ビゼー:カルメン組曲
ヘルベルト・フォン・カラヤン指揮 フィルハーモニア管弦楽団 1958年1月16日録音
Bizet:Carmen Suite No.1 [Act4 - Entr'acte]
Bizet:Carmen Suite No.1 [Act3 - Entr'acte]
Bizet:Carmen Suite No.1 [Act2 - Entr'acte]
Bizet:Carmen Suite No.1 [Act1 - Prelude]
ホフマン版カルメン組曲
カルメン組曲は、ビゼー自身が選曲をしたのではなく、ホフマンによって構成されたものです。
一般的には以下のような構成になっていて、厳密には「ホフマン版組曲」と呼ばれるものです。
第1組曲:前奏曲と間奏曲を中心に構成される。
- 前奏曲
- アラゴネーズ (第1幕への前奏曲の後半部分、第4幕への間奏曲)
- 間奏曲 (第3幕への間奏曲)
- セギディーリャ
- アルカラの竜騎兵 (第2幕への間奏曲)
- 終曲(闘牛士) (第1幕への前奏曲の前半部分)
第2組曲:アリアや合唱入りの曲をオーケストラ用に編曲した6曲で構成される。
- 密輸入者の行進
- ハバネラ
- 夜想曲 (ミカエラのアリア)
- 闘牛士の歌
- 衛兵の交代(子どもたちの合唱)
- ジプシーの踊り
しかしながら、この組曲はビゼー自身の手になるものではないと言うこともあって、この形のままで演奏されることは滅多にないようです。
指揮者によって、その順番が変えられたり幾つかの曲が削除されるのが一般的です。
とはいえ、第4幕から下がっていって、最後に前奏曲を持ってきたカラヤンの配列はかなり変わっています。
- 第4幕への間奏曲「アラゴネーズ」
- 第3幕への間奏曲
- 第2幕への間奏曲「アルカラの竜騎兵」
- 第1幕への前奏曲「闘牛士」
半端な作品(?)ばかりを押しつけられて・・・。
データというのは単独で眺めていても殆ど意味を持ちませんが、ある程度まとまってみると色々なことに気づかされます。
カラヤンは1955年にベルリンフィルとのアメリカツアーを成功させることで「終身常任指揮者」のポストを確認します。しかし、録音に関してはベルリンフィルは「DG(ドイツ・グラモフォン)」の専属だったので、EMIはカラヤン&ベルリンフィルという組み合わせで録音を行うことが出来ませんでした。
その事は、EMIにとっても打撃だったのですが、カラヤンとベルリンフィルにとっても困った話だったはずです。
そして、色んな「大人の事情」もあったと思うのですが、58年にはカラヤンは「DG」と契約を結び、60年には「EMI」との契約を解除しています。おそらく、この契約解除は「DG」との契約をかわすときには視野に入っていたようです。
その証拠に、ベルリンフィルとカラヤンは57年から「EMI」で録音をはじめるからです。
世間ではこれをカラヤンのEMIに対する「手切れ金」と言われています。
「DG」にしてみても、カラヤンと契約を結ばなければベルリンフィルとの録音は出来ません。それならば、いらぬトラブルを起こすことなくカラヤンを「EMI」から移籍(引き抜き^^;)させたかったのでしょう。専属契約を結んでいるベルリンフィルが「EMI」で録音することを認めたのは「移籍金」の意味合いもあったのかもしれません。
そして、カラヤンとベルリンフィルが「EMI」ではじめて録音したのは1957年1月のワーグナーの管弦楽曲集でした。
面白いのは、それ以後のベルリンフィルとフィルハーモニア管との使い分けです。
まずベルリンフィルとの録音を挙げておきます。
- ワグナー:管弦楽曲集 1957年1月7,8日、2月18,19日録音
- シューマン:交響曲第4番 1957年4月25,26日録音
- ブルックナー:交響曲第8番 1957年5月23~25日録音
- ヒンデミット:交響曲「画家マチス」 1957年11月28,29日録音
- ドヴォルザーク:交響曲第9番「新世界から」 1957年11月28,29日、58年1月6・7日録音
- スメタナ:モルダウ 1957年5月18~20日
- モーツァルト:アイネ・クライネ・ナハトムジーク、ヘンデル:水上の音楽 1959年12月30,31日録音
- シューベルト:交響曲第5番5 1958年5月18~20日録音
- ブラームス:ピアノ協奏曲第2番 1958年12月30,31日録音
- モーツァルト:交響曲第29番 1960年2月29日~3月1日録音
- チャイコフスキー:交響曲第4番 1960年2月29日~3月1日録音
- バルトーク:弦楽器・打楽器とチェレスタのための音楽 1960年11月9日~11日録音
次ぎにフィルハーモニア管との録音です。
- チャイコフスキー:大序曲1812年、ベルリオーズ:ラコッツィ行進曲、リスト:ハンガリー狂詩曲第2番、シベリウス:悲しきワルツ、ウェーバー:舞踏への勧誘 1958年1月7,9日・2月6,7日録音
- レスピーギ:交響詩「ローマの松」、ベルリオーズ:ローマの謝肉祭、リスト:交響詩「前奏曲」 1958年1月9,10,13,17日録音
- オッフェンバック:バレエ「パリの喜び」、ロッシーニ:チロルの合唱、グノー:ワルプルギスの夜 1958年1月13日~16,18日録音
- R・シュトラウス:楽劇「ばらの騎士」第1組曲 1958年1月18日録音
- ビゼー:アルルの女 第1組曲、第2組曲、カルメン組曲 1958年1月14日~16日録音
- ベートーヴェン:ミサ・ソレムニス ニ長調作品123 1958年9月12日~16日録音
- モーツァルト:交響曲第38番「プラハ」 1958年9月16,17日録音
- チャイコフスキー:バレエ「白鳥の湖」組曲、チャイコフスキー:バレエ「眠れる森の美女」組曲 1959年1月1日~3日録音
- オペラ間奏曲集:1959年1月2日~6日録音
- シベリウス:交響詩「フィンランディア」 1959年1月5・6日録音
- ロッシーニ:序曲集 1960年3月26,29、30日録音
- シベリウス:交響曲第2番 1960年3月28日~29日録音
- ウェーバー:魔弾の射手序曲、ワグナー:さまよえるオランダ人序曲、ローエングリン第1幕前奏曲、ニコライ:ウィンザーの陽気な女房たち序曲、メンデルスゾーン:序曲「フィンガルの洞窟」1960年9月16日~20日録音
- オペラ・バレエ曲集 1960年9月21日~23日録音
- シベリウス:交響曲第5番 60年9月20・21・23日
- プロムナード・コンサート:1960年9月21,24日録音
いくつかの例外はありますが、フィルハーモニア管は「管弦楽曲集」とか「間奏曲集」とか「序曲集」とか、果ては「プロムナード・コンサート」みたいな半端な作品ばかりが割り当てられています。
シベリウスの交響曲が割り当てられているのは、イギリスのオケの方が適正があると判断したからでしょう。
こうしてみると、58年に予定されたベートーベンのミサ・ソレムニスが異彩を放っています。これは、もしかしたら半端物ばかり押しつけられるフィルハーモニア管の士気高揚という面もあったのかもしれません。ところが、既に述べたように、それが録音的に失敗に終わるのですから目も当てられません。
そして、カラヤンの方もそう言う使い分けをはっきり意識していたのか、このビゼーの録音などは実にあっさりとした仕上げになっています。
カラヤンはカルメンをよく取り上げていますし、組曲も何も録音しています。後年の、ベルリンフィルとの録音と較べれば、全く別人かと思うほどの薄味に仕上がっています。もしかしたら、オケの方も心変わりした恋人のようにとらえていたのかもしれません。
ただ不思議なのは、そうやってお互いに肩の力が抜けてしまった結果、これはこれなりにスッキリとした演奏に仕上がっていて悪くないと言えば悪くないのです。
そのあたりが、面白いと言えば面白いのですが、後年の「レガート・カラヤン」を期待すると肩すかしを食いますのでご用心あれ!
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