Hi-Fi フィードラー
フィードラー指揮 ボストン・ポップス・オーケストラ 1956年~1960年録音
R.Korsakov:歌劇「金鶏」組曲 第1曲 序奏とドドン王の眠り
R.Korsakov:歌劇「金鶏」組曲 第2曲 戦場のドドン王
R.Korsakov:歌劇「金鶏」組曲 第3曲 ドドン王とシェマハの女王の踊り
R.Korsakov:歌劇「金鶏」組曲 第4曲婚礼の祝宴とドドン王の哀れな末路と死?終曲
Rossini:歌劇「ウィリアム・テル」序曲
Tchikovsky:スラヴ行進曲
Chabrier:狂詩曲「スペイン」
Liszt:ハンガリー狂詩曲第2番 嬰ハ短調
Liszt:ラコッツィ行進曲
ボストン・ポップス・オーケストラ
すでにご存じだと思うのですが、ボストン・ポップス・オーケストラは夏のオフシーズンにのみ活躍するオーケストラなのですが、それはメンバーが基本的にボストン交響楽団と同じだからです。
ボストン交響楽団は今更いうまでもなく、歴史と伝統あるクラシック音楽のオーケストラなのですが、ポップス・オーケストラの方は映画音楽などのポピュラー曲を中心に演奏します。これは、建前としては音楽普及のためとなっているのですが、きっとメンバーの小遣い稼ぎ&いつもいつもクラシックばっかりじゃ疲れるよ、たまには楽しくパーッ!!と演奏したいね・・・みたいな事があるのではないかとにらんでいます。
ただ、少し調べてみますと、このオーケストラの歴史は古くて、1885年にまで遡るそうです。お手本にしたのは、当時のヨーロッパで行われていた「プロムナードコンサート」だったようです。気楽に飲み物を飲んだりしながら楽しめるコンサートが「プロムナードコンサート」なのですが、それと同じようなものをアメリカでもやっちゃおうというのが、きっかけだったようです。
やがて、1926年にアーサー・フィードラーがポップス・オーケストラの指揮者に就任すると、耳に優しいクラシックの小品だけでなくジャズのナンバーやミュージカルのヒット曲なども演奏するようになり、ポップス・オーケストラの人気を高めていきます。彼は、独立記念日に無料のコンサートをするなどの様々な企画を積極的に行い、亡くなる79年まで、なんと50年にもわたってこのオーケストラを指揮し続けました。これは、驚くべき事で、その50年の間に、表の交響楽団の音楽監督はセルゲイ・クーセヴィツキー(1924-1949)、シャルル・ミュンシュ(1949-1962)、エーリヒ・ラインスドルフ(1962-1969)、ウィリアム・スタインバーグ(1969-1972)、小澤征爾(1973-2002)と代替わりをしたのです。
このフィードラーの長期政権の跡を継いだのがジョン・ウィリアムズでした。彼については今さら説明の必要はないですね。スピルバーグなど組んでET、未知との遭遇、スターウオーズ、ジュラッシックパーク等々を作曲した人です。ポップス・オーケストラが映画音楽などのポピュラー曲を中心に演奏するようになったのは、彼の時代になってからのようです。
しかし、映画音楽の仕事が忙しくなったのか、ウィリアムズは95年にこの座を退いて、現在はキース・ロックハートなる人物が指揮者を務めています。
いささか複雑な思いに駆られます
フィードラーという人は大変な人気指揮者だったようで、彼のレコードはミリオンセラーを記録したり、独立200年を記念するコンサートにはのべで40万人も動員するなど、華々しい記録が残されています。
しかし、そんなフィードラーの演奏をあらためて聴き直してみると、いささか複雑な思いに駆られます。
こういうクラシックの小品を演奏させてうまかったのはカラヤンです。彼もこういうCDを結構たくさん録音しています。そういうものと、このフィードラーのものとを比べてみると、やはりカラヤンはすごいな!!と感心させられます。
フィードラーは、ここぞ!、というところでは実にそつなく盛り上げていますし、叙情的な部分ではしっかりと歌わせています。ただ、聞き終わった後の印象はきわめて希薄です。なぜだろう、と考えてみると、結局は音楽が平板で彫りが浅いのです。
これと比べると、盛り上げるところ、歌わせるところ、実にそつなくこなしているのは同じなのですが、カラヤンの方は遙かに味が濃いのです。それは、料理にたとえると、鰹節と煮干しからじっくりと時間をかけて出汁をっているカラヤン、ほんだし味の素ですませているフィードラーという感じがします。
しかし、そう思いつつ、もう少し考えてみると、フィードラーとポップス・オーケストラを聴きに来る人は、そんな上等な味は求めていないことに気づかされます。夏の夕暮れに、ファーストフードを頬張りながら聞くには、カラヤンは味が濃すぎます。下手をすると、ハンバーガーがのどに詰まってしまうかもしれません。
友達と飲み食いし、おしゃべりをしながら聞くにはこれくらいの味付けの方が頃合いがいいのでしょう。
そう思えば、そういう己の立ち位置をしっかりと見据えて、下手な芸術家魂などは出すこともなくひたすら華やかで明るい音楽を提供し続けたフィードラーという男は、きわめてアメリカ的な音楽家だったといえるのかもしれません。
<収録曲>
ニコライ・リムスキー=コルサコフ(1844-1908)
1.歌劇「金鶏」組曲
ジョアッキーノ・ロッシーニ(1792-1868)
2.歌劇「ウィリアム・テル」序曲
ピョートル・イリイチ・チャイコフスキー(1840-1893)
3.スラヴ行進曲
エマニュエル・シャブリエ(1841-1894)
4.狂詩曲「スペイン」
フランツ・リスト(1811-1886)
5.ハンガリー狂詩曲第2番 [ミュラー=ベルクハウス編]
6.ラコッツィ行進曲
よせられたコメント
2011-08-31:こた
- メンバーの小遣い稼ぎ…というよりも、オケ全体の小遣い稼ぎかと思います。
やはり定期公演だけでは、お金がまわらないみたいです。
ボストン以外では、ロサンゼルスフィルも夏はハリウッドボウルでこうした演奏会を集中しておこなっています。
(かつてロスフィルのファンドレイジング担当だった、日本人女性が教えてくださいました。)
定期公演で芸術性を追求するための、大事な「小遣い稼ぎ」です。
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