モーツァルト:ピアノ四重奏曲 第1番
P:ジョージ・セル Vn:ジョゼフ・ロイスマン Va:ボリス・クロイト Vc:ミッシャ・シュナイダー 1946年8月19日&20日録音
Mozart:ピアノ四重奏曲第1番「第1楽章」
Mozart:ピアノ四重奏曲第1番「第2楽章」
Mozart:ピアノ四重奏曲第1番「第3楽章」
モーツァルトの時代にはめずらしい組み合わせ
ピアノにヴァイオリン、ヴィオラ、チェロという組み合わせはロマン派の時代にはたくさん作曲されるのですが、モーツァルトの時代には珍しい組み合わせだったようです。モーツァルト自身もこの1番以外に変ホ長調の第2番を残しているだけです。
当時はあまり評判にもならなかったようですが、後年のロマン派の時代になるとこのト短調という「宿命の調性」ゆえにか、一番の方はそれなりの有名曲になっていきます。
モーツァルトとト短調というとそれこそ紙数がいくらあっても足りないほどに書き尽くされてきましたが、この作品もまた劇的な悲劇生が色濃く漂っています。冒頭のユニゾンを聴くだけで、そこには疑いもなくト短調のモーツァルトの世界が広がっています。
そして第2楽章ではロマン派好みの優美な音楽が奏でられて、最後のロンド楽章でははつらつとした音楽の流れの中にモーツァルトならではの深くはあってもかわいた悲しみがあふれてきます。
セルは指揮同様に、ピアニストとしても決して情緒に流れるような演奏はしていません。特にリズムは冴えており、彼がオケに常に求めていたことを自らの演奏でも実践しています。また、彼はオケのメンバーにお互いに音を聞き合うことの重要性を何度も何度も強調していましたが、ここでも実にお互いの音をよく聞きあって実に素晴らしいバランスでモーツァルトの音楽を構築しています。
そう、まさに情緒に流れるのではなく、「構築」という言葉がピッタリ来るような堂々としたモーツァルトです。
やはりセルという人は、指揮棒を振っても、ピアノを演奏しても常にセルであったと言うことでしょうか。
その一貫性には驚かされます。
ピアニストとしてのセル
セルはピアニストとしても非凡な才能を持っていました。幼い頃からピアノの才能を開花させたセルは8歳で公開の演奏会を行い「モーツァルトの再来」とまで評価されたことがあります。
もっとも、いかにセルを贔屓するユング君といえども、いくら何でもそれは誉めすぎだと思いますが(^^;、そういう言葉が思わず出てしまうほどに早熟の天才だったことは事実のようです。その後、指揮や作曲を学ぶようになると、ピアノという楽器では自分の要求を満たしてくれない事を悟ったセルは指揮活動へと方向転換していくわけですが、時折ピアニストとしての腕前を披露してくれたりもしました。
しかし、基本が完全主義者のセルですから、芸能人がよくやる新春隠し芸大会のレベルで録音をリリースするわけがありません。手すさびの余技としてではなく、一人のピアニストとして評価されたとしても、十分に耐えられるほどの演奏を残してくれました。
ここではモーツァルトのピアノ四重奏曲の第1番を紹介していますが、同じブダペスト弦楽四重奏団との組合わせで第2番も残してくれています。それ以外にはシューベルのピアノ五重奏曲「鱒」、ベートーベンの「カカドゥ変奏曲」などの録音がユング君の手元にあります。
また、晩年はクリーブランド管弦楽団のコンサートマスターだったラファエル・ドルイアンとのコンビでとても立派なモーツァルトのヴァイオリンソナタを残してくれました。(SONY CLASSICALからは24・25・28・32番がリリースされています。他にもあるのかもしれませんがユング君は不聞です。)
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