カゼッラ:「パガニーニアーナ」, Op.65(Casella:Paganiniana, Op.65)
キリル・コンドラシン指揮 モスクワ・フィルハーモニー管弦楽団 1961年録音(Kirill Kondrashin:Moscow Philharmonic Orchestra Recorded on 1961)
Casella:Paganiniana, Op.65 [1.Allegro agitato]
Casella:Paganiniana, Op.65 [2.Polacchetta]
Casella:Paganiniana, Op.65 [3.Romanza]
Casella:Paganiniana, Op.65 [4.Tarantella]
イタリアにおける器楽曲の復興

アルフレード・カゼッラと言う名前はこの録音で初めて出会いました。しかし、調べてみるとそれほどマイナーな作曲家ではないようです。言い訳を許してもらえるならば、個人でカバーできる範囲という狭いものだと言うことです。
まず出身ですが、イタリアの作曲家です。イタリアの作曲家と言えば真っ先にヴェルディやプッチーニなどが思い浮かぶのですが、彼はそう言うオペラ偏重のイタリアの状況に異議を唱えて器楽曲をメインに作曲活動を行ったようです。
世代的に言えばレスピーギなどと同世代と言うことになりますし。しかし、レスピーギの認知度と較べるとかなり差を開けられていることは否定できません。やはり、「ローマ三部作」のようなヒット曲を持たないと言うがハンデとなっているのでしょうか。
しかし、存命中は作曲家・ピアニスト・指揮者として幅広く活躍し、20世紀両大戦間のイタリア音楽界でもっとも大きな影響力があった音楽家だったようです。
若くしてパリに移り住み、作曲をガブリエル・フォーレに学んでいます。そして、パリ音楽院を卒業した後もパリを拠点に活動したようです。しかし、第1次世界他薦が勃発するとイタリアに戻り、近代イタリア音楽を普及させるための音楽団体「イタリア新音楽協会」を結成したりします。
カゼッラの最大の功績は忘れさられていたヴィヴァルディの作品の復活に力を尽くしたことです。この事が、オペラ偏重の現状を変えようとする切っ掛けになったようです。
この「パガニーニアーナ」もそう言う器楽復興の中の作品であり、パガニーニの音楽を素材として、彼が影響を受けた新古典主義的な音楽に仕上げています。それは古き良き時代への美しさを思い出させるものであり、レスピーギの音楽があれほど聞かれるならばこれらの作品ももっと聞かれても良いのにと思わせる魅力を持っています。
しかし、さらに調べてみると彼はムッソリーニと深い親交があり、戦争協力者としての脛の傷をかかえていたことが分かりました。何とも言えず溜息が洩れるのですが、この時代を生きた人はどうしてもこの問題と向き合う必要があり、その向きあい方がその後のキャリアに大きな影を落とさざるを得なかったようです。
ちなみに、カゼッラは戦後はファシズムへの協力を恥じて、晩年に「平和のための荘厳ミサ曲」を作曲しているのですが、今では演奏される機会も少ないようです。
明晰な楽曲分析は、作品の姿をありのままにさらけ出す
コンドラシンという指揮者は情緒的な側面は敢えて切り捨てるようにして音楽を作る人でし。それは、逆から見れば、作品そのものに何らかの弱さが存在していれば、その弱さを明け透けにさらけ出してしまうことを厭わないと言うことでもありました。
当時のソ連ではかなり珍しい立ち位置だったと言えます。
つまりは、コンドラシンという指揮者は、作品がきちんと書けていさえすれば、それに相応しい姿で再現して見せてくれます。その明晰な楽曲分析は、作品の姿をありのままにさらけ出すのです。
そして驚くのは、そう言うコンドラシンの高い要求に応えるモスクワフィルの能力の高さです。
首都モスクワの名を冠したオケなので、さぞや歴史のあるオーケストラなんだろうと思って調べてみると、何と設立は1951年という若いオーケストラなのです。さらに驚かされたのは、創設された最初はモスクワ・ユース管弦楽団(Moscow Youth Orchestra)という名前だったのです。
社会主義国家のオケなので国家レベルの事業として創設されたのかと思ったのですが、初代指揮者のサムイル・サモスードによって設立されたらしいのです。
そして、その創設に当たっては国立のオケには採用されなかった音楽家を寄せ集めて創設されたようで、「Youth Orchestra」と名乗っていながらも、かなり腕の立つ小父さん達も多数混じっていたようです。
やがて、このオケは1953年には「モスクワ・フィルハーモニー管弦楽団」と名称を変更するのですが、1960年にコンドラシンが首席指揮者に就任したことで黄金時代を迎えることになります。
コンドラシンがトップに就任してからは、彼のオーケストラビルダーとしての才能が並々ならぬものであったことが手に取るように分かります。
カゼッラの「パガニアーナ」という極めてマイナーな作品なのですが、コンドラシンの指揮ならばそれは信用に値するので、この演奏で評価しても何の問題もないと言うことなのでしょう。
同じように、ラフマニノフの最後の作品となった「シンフォニック・ダンス」等もどちらかと言えばマイナーに属する作品ですから、そちらに関しても同じ事をいってもいいでしょう。、
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