グラナドス:スペイン舞曲集(第2集)
(P)アリシア・デ・ラローチャ:1964年初出
Granados:Doce danzas espanolas [No.4 in G major (Villanesca)]
Granados:Doce danzas espanolas [No.5 in E minor (Andaluza)]
Granados:Doce danzas espanolas [No.6 in D major(Aragonesa)]
初めて生み出されたスペインの民族音楽に基盤を持った音楽

この時代のヨーロッパでは、とりわけパリでは「スペイン風」が流行していたようです。すでに紹介しているモシュコフスキのスペイン舞曲やシャブリエの狂詩曲「スペイン」、リムスキー=コルサコフの「スペイン奇想曲」など、スペイン人ではない作曲家によってスペイン情緒を想起させる作品が多く書かれました。極めつけは、ラロのスペイン交響曲で、よく間違われるのですがラロはスペイン人ではなくてフランス人であり、さらには旅行でさえもスペインを訪れたことがなかったのです。
そんな風潮の中で、「スペイン風」ではなくて、スペイン人による本当の「スペインの音楽」を書こうという気運が盛り上がってきます。そう言う動きの旗手となったのがファリャやグラナドスでした。
このグラナドスの「スペイン舞曲集」も、ファリャの「スペインの庭の夜」と同じように民族音楽への傾斜が影響しています。全体は12曲からなっているのですが、各々3曲から成る4つの曲集により構成されています。
そして、グラナドスはこの作品集の第1集(第1番~第3番) をバルセロナにて行った自身初の公開演奏会で披露することで、有名ピアニストとしの第一歩としてだけでなく、作曲家としての評価も受けることになります。
そう言えば、同時代のフランスの作曲家ジュール・マスネがこの作品の楽譜を見てグラナドスを「スペインのグリーグ」と賞賛したそうなのですが、フランスにおいても「スペイン風」ではなくて、スペインの民族音楽に基盤を持った「スペイン音楽」が待たれていたのでしょう。
なお、この全12曲には1曲ずつにタイトルが付けられていますが、グラナドス自身が付けたものは4 曲目の「ビリャネスカ」と7曲目の「バレンシアーナまたはカレセーラ」のみだそうです。
他の曲のタイトルは全て出版社が勝手に付けたものだそうです。
ちなみに、そのタイトルは日本語で紹介しておいた方が親切でしょう。
第1集
- 第1番 ガランテ または メヌエット
- 第2番 オリエンタル
- 第3番 ファンダンゴ または ガリシア舞曲
第2集
- 第4番 ビリャネスカ
- 第5番 アンダルーサ または 祈り
- 第6番 ロンダーリャ・アラゴネーサ
第3集
- 第7番 ヴァレンシアーナ または カレセーラ
- 第8番 サルダーナ
- 第9番 マズルカ または ロマンティカ
第4集
- 第10番 悲しき舞曲 または メランコリカ
- 第11番 ザンブラ
- 第12番 アラベスカ
なお、この中で飛び抜けて有名なのが第5曲の「アンダルーサ(祈り)」です。この作品は管弦楽編曲もされていて、オーケストラのアンコールピースとしてはピッタリの音楽に仕上がっています。
また、作品全体がギターにも合うので、ピアノではなくてギターで演奏されることも多いようです。
驚くべき生命力の発露
アリシア・デ・ラローチャといえば、まさにスペインを代表するピアニストなのですが、私の中ではモーツァルトを演奏する人という印象が何故か強く刻み込まれていました。
当然の事ながら、彼女の事はスペインのピアノ曲の専門家として評価するのがもっとも正当なラインであり、要は、私がスペインの音楽を聞く機会がほとんどなく、結果としてモーツァルトでのみ彼女と出会ったと言うだけの話だったのでした。
そして、この年になって初めて彼女の演奏するスペインのピアノ曲とファースト・コンタクトしたのです。お恥ずかしい。
そう思えば、この音源はなんと長い間部屋の片隅で埃をかぶっていたことでしょう。
しかし、このスペイン舞曲集を聞いたときに、その驚くべき生命力の発露のようなものには圧倒されました。
そして、そのピアノの響きにはとんでもない透明感があって、音楽的に曖昧な部分などは全くありません。
とは言え、一番の魅力は何といってもその弾むようなリズム感でしょう。
あまり民族性等という安易な言葉で片付けたくはないのですが、このリズム感だけはラローチャのようなスペインのピアニストでないと実現は難しいのではないでしょうか。
ここまで書けば褒め殺しになるのかもしれませんが、このようなラローチャの生命力あふれるピアノ演奏があってこそグラナドスの魅力がひときわ光り輝いたとも言えそうです。
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