クラシック音楽へのおさそい~Blue Sky Label~

ベートーベン:ピアノ協奏曲第2番

シュナーベル サージェント指揮 ロンドン交響楽団 1936年録音





Beethoven:ピアノ協奏曲第2番「第1楽章」

Beethoven:ピアノ協奏曲第2番「第2楽章」

Beethoven:ピアノ協奏曲第2番「第3楽章」


一番最初に完成したピアノ協奏曲

この作品は現在は第1番とされているハ長調のピアノ協奏曲よりも早く作曲されていて、完成も1795年頃だろうと推測されています。これがいわゆる第1稿と言われるものですが、その後ハ長調のピアノ協奏曲を作曲する過程で不満を感じるようになったようで1798年に大幅な改訂作業を行いプラハにおいて初演が行われました。
その後、1801年にピアノのパート譜をきちんとした楽譜の形に書き込んで作品19として出版されたわけです。ただし、第1番の協奏曲には自信をこめて「大協奏曲」と題して出版したのに対して、こちらの方は控えめに「協奏曲」として出版されました。ベートーベン自身も「この曲は自分の作品にとって最良のものではない」と記しています。

オーケストラの編成は第1番と比べるとかなり小さくて、ティンパニもクラリネットも省かれています。聞いてみれば分かるように、この作品は明らかにモーツァルトのピアノコンチェルトを想起させます。金管楽器としてはホルンしか使われていないこともあって、全体的にはとても優雅な雰囲気が前面にでていて、ベートーベンらしいアクティブな面は第1楽章の冒頭などに少し感じ取れるぐらいです。
ベートーベンのピアノ協奏曲の中では一番影の薄い作品と言わざるを得ません。

味で聞かせるピアニスト?


ナチスの台頭でアメリカに亡命してからのシュナーベルはあまり恵まれなかったようで、彼自身も、ホロヴィッツ全盛のアメリカの音楽状況を受け入れることもできなかったようです。
「海の上のピアニスト」という映画がありましたが、その中で「ピアノ競争」なるものが繰り広げられる場面があります。それを見て、「なるほどこれが当時のアメリカにおける音楽状況だったのか!」と呆れ返りました。もちろん映画なので誇張はあるのでしょうが、軽業師のような超絶的な技巧だけがもてはやされた当時のアメリカの状況をよく表したシーンだと思いました。ご存じでない方は一度はご覧あれ、結構面白い映画です。

そして、なるほどこれではシュナーベルのようなタイプのピアニスが腐ってしまうのは仕方がないだろうなと変なところで納得させられました。
誤解を恐れずに言えば、シュナーベルというのは味で聞かせるピアニストだったようです。
戦前にシュナーベルはマルコム・サージェントとのコンビでベートーベンのピアノ協奏曲を全曲録音しています。今お聞きいただいているのはその中の一枚なのですが、ホロヴィッツのコンサートでアンコールに「カルメン変奏曲を!」と絶叫するアメリカの聴衆がこのような演奏を喜こばなかったことだけは確かです。
戦争が終わると、やがてアメリカを去ってスイスでひっそりと亡くなったのも宜なるかなです。

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