ラヴェル:スペイン狂詩曲(Ravel:Rapsodie espagnole)
アンドレ・クリュイタンス指揮 パリ音楽院管弦楽団 1961年11月録音(Andre Cluytens:Orchestre de la Societe des Concerts du Conservatoire Recorded on November, 1961)
Ravel:Rhapsodie espagnole [1.Prelude a la nuit. Tres modere]
Ravel:Rhapsodie espagnole [2.Malaguena. Assez vif]
Ravel:Rhapsodie espagnole [3.Habanera. Assez lent et d'un rythme las]
Ravel:Rhapsodie espagnole [4.Feria. Assez anim]
ラヴェルが初めて出版した本格的な管弦楽作品

もとはピアノの連弾用として作曲されたのですが、その後オーケストレーションをほどこし、さらには4曲をまとめて「組曲」として出版されました。
そして、管弦楽法の大家と言われるラヴェルの記念すべき管弦楽作品の第1号がこの作品です。
ラヴェルの母親はスペインはバスク地方の出身であり、ラヴェル自身もそのバスクの血を引き継いでいることを誇りにしていました。その意味でも、彼がオーケストラ作品の第1号にスペインを素材に選んだことは十分に納得がいきます。
そして、この後も「スペインの時」や「ボレロ」のように、スペイン素材を使った作品をたくさん作曲しています。
それにしても、この作品は間違いなくリムスキー=コルサコフの「スペイン奇想曲」の華麗なオーケストレーションをまっすぐに受け継いでいます。
オーケストラ作品の第1号にして、すでに後年「オーケストレーションの天才」「管弦楽の魔術師」と呼ばれる片鱗・・・『複雑多様ではあるけれども繁雑難解ではない』という彼のモットーが実現されていることには驚かされます。
- 第1曲:Pre'lude a` la nuit(夜への前奏曲)
- 第2曲:Malaguena(マラゲーニャ)
- 第3曲:Habanera(ハバネラ)
- 第4曲:Feria(祭り)
希有の響き
「モノラルでも録音していたんだ」と最近になって気づいて大いに興味をそそられたと書きながら、肝心のステレオ録音の方の紹介が中途半端になっていることに気づきました。
「マ・メール・ロワ」に「ダフニスとクロエ」、そして、「高雅にして感傷的なワルツ」「スペイン狂詩曲」「道化師の朝の歌」等、ごっそりとぬけていたのですから笑ってしまいます。「とりあえず私の好きな「ボレロ」「ラ・ヴァルス」「亡き王女のためのパヴァーヌ」「クープランの墓」をまずは聞いてみました」と書いていたのですが、その内に興味が他に移り、その間にまだ紹介すべきステレオ録音が残っていることをすっかり失念し、自分の中ではとっくの昔に紹介済みだと思いこんでしまっていたようでした。
人間の思いこみは要注意ですね。
もう一度確認しておきますと、クリュイタンスは61年から62年にかけてラベルの主要な管弦楽曲をまとめて録音しています。英コロンビアはこれを4枚セットの箱入りとして発売したのですが、この初期盤は音の素晴らしさもあって今ではとんでもない貴重品となっているようです。
ただし、このセットは今も通常のCDとして簡単に入手が可能なので、歴史的名演と言われながらもその内容については簡単に検証できちゃうので、いろいろとエクスキューズがつく演奏となっています。
今回、この一連の録音をアップするためにあらためて聴き直してみたのですが、そのエクスキューズについて一言述べておく必要を感じました。
そのエクスキューズとは何かと言えば、最近になって「オケが下手すぎるといわれることに尽きます。
例えば、歴史的名演と言われるボレロなどを聞けばすぐに気がつくのですが、管楽器があちこちで音を外しています。酷いのになると「酔ったオジチャンが、ろれつがまわっていない」という極めて的確な評価が下されていたりします。
そうなんです、昨今の演奏と録音になれてしまった耳からすればあまりにも緩いのです。
そして、その事にはフランスのオケが持っている「あわせる気がない」という本質的な問題が絡んでいます。
フランスのオケというのは、プレーヤー一人一人の腕は確かです。しかし、彼らはその腕を全体のために奉仕するという気はあまり持ち合わせていません。
ですから、リハーサルをしっかりと積み上げて縦のラインをキチンと揃えることにはあまり興味を持っていませんし、そもそもそう言うことに価値を感じないのです。さらに言えば、現在でもフランスのオケのプレーヤーは事前にスコアに目を通すような「面倒くさい」事はやらないようで、慣れていない曲をやるときは変なところで飛び出したりしてもあまり気にしないそうです。
ですから、クレツキなどは「フランスのオーケストラの演奏は練習し過ぎてはいけない」とまでいっているほどです。練習で絞り上げるとやる気がなくなって本番で悲劇的なことを引き起こしてしまうことが多い、と言うのです。
その点で言えば、クリュイタンスという人はそう言うオケの気質を知り尽くして、それをコントロールする術を身につけた人でした。
俺が俺がと前に出たがる管楽器奏者を自由に泳がせながら、それをギリギリのラインで一つにまとめていく腕と懐の深さを持っていました。結果として、トンデモ演奏になる一歩手前で踏ん張りながら、そう言うフランスのオケならではの美質があふれた演奏を実現できました。
ですから、このコンビの録音を「オケの精度」という点だけで見てはいけません。
オケの精度などと言うものは練習で絞り上げればある程度のラインまではどこでも実現可能です。しかし、クリュイタンスとパリ音楽院管弦楽団のコンビが醸し出すこの響きの素晴らしさは、いわゆる「訓練」によって実現できるレベルものではありません。
「あっ、外した。また、外した!!」と思えば落ち着いて聞いていられないかもしれませんが、とりあえずはそう言うことは忘れて、この純度の高い、それでいてふくよかさを失わない希有の響きに身をゆだねれば、この演奏と録音の魅力に納得がいくのではないでしょうか。
そして、その事は録音会場に使われた「Salle Wagram(サル・ワグラム)」の響きの素晴らしさが貢献しています。この「Salle Wagram(サル・ワグラム)」は2005年の爆発事故で往事の面影はなくなってしまいましたが、オケの中で管楽器がクッキリと濁りなく響くことで有名でした。
パリ音楽院管弦楽団の名手たちが腕によりをかけて演奏している様子がはっきりととらえられているのはこの会場のおかげでもありました。
それからこんな事を書けば叱られるかもしれませんが、ラベルやドビュッシーの音楽は下からキチンと煉瓦を積み上げていくような音楽ではありませんから、多少アンサンブルの精度が落ちても気になりません。(気になるかな^^;)それよりは雰囲気勝負ですから、個々の楽器の響きの自由さと美しさこそが命だと思います。
今回追加で紹介する録音もまた、その様な美質に溢れた演奏であり、それらはこのコンビ故に成し遂げられた希有の響きによるラヴェル演奏というべきものです。
よせられたコメント
2023-06-23:大原
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