ベートーベン:ピアノ、ヴァイオリン、チェロと管弦楽のための協奏曲 ハ長調, Op.56(Beethoven:Triple Concerto in C major, Op.56)
Ferenc Fricsay:(P)Geza Anda (Vn)Wolfgang Schneiderhan (Cell)Pierre Fournier Berlin Radio Symphony Orchestra Recorded on May-June, 1960
Beethoven:Triple Concerto in C major, Op.56 [1.Allegro]
Beethoven:Triple Concerto in C major, Op.56 [2.Largo]
Beethoven:Triple Concerto in C major, Op.56 [3.Rondo alla Polacca]
野心的なチャレンジ作品・・・?(^^;

この作品がどういう経緯で作曲されるようになったのかは、残された資料からは判然としないようです。基本的な考え方としては、本来ならば一つの楽器で受け持つことが可能な独奏部分を三つの楽器で分担することで、より多彩で豊かな表現を求めたものだと思われます。
19世紀初頭という時代を考えれば、その発想は極めて斬新でユニークなものだったと思うのですが、残念ながら結果としてはそれほどうまくいかなかったというのが現実だったようです。
もっとも、一部にはそう言う好意的な見方ではなくて、極めて下世話な推測も囁かれます。
それは、ピアノパートをパトロンであったルドルフ大公が演奏し(実際、ピアノパートは演奏の難度は低いわりには華やかで目立つように書かれている)、それをチェロとヴァイオリンの二人の名手で引き立てて「よいしょ」しようとしたのではないか・・・?という下世話な話です。
実際、ベートーベンの弟子であったシンドラー(彼の残した言葉は「運命はこのように戸を叩くのだ」のように眉唾物が多いのですが)も、「ピアノはルドルフ大公のために書かれ、ヴァイオリンははカール・アウグスト・ザイドラー、チェロはアントン・クラフトを想定して書かれた」と記しています。
しかしながら、残された資料をひっくり返してみても、そう言う経緯を確定するだけのものがでてこないのです。
ということで、取りあえずは芸術家としてのベートーベンに敬意を表して、斬新な発想で新しい表現にチャレンジをしたものの、さすがのベートーベンを持ってしても残念な面が残ってしまった野心的なチャレンジ作品と言うことにしておきましょう・・・か(^^;。
フリッチャイの協奏曲伴奏
フリッチャイといえば白血病によって死線をさまよい、そのことが彼の音楽に大きな影響を与えたとよく言われます。
確かに彼自身もその経験について次のように語っていました。
何がよくて何が悪いか、なぜ自分は音楽家 になったか、他の人間を指揮するという課題は何を伴っているかということについて考える時間があったのである。 結局私は、これまでよりもいや増して真剣に、いっそうの責任感をもって自分の職業と使命とを把握しなければなら ないということを悟った。
一般的によく言われるのは、それまでの即物的な精緻さに重点を置いた音楽から、より主情的でスケールの大きな音楽に変わったということです。
確かに、そういう指摘は誤りではないと思うのですが、じっくりと彼の録音を聞き続けいると、ことはそれほど単純ではないということに気づかされます。それは、彼が白血病から一時的に寛解して音楽活動を再開した60年以降の音楽を聴いてみると、それらは確かにフリッチャイという指揮者の主情性がためらわずに吐露されていることは間違いはないのですが、それでも決してそれまでの精緻な音楽づくりは放棄していないということです。
当時は即物主義が全盛の時代でしたから、若手の指揮者だった時代は売れる、売れないという問題からは避けて通れなかったでしょう。しかし、一度生き死にの問題に直面してみればそんなことはどうでもよくなったのでしょう。
であったとしても、それでも彼の音楽は恣意的なデフォルメは決して良しとせず、音楽が持っている構造のようなものを精緻に描き出すことは彼の本質でもあったはずです。
ただし、白血病によって死線をさまよった経験は彼をそう言う世俗的な事柄から自由にしたことは間違いありません。
その意味では、彼の協奏曲の伴奏は興味を惹かれます。
特に面白いと思うのは、60年以降に録音されたブラームスのダブルコンチェルト、ベートーベンのトリプルコンチェルトなどです。
ベートーベンのトリプルコンチェルトといえば、真っ先にカラヤンがリヒテル、オイストラフ、ロストロポーヴィッチと録音した一枚を思い出します。あのレコードのジャケットにはその4人が和やかにそろって写っているのですが、あれはよく「奇跡の一枚」と呼ばれています。そう呼ばれるほどに録音の時は4人の関係は険悪だったことは有名な話です。
協奏曲なんてのはソリストが一人でも指揮者にとっては厄介ななのに、それが二人も三人もいれば指揮者の苦労は並大抵ではありません。
ところが、白血病からの一時的な寛解で体調が回復した後に、フリッチャイはこの厄介な二つの協奏曲を録音しているのです。それ以外にも、バルトークの協奏曲も全3曲を録音しています。
このバルトークの時に組んだ相手がゲザ・アンダなのですが、彼とはブラームスの第2番の協奏曲も録音しています。これもまた、指揮者にとっては骨の折れる仕事です。
ちなみに、ベートーベンのトリプルではヴォルフガング・シュナイダーハンとピエール・フルニエ、ブラームスのダブルではフルニエの代わりにヤーノシュ・シュタルケルを起用しています。
おそらく、気の合う相手とじっくりディスカッションをして、お互いがともに納得のいくような音楽づくりをしたのでしょう。
それらの一連の協奏曲ではソリストの持ち味が十全に引き出され、オケもまた音楽の重要な一部としてその存在を示しています。
ついでに、白血病前の録音としてはアニー・フィッシャーとのベートーベンの3番があります。これなどは、完璧主義者のフィッシャーに対してよく献身していると思われる演奏です。
協奏曲の伴奏といえば基本的にはわき役なのですが、こうしてあれこれ聞いてみると、そこにはフリッチャイという指揮者の一つの素顔が刻み込まれtりうように思えてきます。
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