クラシック音楽へのおさそい~Blue Sky Label~

バックス:交響詩「ファンドの園」(Bax:The Garden of Fand)

サー・ジョン・バルビローリ指揮 ハレ管弦楽団 1956年6月20日録音(Sir John Barbirolli:Halle Orchestra Recorded on June 20, 1956)



Bax:The Garden of Fand


私の最後のアイルランド音楽

アーノルド・バックスは、ケルト文化とアイルランド神話に深く影響を受けたイギリスの作曲家です。
1883年、ロンドン郊外の裕福な家庭に生まれ、経済的な支援があったために流行に左右されず自由に作曲活動に専念できました。王立音楽アカデミーで学びましたが、後に中退しています。
アカデミー在学中に、アイルランドの詩人W・B・イェイツの作品に感銘を受け、ケルト文化に傾倒します。1902年にアイルランド西部を訪れて以降、音楽と文学の両面でケルト文化から大きな影響を受けました。

アイルランドの風景や神話、詩から着想を得た、神秘的で幻想的な作風が特徴です。
また、緻密で重厚なオーケストレーションは、オーケストラの奏者からも高く評価されていました。
第二次世界大戦後、バックスのロマンティックな作風は流行から外れ、彼の作品は一時期忘れられていました。しかし、近年になって再評価が進み、主要な管弦楽作品の録音も増えています。

交響詩「ファンドの園(The Garden of Fand)」は、アイルランド神話に登場する海の王の娘ファンドに霊感を受けて作曲された作品です。
ただし、アイルランド神話の海の王の娘ファンドに霊感を得ているものの、特定の神話の出来事を描いているわけではないとの事です。

三部形式で、開始部の音楽が最後に再び現れ、中間部にはファンドの愛の歌が配置されています。
開始部では煌めく主題と海のうねりを描いた主題が対比され、中間部ではフルートとコールアングレによるファンドの歌が聴かれます。
バックスは愛人ハリエット・コーエンに宛てた手紙で、「私の最後のアイルランド音楽」であると述べています。

イギリスの指揮者の面白さ


生粋のイギリス人指揮者というのは、なんだかイギリスの作曲家の作品を演奏し録音する事が一つの義務になっているように見えてしまいます。
なかにはビーチャムとディーリアスとか、ボールトとヴォーン・ウィリアムズのように、分かちがたく結びついているような組み合わせもあります。
そして、イタリア系のイギリス人であったバルビローリにもそのことが言いえて、実に幅広くイギリスの作曲の作品を録音しています。とりわけエルガーの作品には強い愛着があったようで、同じ作品を何度も繰り返して録音をしています。

考えてみれば、イギリスは長く音楽の消費国でした。おそらく17世紀のパーセル以降、世界的に知られるような作曲家は長くあられませんでした。その空白は20世紀近くなってエルガーが表舞台に登場するまで続いたと言ってもいいでしょう。
もちろん、その間にヘンデルやハイドンもロンドンで活躍したのですが、彼らをイギリスの作曲家と呼ぶのはふさわしくないでしょう。

そして、エルガーが登場してから、ディーリアスやボーン・ウィリアムズ、ホルストなどが登場するのですが、やはり今一つマイナーです。その後登場したブリテンにしても「イギリス20世紀音楽の父」といわれたのですから、やはりどこか狭い範囲にとどまっています。
しかし、そういう音楽家の作品が私たちの耳に数多く届いているのは、ひとえにイギリスの偉大な指揮者たちが彼らを積極的にコンサートで取り上げ、録音し続けてくれたからでしょう。
そして、彼らのも白いところは、イギリスの指揮者が取り上げなくても大陸側の指揮者が取り上げてくれるような作品、典型はホルストの「惑星」でしょうが、そういう作品には熱心でないことです。
実にへそ曲がり!!

バルビローリにしても、熱心に取り上げたエルガーの録音を眺めてみれば、名刺代わりとも言うべき「威風堂々」などはおそらく一回だけしか録音していないはずです。
逆に、長大な二つの交響曲などは何度か録音していているのですから、ビジネス的には極めてアンバランスと言わねばなりません。

そして、イギリス以外では本当に認知度の低い作曲家はどんどん取り上げてるのです。恥ずかしながら、ジョージ・バターワース(George Butterworth)、アーノルド・バックス(Arnold Bax)、エドワード・ジャーマン(Edward German)あたりの作品は、今回バルビローリの録音を整理していて初めて知りました。

この妙な「祖国愛」みたいなものがイギリスの指揮者の面白さでしょうか。
しかし、その音楽的献身ゆえにグラモフォン誌が世紀末に行ったアンケートでも、20世紀の最も偉大な指揮者としてフルトヴェングラーに続いて堂々の2位に食い込んだのかもしれません。

そう考えれば、日本のオーケストラや指揮者はもう少し日本の作曲家の作品に理解があってもいいのではないかと思われます。

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