リムスキー=コルサコフ:スペイン奇想曲, Op.34(Rimsky-Korsakov:Capriccio Espagnol, Op.34)
ジャン・マルティノン指揮 ロンドン交響楽団 1958年3月録音(Jean Martinon:London Symphony Orchestra Recorded on March, 1958)
Rimsky-Korsakov:Capriccio Espagnol, Op.34 [1.Alborada. Vivo E Strepitoso]
Rimsky-Korsakov:Capriccio Espagnol, Op.34 [2.Variazioni. Andante Con Moto]
Rimsky-Korsakov:Capriccio Espagnol, Op.34 [3.Alborada. Vivo E Strepitoso]
Rimsky-Korsakov:Capriccio Espagnol, Op.34 [4.Scena E Canto Gitano. Allegretto]
Rimsky-Korsakov:Capriccio Espagnol, Op.34 [5.Fandango Asturiano]
古今東西の数ある管弦楽曲の中の最高傑作の一つ

もともとはヴァイオリンのコンチェルト風の音楽として着想された作品ですが、最終的にはヴァイオリン独奏をふんだんに盛り込んだ輝かしいオーケストラ曲として完成されました。構成上は5楽章からなるんですが、連続して演奏されるために単一の管弦楽曲のように聞こえます。ただ、それぞれの楽章はホセ・インセンガなる人の手になるスペイン民謡集から主題が借用されていて(手を加えることもなく、そっくりそのまま!!)、その主題をコルサコフが自由に展開して仕上げる形をとっていますので、5楽章というのはそれなりに意味を持っていると言えます。
- 第1楽章:アルポラーダ(朝のセレナード)::スペインの輝かしい朝を思わせる派手な音楽です。
- 第2楽章:変奏曲(夕べの踊り)::第1楽章とは対照的な夕べの穏やかな雰囲気がただよう音楽です。
- 第3楽章:アルボラーダ::第1楽章と同じ主題ですが、半音高い変ロ長調で演奏され、オーケストレーションも変えられています。(ヴァイオリンとクラリネットが入れ替わっている・・・等)
- 第4楽章:ジプシーの歌::小太鼓の連打にヴァイオリンの技巧的な独奏とジプシー情緒満点の音楽です。
- 第5楽章:ファンダンゴ::カスタネットやタンブリンの打楽器のリズムに乗って情熱的な踊りが展開されます。フィナーレはまさに血管ブチ切れの迫力です。
おそらく、古今東西の数ある管弦楽曲の中の最高傑作の一つでしょう。この曲の初演に当たって、練習中の楽団員からたびたび拍手がわき起こってなかなか練習が進まなかったというエピソードも残っているほどです。
チャイコフスキーもこの作品を取り上げて「作曲者自身が現代一流の音楽家であると自認して良いほどの素晴らしい管弦楽法を見せる」と絶賛しています。
こういう作品を前にすると「精神性云々・・・」という言葉は虚しく聞こえるほどです。クラシック音楽を聞く楽しみの一つがこういう作品にもあることをマニアックなクラシック音楽ファンも確認する必要があるでしょう。
フランス音楽的に仕立て直されたロシア音楽
マルティノンは1958年にボロディンの交響曲第2番とリムスキー=コルサコフのスペイン奇想曲を録音しています。この2曲はカップリングされて一枚のレコードとしてリリースされました。
その2曲は、一般的な通念からすれば実に端正なボロディンであり、あざとさのないリムスキー=コルサコフです。
しかし、一見すると素っ気ないように見えて、ここぞという場面では怒涛の如くテンポを上げて豪快に突き進んでいきます。特にボロディンの交響曲ではその傾向が顕著です。
そして、どこまで行って粘ることも重くなることもありません。
響きは常に繊細で輪郭線も雰囲気でごまかすようなことは一切していません。どこまでいっても音楽が重くなることはなくクリアです。
その意味では、作品へのアプローチは彼の本線であるフランス音楽に対する時と同じように思えます。ボロディンもリムスキー=コルサコフもある意味ではフランス音楽的に仕立て直されているように見えます。
音楽的にはフランス音楽とロシアの音楽はかなり遠い位置にあると思えます。しかし、そんなロシアの音楽に対して、フランス音楽と同じようなアプローチを当てはめて、結果として十分すぎるほどの説得力を持たせてしまっているのです。
ですから、これはロシア音楽じゃないだろうという声も聞こえてきます。
しかし、そういう声にも負けず、少なくない聞き手に対して、これはこれで面白いのかな!!と思わせてしまっているのです。ロシア音楽が持つ重さと妙な暑苦しさみたいなものが苦手だという人には面白く感じられるでしょう。
そういえば、マルティノンはフランスのリヨンで生まれ、音楽的にもパリ音楽院でヴァンサン・ダンディやシャルル・ミュンシュに学んでいますから生粋のフランス人指揮者といっていいのですが、同時にドイツ系アルザス人の血を引いた人でもありました。ですから、フランス人にしてはドイツ系の音楽に強かったのも事実で、異文化が彼のなかで矛盾なく融合していたのかもしれません。
そのあたりが、いろんな音楽をフランス的に仕立て直す腕につながっていたのかもしれません。
もう少し目配せが必要な指揮者かもしれません。
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