バルトーク:管弦楽のための協奏曲 Sz.116
カラヤン指揮 フィルハーモニア管弦楽団 1953年7月録音
Bartok:管弦楽のための協奏曲「Introduzione(序章)」
Bartok:管弦楽のための協奏曲「Giuoco delle coppie(対の遊び)」
Bartok:管弦楽のための協奏曲「Elegia(悲歌)」
Bartok:管弦楽のための協奏曲「Intermezzo interrotto(中断された間奏曲)」
Bartok:管弦楽のための協奏曲「Finale(終曲)」
ハンガリーの大平原に沈む真っ赤な夕陽
この管弦楽のための協奏曲の第3曲「エレジー」を聞くと、ハンガリーの大平原に沈む真っ赤な夕陽を思い出すと言ったのは誰だったでしょうか?それも、涙でにじんだ真っ赤な夕陽だと書いていたような気がします。
上手いことを言うものです。音楽を言葉で語るというのは難しいものですが、このように、あまりにも上手く言い当てた言葉と出会うとうれしくなってしまいます。そして、この第4曲「中断された間奏曲」もラプソディックな雰囲気を漂わせながらも、同時に何とも言えない苦い遊びとなっています。ユング君はこの音楽にも同じような光景が目に浮かびます。
バルトークが亡命したアメリカはシェーンベルグに代表されるような無調の音楽がもてはやされているときで、民族主義的な彼の音楽は時代遅れの音楽と思われていました。そのため、彼が手にした仕事は生きていくのも精一杯というもので、ヨーロッパ時代の彼の名声を知るものには信じがたいほどの冷遇で、その生活は貧窮を極めました。
そんなバルトークに援助の手をさしのべたのがボストン交響楽団の指揮者だったクーセヴィツキーでした。もちろんお金を援助するのでは、バルトークがそれを拒絶するのは明らかでしたから、作品を依頼するという形で援助の手をさしのべました。
そのおかげで、私たちは20世紀を代表するこの傑作「管弦楽のための協奏曲」を手にすることができました。(クーセヴィツキーに感謝!!)
一般的にアメリカに亡命してから作曲されたバルトークの作品は、ヨーロッパ時代のものと比べればはっきりと一線を画しています。その変化を専門家の中には「後退」ととらえる人もいて、ヨーロッパ時代の作品を持ってバルトークの頂点と主張します。確かにその気持ちは分からないではありませんが、ユング君は分かりやすくて、人の心の琴線にまっすぐ触れてくるようなアメリカ時代の作品が大好きです。
また、その様な変化はアメリカへの亡命で一層はっきりしたものとなってはいますが、亡命直前に書かれた「弦楽四重奏曲第6番」や「弦楽のためのディヴェルティメント」なども、それ以前の作品と比べればある種の分かりやすさを感じます。そして、聞こうとする意志と耳さえあれば、ロマン的な心情さえも十分に聞き取ることもできます。
亡命が一つのきっかけとなったことは確かでしょうが、その様な作品の変化は突然に訪れたものではなく、彼の作品の今までの延長線上にあるような気がするのですが、いかがなものでしょうか。
後期ロマン派のような・・・
53年の録音ですから、作曲されてから10年ほどしか経過していません。その意味ではまさにバリバリの現代の音楽だったのですが、聞こえてくる音楽は後期ロマン派のような重厚で濃厚な雰囲気があふれています。
最近の指揮者ならもっと精緻に演奏することを選ぶでしょうから、全体としてはもっと研ぎ澄まされたシャープな雰囲気になるのが普通です。そうなると、個々のプレーヤーは全体を構成するパーツとして組み込まれるので、「管弦楽のための協奏曲」と題されながらも、いわゆる協奏曲的雰囲気は後退しているのが一般的です。
例えば、ショルティとシカゴ響との演奏などを聴いてみれば分かるのですが、そこでは協奏曲としての丁々発止のやりとりではなく、精緻にくみ上げられた管弦楽曲として全体が構成されています。
しかし、この若きカラヤンの演奏を聴いてみると、締めるところは締めているようですが、それでも基本的には個々のプレーヤーの自主性にまかせている部分が大きいように聞こえます。ですから、今の耳から聞けば随分と大雑把な感じのするオケコンになっています。しかし、「そうだバルトークはこの作品を協奏曲と名付けたんだ!!」と言うことに気づかされる演奏でもあります。
それにしても、人の心の琴線に触れるような素敵なフレーズを見つけると、それを実に艶やかに歌い上げる手際は本当に見事なものです。マーラーやR.シュトラウスなどを聞き慣れた耳なら、何の抵抗もなく耳に入ってくる演奏だと言えます。
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