クラシック音楽へのおさそい~Blue Sky Label~

ガーシュイン:ラプソディー・イン・ブルー

スタンリー・ブラック指揮 ロンドン・フェスティヴァル管弦楽団 1966年発行





Gershwin:Rhapsody In Blue


ガーシュインの「クラシック音楽」デビュー作

初演はガーシュイン自身のピアノとポール・ホワイトマン楽団によって行われました。(1924年)
ガーシュイン自身が作曲したのは2台のピアノによる、それも草稿程度のものだったようです。
それをオーケストラ版に仕上げたのは楽団付属のアレンジャーだった、ファーディ・グローフェです。そうです、あの「グランド・キャニオン」で有名なグローフェです。
 
彼は、その後もこの作品の改訂と編曲に尽力をして、最終的には1942年に大編成のオーケストラ版を完成させます。
そんなわけで、この作品の実体はガーシュインとグローフェの合作みたいなものだといえます。

実際、クラシックのコンサートで演奏されるのはこの42年のオーケストラ版です。
しかし、私はあまり詳しくないのですが、シンフォニック・ジャズとしてこの作品を捉えるジャズ・オケなどでは、小編成のオリジナル版で演奏することが多いようです。
プレヴィンなんかもこのスタイルで録音をしていますが、全く音楽の雰囲気が違います。

それから、ピアノソロに即興的なアドリブを入れたものも多いですから、ますます雰囲気が変わってしまいます。
いったいどれが本当の「ラプソディー・イン・ブルー」なんだ?と聞かれても戸惑ってしまうと言うのがこの作品の特徴だともいえます。

でも、そんなややこしい話は脇においておくとして、とにかく「粋」な音楽です。
冒頭のクラネリットのメロディを聴くだけで嬉しくなってしまいます。

20世紀に入って行き詰まりを見せ始めたクラシック音楽の世界にとって、このような響きがとても新鮮に聞こえたことだけは事実です。

上品なだけではつまらない


1927年にガーシュインがピアノのソロを担当した録音があります。バックは ポール・ホワイントマンが指揮したポール・ホワイトマン楽団です。この楽団はいわゆるジャズのビッグ・バンドでした。
その録音を初めて聞いた時には仰け反ってしまいました。
あまりのアクの強さに驚かされ、同時に作曲者がイメージした「ラプソディー・イン・ブルー」がこんなものなら、いわゆるクラシック音楽として演奏される大部分の「ラプソディー・イン・ブルー」はあまりにもお行儀がよすぎるのではないかという思いがしたものです。

確かに、クラシック音楽としてガーシュインの音楽をとららえてみれば、バーンスタインなどの演奏がスタンダードの一つとなるでしょうし、それはそれで魅力的な音楽であることは否定しません。
しかし、そう言う演奏ばかりを聞いていると、時にはあのガーシュイン自身がピアノを演奏した録音のように、もっと自由で、もっと突き抜けたような演奏も聞いてみたくなります。

そんな時に出会ったのがこの一枚でした。
A面に「ラプソディー・イン・ブルー」、B面に「パリのアメリカ人」がカップリングされていて、演奏しているにはスタンリー・ブラック指揮のロンドン・フェスティヴァル管弦楽団です。

両方ともに、最初の音が出たとたんに仰け反ってしまいます。
そして、こういう演奏を聞きたかったんだと叫びたくなります。ただし間違ってもスタンダードにはなりません。

これは、そう言うクラシック音楽としての枠の中におさまったガーシュインを散々聞いてみた人にとって、思わず拍手をしたくなる演奏なのです。
そして、個人的には全く未知だったスタンリー・ブラックという指揮者とロンドン・フェスティヴァル管弦楽団という存在をネットで調べてみて、何故に彼らがこのような演奏が出来たのかが分かりました。

スタンリー・ブラックは基本的に映画音楽の作曲家であり演奏家でした。
そして、ロンドン・フェスティヴァル管弦楽団という、いかにも妖しげな名前のオケはいわゆる「覆面オケ」ではなくて、映画音楽を演奏し、録音することを本業とした団体でした。

一般的に言えば、クラシック音楽というものは聞き手に対してある程度の「辛抱」を求めることが許される世界です。最初は多少退屈でも、最後までしっかりと聞いてくれれば感動させます、と言うわけです。
しかし、映画音楽の世界ではそんな「辛抱」を聞き手に求めるなどと言うことはあり得ません。

そして、この録音はそう言うクラシック音楽が持つある種の「甘え」みたいなものを一切かなぐり捨てた上に成り立つ演奏です。
買い込んだ中古レコードには「Phase 4 Stereo」という文字が麗々しく印刷されています。
Decca自慢の録音と言うことなのでしょうが、確かに音は悪くはありませんし、その事がこういう演奏には大きな役割をはたしています。

よせられたコメント

【リスニングルームの更新履歴】

【最近の更新(10件)】



[2025-03-28]

ラヴェル:スペイン狂詩曲(Ravel:Rhapsodie espagnole)
シャルル・ミュンシュ指揮:ボストン交響楽団 1950年12月26日録音(Charles Munch:The Boston Symphony Orchestra Recorded on December 26, 1950)

[2025-03-24]

モーツァルト:セレナード第6番 ニ長調, K.239「セレナータ・ノットゥルナ」(Mozart:Serenade in D major, K.239)
ヨーゼフ・カイルベルト指揮 バンベルク交響楽団 1959年録音(Joseph Keilberth:Bamberg Symphony Recorded on 1959)

[2025-03-21]

シューベルト:交響曲第2番 変ロ長調 D.125(Schubert:Symphony No.2 in B-flat major, D.125)
シャルル・ミュンシュ指揮 ボストン交響楽団 1949年12月20日録音(Charles Munch:The Boston Symphony Orchestra Recorded on December 20, 1949)

[2025-03-17]

リムスキー=コルサコフ:スペイン奇想曲, Op.34(Rimsky-Korsakov:Capriccio Espagnol, Op.34)
ジャン・マルティノン指揮 ロンドン交響楽団 1958年3月録音(Jean Martinon:London Symphony Orchestra Recorded on March, 1958)

[2025-03-15]

リヒャルト・シュトラウス:ヴァイオリンソナタ 変ホ長調 ,Op.18(Richard Strauss:Violin Sonata in E flat major, Op.18)
(Vn)ジネット・ヌヴー (P)グスタフ・ベッカー 1939年録音(Ginette Neveu:(P)Gustav Becker Recorded on 1939)

[2025-03-12]

モーツァルト:弦楽四重奏曲第22番 変ロ長調 K.589(プロシャ王第2番)(Mozart:String Quartet No.22 in B-flat major, K.589 "Prussian No.2")
パスカル弦楽四重奏団:1952年録音(Pascal String Quartet:Recorded on 1952)

[2025-03-09]

ショパン:ノクターン Op.27&Op.37(Chopin:Nocturnes for piano, Op.27&Op.32)
(P)ギオマール・ノヴァエス:1956年発行(Guiomar Novaes:Published in 1956)

[2025-03-07]

モーツァルト:交響曲第36番 ハ長調「リンツ」 K.425(Mozart:Symphony No.36 in C major, K.425)
ヨーゼフ・カイルベルト指揮 バンベルク交響楽団 1960年録音(Joseph Keilberth:Bamberg Symphony Recorded on 1960)

[2025-03-03]

ブラームス:交響曲 第1番 ハ短調, Op.68(Brahms:Symphony No.1 in C Minor, Op.68)
アルトゥール・ロジンスキ指揮:ニューヨーク・フィルハーモニック 1945年1月8日録音(Artur Rodzinski:New York Philharmonic Recorded on January 8, 1945)

[2025-02-27]

ドビュッシー:ヴァイオリン・ソナタ ト短調(Debussy:Sonata for Violin and Piano in G minor)
(Vn)ジネット・ヌヴー (P)ジャン・ヌヴー 1948年録音(Ginette Neveu:(P)Jean Neveu Recorded on 1948)

?>