シューベルト:劇付随音楽「ロザムンデ」D797 (抜粋)(Schubert:Rosamunde, D.797(Incidental))
ジョージ・セル指揮 クリーヴランド管弦楽団 1967年1月7日録音(George Szell:Cleveland Orchestra Recorded January 7, 1967)
Schubert:Rosamunde, Iincidental Music, D 797 [1.Overture]
Schubert:Rosamunde, Iincidental Music, D 797 [2.Interlude No.3]
Schubert:Rosamunde, Iincidental Music, D 797 [3.Ballet, No.2]
音楽だけは残った(^^v

ロザムンデと言えばシューベルトと結びつくほどにこの作品は有名です。
原作は、ベルリン出身の女流作家ヘルミーネ・フォン・シェジーの戯曲『キプロスの女王ロザムンデ』です。しかし、この戯曲はおそろしく出来の悪いもので、わずか2日で上演が打ち切られてしまいました。
しかし、幸いだったのは、この戯曲に付随音楽をつけたのがシューベルトだったことです。おかげで、戯曲の方は台本も残らないほどのお粗末さだったのに、このシューベルトの音楽によって女流作家ヘルミーネ・フォン・シェジーの名前は歴史に刻まれることになりました。
なお、この劇音楽の序曲は今日では「ロザムンデ序曲」と呼ばれているのですが、実は別の作品のための序曲だったものを使い回したものでした。しかし、本来の出所であるオペラ「アルフォンゾとエストレラ」はほとんど忘却の彼方に行ってしまったために、本来は「アルフォンゾとエストレラ」序曲とよぶべきはずのものが「ロザムンデ序曲」として定着してしまいました。
しかし、この美しいメロディはシューベルトが書いた音楽の中でも屈指のもので、その美しさと「ロザムンデ」のイメージがあまりにも見事に結びついているが故に、やはりこれは「ロザムンデ序曲」とよぶしかないと思えます。
全曲は上記の序曲と10曲からなりますが、一般的には序曲と第3幕間奏曲、そしてバレエ音楽第1番・第2番が抜粋して演奏されることが多いようです。とりわけ、第3幕間奏曲は弦楽四重奏曲第13番『ロザムンデ』に転用されているのでとりわけ有名です。
「序曲」
「間奏曲第1番」
「バレエ音楽 第1番」:木管楽器の響きが素晴らしい!!
「間奏曲 第2番」
「ロマンス<満月は輝き>」:アルトの独唱です。
「亡霊の合唱<深みの中に光が>」:男声合唱です。
「間奏曲 第三番」:弦楽四重奏曲第13番の第2楽章に登場する有名なメロディです。
「羊飼いのメロディ」
「羊飼いの合唱<この草原で>」:混声合唱です。
「狩人の合唱<緑の明るい野山に>」:混声合唱・男声合唱・女声合唱で歌われます。
「バレエ音楽 第二番」:終曲です。
この世の中、完璧だけがえらいわけではない
中古レコードを整理していてふと一枚のレコードが目にとまりました。シューベルトのハ長調シンフォニーと劇付随音楽「ロザムンデ」の抜粋が収録されたセル&クリーブランド管のレコードです。
70年代に再発されたレコードなので、さすがに録音クレジットはしっかり明記されていました。それによると、「ロザムンデ」の録音クレジットは以下のようになっていました。
ジョージ・セル指揮 クリーヴランド管弦楽団 1957年10月25日録音
アレレ、確かセルとクリーブランド官の録音は1967年のはずだったと思うのですが、1957年にも録音していたのでしょうか。そこで、調べてみたのですが、やはり1957年に録音された「ロザムンデ」なんてものは存在しません。
と言うことは1967年を1957年と書き間違えたのかと思ったのですが、1967年の録音は1月7日に録音されています。となると、「1957年10月25日録音」というクレジットはいったい何と間違えたのでしょうか。
ちなみに、ハ長調シンフォニーの方は「1957年11月1日録音」と正しくクレジットされています。
このあたり、昔はかなりチェック機能が弱かったということなのでしょうか。それでも、1957年の録音だと思って買い込んだら1967年の録音だったので「騙された」とおこる人も少なかったのでしょうか・
そして、この一件を調べたおかげで、ふと1967年に録音された「ロザムンデ」をサイトの方にアップしていないことに気づかせてくれました。録音が1967年なのでいささか危惧はあったのですが、調べてみると初出も1967年なのでギリギリセーフ、パブリック・ドメインです。
と言うことで、今頃になって慌ててこの録音をアップした次第です。
ちなみに「ロザムンデ」に関してはコンセルトヘボウと録音したものがあって、それはすでに紹介済みです。その時に、以下のように記していました。
正直に告白すると、これは後年セルがクリーブランド管と録音したものよりもはるかに素晴らしいと言わざるをえません。
何が違うのかと言えば、オケの響きです。
私にしては珍しい評価ですが、今回あらためて聞き直してみて、この評価は敢えて変更する必要はないと思いました。
1967年と言えばクリーブランド管はセルによって完璧に仕上げられていた時期です。セルにとって、クリーブランド管は自分の思い描く音楽に向けて指示を出せばそれに100%応える領域に達していました。ある人はその状況を「セルがクリーブランド管の包摂されてしまった」と表現していて、まさに私も同感です。
物事はあまりにもすいすい進みすぎると、コンセルトヘボウの様なオンリー・ワンの魅力を持つオケにはかなわない部分が出てきてしまいます。
この世の中、完璧だけがえらいわけではないと言うことなのでしょう。
なので、中古レコードの録音クレジットのミスも笑って許しましょうか・・・。
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