モーツァルト:クラリネット五重奏曲
Cl.レジナルド・ケル The Fine Arts Quartet:1951年4月28〜29日録音
Mozart:クラリネット五重奏曲 「第1楽章」
Mozart:クラリネット五重奏曲 「第2楽章」
Mozart:クラリネット五重奏曲 「第3楽章」
Mozart:クラリネット五重奏曲 「第4楽章」
クラリネット 〜 モーツァルトが愛した楽器
クラリネットという楽器の魅力を発見し、その魅力を最大限に引き出したのがモーツァルトでした。コンチェルトや交響曲の中でクラリネットを活躍させたのはモーツァルトが最初ではなかったでしょうか。
そして晩年の貧窮の中で彼はクラリネットのふくよかでありながら哀愁の入り交じったクラリネットの響きにますます魅せられていったようで、素晴らしい二つの作品を残してくれました。
それがここで紹介するクラリネット五重奏曲であり、もう一つはそれと兄弟関係とも言うべきクラリネット協奏曲です。
しかし、最晩年に作曲されたコンチェルトには救いがたいほどのモーツァルトの疲れが刻印されています。美しくはあっても、そのあまりに深い疲れが聞き手の側にのしかかってきます。それに対してこのクインテットの方はモーツァルト特有の透明感を保持しています。ある人はこの作品に、澄み切った秋の夕暮れを感じると書いています。
とりわけ第2楽章の素晴らしさ!!
これほどまでに深い感情をたたえた音楽は、モーツァルトといえども他には数えるほどしかありません。音楽の前に言葉は沈黙する、と言う陳腐な言い回しがここでは実感として感じ取ることができます。
イギリスを代表するクラリネット奏者
Reginald Kell(レジナルド ケル)はイギリスのヨークに生まれ、当初はヴァイオリンを学ぶものの、15歳の時にクラリネットに転向し、その後イギリスを代表する多くのオケで首席奏者をつとめたというのが経歴です。その後、1939年にトスカニーニにその才能を認められてルツェルンの音楽祭に招かれます。戦後は活動の本拠をアメリカに移し、ソリストとして活躍しながらも室内楽団対も主催するという売れっ子となります。また、教育者としても大変に有能な人だったようで、当時すでに名声を獲得していたベニー・グッドマンがレッスンを受けに来たというのは有名な話です。また、いくつかの教則本も残していて、クラリネットをやっている人にきくとそれは「拷問」に近い代物だそうです。
さて、演奏の方ですが、残念ながら同時代に活躍したウラッハと比べると少しガッカリするかもしれません。しかし、それはあまりにもウラッハが偉大にすぎるからであって、聞いていると心がふんわりと癒されて仕事に行くのがいやになるような素敵な音色は、それはそれとして魅力があります。
特に印象的なのは、アレグロのようなテンポの速い楽章では割合にすっきりと音楽を仕上げるのに対して、アダージョになるとテンポを落として実に丹念に歌い上げるのが心に残ります。また、その歌い方たるや、テンポ・音色・音量ともてる要素をフルに動員して実にねっちりと表情をつけていきます。特に、一つの楽章の中でアレグロとアダージョが頻繁に交代するモーツァルトのクインテットの第4楽章などはなかなかの聞きものです。
よせられたコメント
【最近の更新(10件)】
[2025-06-04]

エルガー:交響曲第2番変ホ長調Op.63(Elgar:Symphony No.2 in E-flat major, Op.63)
サー・ジョン・バルビローリ指揮 ハレ管弦楽団 1954年6月日~9日録音(Sir John Barbirolli:Philharmonic Hall Recorded on June 8-9, 1954)
[2025-06-01]

ベートーベン:交響曲第2番 ニ長調 作品36(Beethoven:Symphony No.2 in D major)
ヨーゼフ・カイルベルト指揮 バンベルク交響楽団 1959年録音(Joseph Keilberth:Bamberg Symphony Recorded on 1959)
[2025-05-29]

ラヴェル:組曲「クープランの墓(管弦楽版)」(Ravel:Le Tombeau de Couperin)
ユージン・オーマンディ指揮 フィラデルフィア管弦楽団 1958年11月16日録音(Eugene Ormandy:Philadelphis Orchestra Recorded on November 16, 1958)
[2025-05-26]

チャイコフスキー:ヴァイオリン協奏曲 ニ長調, Op.35(Tchaikovsky:Violin Concerto in D major Op.35)
(Vn)アルフレード・カンポーリ:アタウルフォ・アルヘンタ指揮 ロンドン交響楽団 1956年12月27日~28日録音(Alfredo Campoli:(Cin)Ataulfo Argenta London Symphony Orchestra Recorded on December 27-28, 1955)
[2025-05-22]

ベートーベン:交響曲第1番 ハ長調 作品21(Beethoven:Symphony No.1 in C major , Op.21)
ヨーゼフ・カイルベルト指揮 バンベルク交響楽団 1959年録音(Joseph Keilberth:Bamberg Symphony Recorded on 1959)
[2025-05-18]

ラヴェル:スペイン狂詩曲(Ravel:Rhapsodie espagnole)
ユージン・オーマンディ指揮 フィラデルフィア管弦楽団 1963年2月24日録音(Eugene Ormandy:Philadelphis Orchestra Recorded on February 24, 1963)
[2025-05-15]

エルガー:ヴァイオリン協奏曲 ロ短調, Op.61(Elgar:Violin Concerto in B minor, Op.61)
(Vn)アルフレード・カンポーリ:サー・エードリアン・ボールト指揮 ロンドン・フィルハーモニー管弦楽団 1954年10月28日~29日録音(Alfredo Campoli:(Con)Sir Adrian Boult The London Philharmonic Orchestra Recorded on October 28-29, 1954)
[2025-05-12]

ラヴェル:舞踏詩「ラ・ヴァルス」(Ravel:La valse)
ユージン・オーマンディ指揮 フィラデルフィア管弦楽団 1963年1月30日録音(Eugene Ormandy:Philadelphis Orchestra Recorded on January 30, 1963)
[2025-05-09]

ブラームス:交響曲第4番 ホ短調, Op.98(Brahms:Symphony No.4 in E minor, Op.98)
ヨーゼフ・カイルベルト指揮 ハンブルク・フィルハーモニー管弦楽楽団 1960年録音(Joseph Keilberth:Hamburg Philharmonic Orchestra Recorded on 1960)
[2025-05-06]

ショパン:ノクターン Op.55&Op.62&Op.72&Op-posth(Chopin:Nocturnes for piano, Op.55&Op.62&Op.72)
(P)ギオマール・ノヴァエス:1956年発行(Guiomar Novaes:Published in 1956)