バッハ:無伴奏チェロ組曲 第5番
Vc. パブロ・カザルス 1939年録音
Bach:無伴奏チェロ組曲5番「プレリュード」
Bach:無伴奏チェロ組曲5番「アルマンド」
Bach:無伴奏チェロ組曲5番「クーラント」
Bach:無伴奏チェロ組曲5番「サラバンド」
Bach:無伴奏チェロ組曲5番「ガボット」
Bach:無伴奏チェロ組曲5番「ジーグ」
組曲について
「組曲」とは一般的に何種類かの舞曲を並べたもののことで、16世紀から18世紀頃の間に流行した音楽形式です。この形式はバロック時代の終焉とともにすたれていき、わずかにメヌエット楽章などにその痕跡を残すことになります。
その後の時代にも組曲という名の作品はありますが、それはこの意味での形式ではなく、言ってみれば交響曲ほどの厳密な形式を持つことのない自由な形式の作品というものになっています。
この二通りの使用法を明確に区別するために、バッハ時代の組曲は「古典組曲」、それ以後の自由な形式を「近代組曲」とよぶそうです。まあ、このような知識は受験の役に立っても(たたないか・・)、音楽を聞く上では何の役にも立たないことではありますが。(^^;
バッハは、ケーテンの宮廷楽長をつとめていた時代にこの組曲形式の作品を多数残しています。
この無伴奏のチェロ組曲以外にも、無伴奏ヴァイオリンのためのパルティータ、無伴奏フルートのためのパルティータ、そして管弦楽組曲等です。
それにしても疑問に思うのは、この難曲である無伴奏のチェロ組曲を誰が演奏したのかということです。
ヴァイオリンの方はおそらくバッハ自身が演奏したのだろうと言われていますが、チェロに関してはそれほどの腕前は持っていなかったことは確かなようです。
だとすると、ケーテンの宮廷楽団のチェロ奏者がこの曲を演奏したと言うことなのでしょうか。現代においてもかなりの難曲であるこの作品を一体彼はどのような思いで取り組んだのでしょうか。
もっとも、演奏に関わる問題は作品にも幾ばくかの影響は与えているように思います。
なぜなら、ヴァイオリンの無伴奏組曲と比べると6曲全てが定型的なスタイルを守っています。
また、ヴァイオリンの組曲はシャコンヌに代表されるように限界を超えるほどのポリフォニックな表現を追求していますが、チェロ組曲では重音や対位法的な表現は必要最小限に限定されています。
もちろん、チェロとヴァイオリンでは演奏に関する融通性が違いますから単純な比較はできませんが、演奏者に関わる問題も無視できなかったのではないかと思います。
それにしても、よく知られた話ですが、この素晴らしい作品がカザルスが古道具屋で偶然に楽譜を発見するまで埋もれていたという事実は本当に信じがたい話です。
それとも、真に優れたものは、どれほど不当な扱いを受けていても、いつかは広く世に認められると言うことの例証なのでしょうか。
やはり一度はカザルスの演奏でじっくりと聞いてみたい作品です。
像のダンス?
今風のハイテクチェリストたちの演奏を聞き慣れた耳には、まるで象のダンスを見るようなたどたどしさを感じるかもしれませんが、じっくりと耳を傾けてもらえば、いまもってこれを上回る録音はないことに気づかされます。・・・、なんて書けば「いつまでそんなことを言ってるんだ。時代は変わったよ」とお叱りもうけそうですし、そういう主張の正当性も決して無視できないことも承知しています。
それでも、何故か最後はこの録音に帰ってくる自分がいます。そして、「バッハはやはりこうでなくっちゃ!」と納得してしまいます。私の中ではいつまでもバッハはカザルスを模倣し続けるようです。
よせられたコメント
2010-09-11:千暖寺 魅音
- この曲は、私にとってレクイエムのような存在です。
この曲を聴けば、どんなにつらいことがあっても、忘れることができるし、眠れないときはこの曲を聴くことで、寝ることができます。
皆さんに、もっとこの曲の良さを知ってもらいたいです。
2013-01-27:Hide
- 像のダンスと呼ぶのは止めて欲しい。カザルスが真剣に取り組んだバッハである。たどたどしいのではなく、重音をグシャと弾く、テンポルバートが強い、これがカザルス流と思う。多分、そう言う事をしなければ流暢な演奏が出来る技術はあるのではないか。とにかく聞いていて変化に富んでいるので飽きない良い意味で面白い演奏である。しかし、今はヨーヨーマが最も好きになったが...
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