メンデルスゾーン:交響曲第3番 イ短調 作品56 「スコットランド」
スタインバーグ指揮 ピッツバーグ交響楽団 1952年11月17日録音
Mendelssohn:Symphony No.3 in A minor Op.56 "Scottish" [1st movement]
Mendelssohn:Symphony No.3 in A minor Op.56 "Scottish" [2nd movement]
Mendelssohn:Symphony No.3 in A minor Op.56 "Scottish" [3rd movement]
Mendelssohn:Symphony No.3 in A minor Op.56 "Scottish" [4th movement]
標題をつけるが好きだったみたいです(^^)
3番には「スコットランド」、4番には「イタリア」と副題がついています。
あまりポピュラーではありませんが、5番には「宗教改革」、2番にも「賛歌」と言う副題がついています。
そして、絶対音楽の象徴みたいに言われるシンフォニーですが、何故か副題がついている方が人気がでます。
もちろん、シンフォニーでなくても、副題がついている方がうんと人気がでます。もっとも、その副題も作曲者自身がつけたものもあれば、あとの時代で別人が勝手につけたものもあります。
中には、人気曲なのに名無しでは可哀想だと思ったのか、全く訳の分からない副題がついているものもあります。
あまりひどいものは次第に使われなくなって消えていくようですが、それなりに的を射ているものは結構通用しています。
そう言えば、すてきなメロディーを耳にしたときに、「この曲なんて言うの?」なんて聞かれることがよくあります。(よくあるわけないよな(^^;、時々あるほどでもないけれど、でも、たまーにこういう状況があることはあります。)
そんなときに知ったかぶりをして、「あーっ、これはね『ロッシーニの弦楽のためのソナタ』 第1番から第2楽章ですよ、いい曲でしょう!」等と答えようものなら、せっかくの和んだ空気が一瞬にして硬直していくのが分かります。
ああ、つまらぬ事を言うんじゃなかったと思っても、後の祭りです。
でも、そんなときでも、その作品にしゃれた副題がついていると状況は一変します。
「あーっ、これはねショパンの革命ですよ。祖国を失った悲しみと怒りをピアノにたたきつけたんですね、ふふふっ!」と言えば、実にかっこいいのである。
ところが、全く同じ事を言っているのに、「あーっ、これはねショパンのエチュードから第12番ハ短調、作品番号10の12です、祖国を失った悲しみと怒りをピアノにたたきつけたんですね、ふふふっ!」と答えれば、これは馬鹿である。
クラシック愛好家がこのような現実をいかに理不尽であると怒っても、それは受け入れざるを得ない現実です。
流行歌の世界でも、「ウタダの待望の新作「作品番号12の3 変ホ長調!」なんていった日には売れるものも売れなくなります。
もっともっと素敵な標題をみんなでつけましょう(^^)
そして、クラシック音楽にいささかいかがわしい副題がついていても目くじらをたてるのはやめましょう。
中には、そう言うことは音楽の絶対性を損なうといって「僕は許せない!」と言うピューリタン的禁欲主義者のかたもおられるでしょうが、そう言う方は「クラシック音楽修道院」にでも入って世俗との交流を絶たれればすむ話です。
いや、私たちは逆にどんどんすてきな副題をつけるべきかもしれません。
だって、今流れているこの音楽にしても、メンデルスゾーンの「交響曲第3番 イ短調 作品番号56」、と言うよりは、メンデルスゾーンの「スコットランド」と言う方がずっと素敵だと思いませんか。
それにしても、メンデルスゾーンは偉い、1番をのぞけば全て副題をつけています。有名なヴァイオリンコンチェルトも今では「メンコン」で通じますから大したもです。(うーん、でもこれが通じるのは一部の人間だけか、それに付け方があまりにも安直だ、チャイコン、ブラコンあたりまでは許せても、ベトコンとなると誤解が生じる。)
ピアノ曲集「無言歌」のネーミングなんかも立派なものです。
「夢」「別れ」「エレジー」あたりは月並みですが、「「眠れぬ夜に」「安らぎもなく」、「失われた幸福」と「失われた幻影」に「眠れぬままに」「朝の歌」と来れば、立派なものだと思いませんか。
明るくこぎみよく弾む音楽
職人というものはいつもいい仕事をしてくれます。
たとえば、このスタインバーグ&ピッツバーグ響によるメンデルスゾーンの交響曲は、イタリア(第4番)もスコットランド(第3番)も明るくこぎみよく弾む音楽で、実にいい仕事をしています。コンサートに足を運んでこういう音楽を聴かせてもらえれば十分満足して家路につけること間違いなしです。
まるで蒸留水のような味も素っ気もない演奏を聴かされたり、ちんたらちんたら演奏しながら最後のフィナーレだけはドカンと盛りあげて、「どうだ、これだけでてめえらは何も分からずにブラボーだろう!」と言うような下心丸見えの演奏を聴かされた日には「金返せ!」と叫びたくなるのですが、スタインバーグにはそんな思いは絶対にさせられないだろうなと言う安心感があります。
おそらく、そう言う安心感があればこそ四半世紀にもわたってピッツバーグ響を率いることが出来たのでしょう。
しかしながら、クラシック音楽の業界というのは過酷な世界です。
どれほど評価された音楽家でも、この世を去ってしまえば残されるのは録音だけです。存命中のライバルは、現実のコンサートでは会場に足を運んでくれる限られた範囲の「生きた演奏家」だけだったのが、亡くなったとたんに、時間も地理的制約もとっぱらった「クラシック音楽の演奏史」そのものがライバルになってしまうのです。
たとえば、贅沢が身にしみこんだ聞き手は、このスタインバーグのスコットランドを聞けば「悪くはないけど、クレンペラーの演奏と比べればそれほどのものじゃないね」などとほざいてしまうのです。第4番のイタリアにしたって、どうしても背後にトスカニーニの亡霊が張り付いてしまいます。スタインバーグが元気にピッツバーグでコンサート活動をしているときに、その演奏を評価するときに過去のクレンペラーやトスカニーニを引き合いに出してきて云々すれば「お前は阿呆か」と言われるのが関の山です。ところが、死んでしまったとたんに、残された録音は何のためらいもなくクレンペラーやトスカニーニと比較され「いまいちだね」などと軽く言われてしまうのです。
トスカニーニの最晩年(1954年)に録音されたイタリアはとてつもない集中力によって構築された壮麗なシンフォニーです。クレンペラーのスコットランドに至っては、その空前絶後の巨大にして壮大なフィナーレは疑いもなく20世紀の演奏史に燦然と輝く金字塔です。
こんなものと比べられたらたまったものではありませんが、そのたまったものじゃないことが普通にやられてしまうのがクラシック音楽の世界なのです。
しかし、クラシック音楽の演奏史がそのような巨大な存在だけで成り立っていたわけではありません。そう言う光り輝く巨大な存在の裾野には、数多くの職人たちによる珠玉のような「いい仕事」があったわけです。クラシック音楽マニアの性とも言うべき名曲名盤探しの中でそのような「いい仕事」が埋もれてしまうのはあまりにも残念です。
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