ムソソルグスキー:展覧会の絵(ラヴェル編曲)
セルゲイ・クーセヴィツキー指揮 ボストン交響楽団 1930年10月28日&30日録音
Mussorgsky:展覧会の絵(ラヴェル編曲)
今までの西洋音楽にはない構成
組曲「展覧会の絵」は作曲者が35歳の作品。親友の画家で建築家のヴィクトール・ガルトマン(1834〜1873)の遺作展が開かれた際に、そのあまりにも早すぎる死を悼んで作曲されたと言われています。
彼は西洋的な音楽語法を模倣するのではなく、むしろそれを拒絶し、ロシア的な精神を音楽の中に取り入れようとしました。
この「展覧会の絵」もガルトマンの絵にインスピレーションを得た10曲の作品の間にプロムナードと呼ばれる間奏曲風の短い曲を挟んで進行するといった、今までの西洋音楽にはない構成となっています。
よく言われることですが、聞き手はまるで展覧会の会場をゆっくりと歩みながら一枚一枚の絵を鑑賞しているような雰囲気が味わえます。
作品の構成は以下のようになっています。
「プロムナード」
1:「グノームス」
2:「古い城」
「プロムナード」
3:「チュイルリー公園」
4:「ヴィドロ」
「プロムナード」
5:「殻をつけたままのヒヨコのバレエ」
6:「ザムエル・ゴールデンベルクとシュミイレ」
「プロムナード」
7:「リモージュの市場」
8:「カタコムベ(ローマ人の墓地)」
9:「ニワトリの足に立つ小屋(ババヤーガ)」
10:「雄大な門(首都キエフにある)
これこそ歴史的録音!
展覧会の絵はピアノによる原曲よりは、このラヴェル編曲によるオーケストラ版の方が有名です。
でも、考えてみればラヴェルはプロの作曲家ですから、誰からの注文もないのに趣味でこんな編曲を行ったのではありません。そうです、ラヴェルにこのような編曲を依頼したのが20世紀の前半を代表する偉大な指揮者、クーセヴィツキーでした。
そのクーセヴィツキーによる1930年のこの録音は、まさに歴史的録音といえるでしょう。おそらく彼はこれ以外に展覧会の絵の録音を残していないはずですからこれは実に貴重な録音です。
聞いてみると、ラヴェルが意図した華やかな演奏と言うよりは、どちらかと言えばロシア的な泥臭さを感じさせられます。昨今は、ラヴェルの編曲は華やかすぎるとして批判されることが多いのですが、そのラヴェルに編曲を依頼したクーセヴィツキーがこのような演奏をしていたとはちょっと意外です。
ついでながら、1930年のオーケストラ録音としては非常に優秀です。ボストン交響楽団の健闘も印象的です。
よせられたコメント 2013-07-25:松本聡 クーセヴィッキーの『展覧会の絵』は確か1943年のボストン響とのライヴ録音が存在するはずです。カットされている曲が多かったと思いますがこの曲の演奏の一つの規範といえる名演だったと記憶しています。 2019-05-02:望月 岳志 1930年とは信じられないほど聴きやすい録音ですね。
注文主でもあるクーセヴィツキーが1922年に完成したラヴェル編曲版の演奏権を長期間独占していたそうですが、そのせいか、演奏レベルも非常に高い。初録音ということですが、それこそ満を持してのものだったのでしょう。
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なお、1943年の同コンビの録音のCDを所有していますが、データは以下の通りです。
プロムナードを1曲と数えると、ラヴェル編曲版では、全部で14曲となりますが、内
3. Promenade 2
4. The old castle
7. Bydlo
8. Promenade 4
が省略されています。
Live broadcast from Symphony Hall, Boston on 9th October, 1943
1. Promenade 1
2. The Gnome
3. 省略
4. 省略
5. Promenade 3
6. Tuileries
7. 省略
8. 省略
9. Ballet Of The Chicks In Their Shells
10. Samuel Goldenberg & Schmuyle
11. The Marketplace At Limoges
12. The Catacombs - Cum Mortuis In Lingua Mortua
13. Baba Yaga The Hut On Fowls' Legs
14. The Great Gate Of Kiev
音の鮮度(高域)は1930年録音より少し上ですが、歪みや混濁の点では1930年の方が聴きやすいかも知れません。演奏はライヴとは思えないほどの完成度でありながら、1930年録音の丁寧な仕上がりに比べてダイナミックな即興性と迫力もあるものです。 2022-05-27:Sammy 説明をお読みして、確かに歴史的な演奏なのだなあ、と思い、少し心して聞きました。
わたしの印象としては、しっかりした端正な演奏という感じです。オーケストラも見事に鳴っていて、それ以上に1930年の録音というのにかなり明瞭な響きで、そこが一番の驚きでした。今も十分鑑賞に堪える録音ではないでしょうか。
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