タルティーニ:ヴァイオリンソナタ ト短調 「悪魔のトリル」
(Vn)イダ・ヘンデル:(P)アルフレード・ホレチェク 1962年録音
Tartini:Violin Sonata in G minor, GT 2.g05 [1.Larghetto affettuoso]
Tartini:Violin Sonata in G minor, GT 2.g05 [2.Allegro (Tempo giusto)]
Tartini:Violin Sonata in G minor, GT 2.g05 [3.Andante]
Tartini:Violin Sonata in G minor, GT 2.g05 [4.Allegro]
夢の中で悪魔が演奏していた・・・・とか

その夜、タルティーニは夢の中で悪魔がヴァイオリンを弾く夢を見ました。
ところが、その音楽のあまりの美しさに驚いて彼は飛び起きます。そして、夢の中で聞いた音楽を必死で書きとめてできあがったのがこの悪魔のトリルだと言われています。(正式には「ヴァイオリン・ソナタ ト短調」です。)
夢の中で悪魔が弾いていたのは曲の最後の方に出てくる超難度の連続したトリル(楽譜を見ると真っ黒!!)だと言われていますが、真偽のほどはクエスチョンです。
美しく、そして気高く咲き誇る花
彼女がアンチェル&チェコ・フィルと共演して録音した「スペイン交響曲」やラヴェルの「ツィガーヌ」を「純度の高い美しい響きの中でヘンデルという美しい花がその存在を誇示している水中花」と評したことがあります。
ヴァイオリンは何といっても美音が魅力です。そして、様々なヴァイオリニストはその人らしい美音を求め続けるのでしょうが、ヘンデルはまさに「蠱惑的」と言っていい類い希なる美音の持ち主です。
ですから、ヴァイオリン一挺で演奏されるバッハのシャコンヌや、ピアノが伴奏に徹するタルティーニの「悪魔のトリル」やコレッリの「ラ・フォリア」のような作品になると、ガラスの中ではなくて、まさに眼前に美しく咲き誇る花を見るがごときです。
それにして、このような響きを彼女はどの様にして身につけたのでしょう。
ヘンデルの系譜を辿ってみれば、その背景にはユダヤ系のポーランド人であり、カール・フレッシュ門下だと言うことがあげられます。さらに言えば、姉弟子であるジネット・ヌヴーからの影響も無視できないでしょう。
しかし、数多くの有名なヴァイオリニストを輩出したカール・フレッシュ門下の中でも、彼女の響きは唯一無二の魅力を備えています。また、その奔放にして主情的な楽曲解釈は誰にも真似が出来ません。
そう言えば、彼女は常に「芸術とはテクニックではなくそのテクニック使ってする『何か』なのだ」と言っていました。
それは言葉をかえて小林秀雄風に言えば「テクニックを駆使して花の美しさを説明するのではなくて、そのテクニックを使って己自身が美しい花になる」と言うことなのでしょう。
そして、その美しい花は完璧な技術によって咲き誇るハイフェッツとは全く異なる花であることは言うまでもありません。
それはもしかしたら、その妖しいまでの美しさによって人を惑わす花だったのかもしれません。
それ故に、ここで紹介している「シャコンヌ」や「悪魔のトリル」、「ラ・フォリア」を聞かされると、「これしかないのだ!」といってしまいそうな自分を制御するのが難しいのです。
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