、音楽を根底から作り替えるための破壊と創造のエネルギー源となっていたのです。

バルトークの精神的な継承者


シャーンドルはブダペストのリスト音楽院でバルトークにピアノを、ゾルターン・コダーイに作曲を学びました。考えてみれば、これは凄いことです。
さらに、バルトークから直接指導を受けた数少ない門下生の一人だと言うことで、彼ほどバルトークの演奏スタイルや音楽思想を身につけたものはいませんでした。

バルトークのピアノ音楽と言えば暴力的で打楽器的なものと誤解されがちです。
しかし、シャンドールはその様な当時の風潮に異を唱え、バルトークが重視していた「歌」と「柔軟性」を示してみせませした。

シャーンドルの演奏を聞いていて、まず感心させられるのは透明度の高い響きです。

彼は自身の演奏哲学を「On Piano Playing(ピアノ演奏の技術)」という著書にまとめるほど、科学的かつ合理的なアプローチを重視していました。
シャーンドルの演奏は、指の力だけで弾くのではなく、腕や肩の重さを効率よく鍵盤に伝えるスタイルでした。
非常に速いパッセージや激しい打楽器的フレーズでも、体全体がリラックスしており、無駄な動きがありませんでした。そのため、長時間の演奏でも音が濁る事はなく常にクリアな輪郭を保ちました。

その事が声部の完璧なバランスとして結実していて、バルトークの音楽の構造を明瞭に聞き取らせてくれます。

また、ハンガリー語を母国語としていたのですから、バルトークの音楽の根っこにあるハンガリー語特有のアクセントやリズムの把握の仕方も完璧だったようです。
バルトークならではの鋭いリズムの中にも、民謡のようなしなやかな旋律線を描き出す手腕はシャンドールならではのものでした。まさに、シャンドールこそがバルトークの「最も忠実な代弁者」だったのです。

そして、二人の親密な関係はバルトークがナチスの台頭を逃れてアメリカへ亡命した後も続きました。
バルトークの葬儀にはわずか10名ほどしか参列者がいなかったのですが、その10名の中にシャーンドルの姿もありました。彼は、師であるバルトークが最も苦しい時期に寄り添いました。
そして、バルトークの「精神的な継承者」として演奏活動を続け、ピアノ作品の全曲録音を二度にわたって行いました。

シャンドールを聞かずしてバルトークは語るなかれ・・・と言っても、言い過ぎではないかと思います。

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