クラシック音楽へのおさそい~Blue Sky Label~

ブラームス:交響曲第2番 ニ長調 作品73

ユージン・オーマンディ指揮 フィラデルフィア管弦楽団 1953年2月15日録音



Brahms:Symphony No.2 in D major, Op.73 [1.Allegro non troppo]

Brahms:Symphony No.2 in D major, Op.73 [2.Adagio non troppo]

Brahms:Symphony No.2 in D major, Op.73 [3.Allegretto grazioso (quasi andantino)]

Brahms:Symphony No.2 in D major, Op.73 [4.Allegro con spirito]


ブラームスの「田園交響曲」

ブラームスが最初の交響曲を作曲するのに20年以上も時間を費やしたのは有名な話ですが、それに続く第2番の交響曲はその一年後、実質的には3ヶ月あまりで完成したと言われています。ブラームスにとってベートーベンの影がいかに大きかったかをこれまた物語るエピソードです。

第2番はブラームスの「田園交響曲」と呼ばれることもあります。それは明るいのびやかな雰囲気がベートーベンの6番を思わせるものがあるかです。

ただ、この作品はこれ単独で聞くとあまり違和感を感じないでのですが、同時代の他の作品と聞き比べるとかなり古めかしい装いをまとっています。この10年後にはマーラーが登場して第1番の交響曲を発表することを考えると、ブラームスの古典派回帰の思いが伝わってきます。
オケの編成を見ても昔ながらの二管編成ですから、マーラーとの隔絶ぶりはハッキリしています。
とは言え、最終楽章の圧倒的なフィナーレを聞くと、ちらりと後期ロマン派の顔がのぞいているように思うのはユング君だけでしょうか。

心地よく、そして安心して音楽に浸ることができる演奏


オーマンディのベートーベンは世間で言われるほどには悪くはありません。吉田大明神にぼろくそに言われたエロイカも、実際に聞いてみれば悪い演奏ではないことはすぐに分かります。
そして、それと同じ文脈において、彼のブラームスも悪くはありません。

こんな書き方をすると違和感を感じる人がいるかもしれませんが、こういうオーマンディ的アプローチに基づいたベートーベンやブラームスにはオンリーワンの魅力があります。
確かに、70年代のカラヤン盤は流麗さではこれを上回るかもしれませんが、あそこでは締まるべきところが全く締まっていません。
結果として、音と音がノッペリと繋がっていて、ベートーベンやブラームスらしい引き締まったフォルムが希薄となって、そこに不満を感じる人も多いでしょう。

クラシックであれポップスであれ、音楽なんてものは聞いて楽しければいいじゃないかという人がいます。一見すれば酸いも甘いも噛みしめた達人のような物言いのように聞こえるのですが、その中味を覗いてみれば驚くほどに空っぽであったりします。
ですから、吉田秀和のように多様な西洋の歴史と文化の中に音楽を位置づけて、その位置づけの中から個々の演奏に対する彼なりの「意味」と「価値」を明らかにしていく事は、そう言うものの分かったような空っぽの論議を黙らせるためには必要不可欠なものでした。
しかしながら、その「くどさ」が時には鼻につく人もいて、そこに教養主義の匂いをかぎつける人もいたことでしょう。

確かに、そう言う歴史や伝統、文化的な積み重なりばかりに目をやりすぎると、クラシック音楽というものがもっているもう一つの側面を見落としてしまうことになります。
そのもう一つの側面とは、言うまでもなく、「クラシック音楽もまた一夜の劇場的興奮を求める人のために供され音楽」であると言う事実です。

その意味では、クラシック音楽もまたポップスなどと同じ土台に立つ音楽です。

しかし、この国におけるクラシック音楽受容の歴史を振り返ってみれば、クラシック音楽もまたその様な側面を持っていることを実感として日本人が気づくためには、バブル期以降に多くの普通の日本人が彼の地を訪れて、実際の劇場に足を運ぶという経験が必要でした。
おそらく、吉田にしてみればそんな事は分かり切ったことではあったのでしょう。
しかし、そう言う側面を60年代の日本で強調することは、そう言う時代的制約の中にいるクラシック音楽ファンをミスリードすることになる判断したのかもしれません。そして、その判断が時には「勇み足」になってしまう場面もあったと言うことなのでしょうか。

ですから、これらの録音を聞きながら「その日の仕事に疲れた勤め人が劇場に足を運ぶときに、聞いてみたいと思えるベートーベンやブラームスはこのような姿をしているとは思いません」と心の中で吉田氏に対して語りかけてみたくなるのです。

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