ガーシュイン:ラプソディー・イン・ブルー
(P)ユージン・リスト:ハワード・ハンソン指揮 イーストマン=ロチェスター・オーケストラ 1957年5月録音
Gershwin:Rhapsody In Blue
ガーシュインの「クラシック音楽」デビュー作
初演はガーシュイン自身のピアノとポール・ホワイトマン楽団によって行われました。(1924年)
ガーシュイン自身が作曲したのは2台のピアノによる、それも草稿程度のものだったようです。
それをオーケストラ版に仕上げたのは楽団付属のアレンジャーだった、ファーディ・グローフェです。そうです、あの「グランド・キャニオン」で有名なグローフェです。
彼は、その後もこの作品の改訂と編曲に尽力をして、最終的には1942年に大編成のオーケストラ版を完成させます。
そんなわけで、この作品の実体はガーシュインとグローフェの合作みたいなものだといえます。
実際、クラシックのコンサートで演奏されるのはこの42年のオーケストラ版です。
しかし、私はあまり詳しくないのですが、シンフォニック・ジャズとしてこの作品を捉えるジャズ・オケなどでは、小編成のオリジナル版で演奏することが多いようです。
プレヴィンなんかもこのスタイルで録音をしていますが、全く音楽の雰囲気が違います。
それから、ピアノソロに即興的なアドリブを入れたものも多いですから、ますます雰囲気が変わってしまいます。
いったいどれが本当の「ラプソディー・イン・ブルー」なんだ?と聞かれても戸惑ってしまうと言うのがこの作品の特徴だともいえます。
でも、そんなややこしい話は脇においておくとして、とにかく「粋」な音楽です。
冒頭のクラネリットのメロディを聴くだけで嬉しくなってしまいます。
20世紀に入って行き詰まりを見せ始めたクラシック音楽の世界にとって、このような響きがとても新鮮に聞こえたことだけは事実です。
ユージン・リストのピアノを聞くべき録音
ハワード・ハンソンは20世紀のアメリカを代表する作曲家ですが、その現代音楽に対する徹底的に批判的な態度は同時代のサミュエル・バーバーと同じです。また、スウェーデン系移民の両親の下に生まれたということもあるのでしょうか、北欧系の題材を使うことが多かったので「アメリカのシベリウス」などとも呼ばれたそうです。
とは言え、私も彼の作品はほとんど聞いたことがありませんし、一般的に言ってもバーバーほどには聞かれていないようです。
やはり、映画「プラトーン」で彼の「アダージョ」がすっかり有名になったのが大きいのでしょう。
さらに言えば、ヴァイオリン協奏曲もアン・アキコ・マイヤーズという美形のヴァイオリニストで知名度が上がったのも少しは貢献しているのかもしれません。(最近は少しお太りになられたようで雰囲気が随分とお変わりになられたようですが・・・って、書きながら、これってもしかしたらセク・ハラで告発されないかとふと不安よぎったりして・・・^^;)
しかし、バーバーと異なるのは指揮者としての活動も活発に行っているので、自作の指揮だけでなく、ここで紹介しているガーシュインやグローフェなどの有名どころだけでなく、チャドウィックやマクダウェルという同時代のアメリカの作曲家の作品も数多く録音しています。
しかし、その指揮ぶりは作曲家としてのスタンスからもうかがい知れるように、基本的には「手堅い」というイメージをこえるものではないようですが、下手な指揮者でないことも確かです。
同じく、ピアニストのユージン・リストの方も、今となってはあまり話題にならないのですが、系統的にはアール・ワイルド等と同じような系列に入る人のようです。上手いことは上手いのですが、いわゆるベートーベンとかブラームスのような正統派の音楽ではなくて、こういうガーシュインのような作品で力が発揮されるようです。
このガーシュインの協奏曲とラプソディ・イン・ブルーでは、Mercuryの極めつけの優秀録音と言う後ろ盾を得て、素晴らしいまでにダイナミックで切れ味の鋭い演奏を堪能させてくれます。
経歴を見れば、ショスタコーヴィチのピアノ協奏曲第1番のアメリカ初演を行ったり、ニューヨーク・フィルの演奏会にも招かれたりと、極めて正統派の道を歩んできたようなのですが、50歳を過ぎたころからは「エド・サリバン・ショー」などにも出演したようで、そのあたりが、最初に「アール・ワイルド等と同じ系列」と書いた次第です。
この1957年にガーシュインを録音したときは40歳を目前にしたことですから、まさに覇気に満ちた素晴らしい演奏を展開しています。
最初はハワード・ハンソンの指揮に興味を持って聞き始めたのですが、これは間違いなくユージン・リストのピアノを聞くべき録音のようです。
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