シューマン:マンフレッド序曲, Op.115
カルロ・マリア・ジュリーニ指揮 フィルハーモニア管弦楽団 1958年6月21日録音
Schumann:Manfred Overture, Op.115
流浪の旅を続けるマンフレッド
バイロンの詩劇「マンフレッド」に触発されて作曲されたもので、序曲と15の場面かな成り立っています。しかし、序曲だけは非常に有名であるのに対して、それに続く15の音楽が演奏されることはほとんどありません。
やはり、オペラでもなければオラトリオでもない、「詩劇」というスタイルが今の時代にはマッチしないのでしょうか。
また、バイロンの「マンフレッド」も、今ではどの程度のポピュラリティがあるのかも疑問です。少なくとも、日本でこの題名を聞いてシューマンの序曲を思い出す人はいても、バイロンの作品を思い出せる人は少数でしょう。
流浪の旅を続けるマンフレッドが、かつて捨て去った女性(アスタルテ)の霊と地下の国で会い、その許しを得ることで救われるという話です。
そして、このバイロンの作品全体を総括するような音楽がこの序曲なのですが、それはストーリーを標題音楽的にまとめるのではなくて、物語の中でシューマンが感じとったマンフレッドの姿を純粋器楽の形式で表現したものになっています。
それなりに好きにやらせてもらいます
フィルハーモニア時代のジュリーニと言うのは微妙な位置にあったようです。もちろん、コンサートオーケストラの指揮者の道を望んでいた彼にしてみれば願ってもないポジションでした。
実際、フィルハーモニア管での仕事が得られると分かると、彼はさっさとスカラ座の音楽監督は辞めてしまっています。
しかしながら、ジュリーニを見いだしたレッグの一番の手駒はカラヤンでした。しかし、カラヤンはベルリンフィルのシェフに収まってEMIを去ってしまったので、次の手駒としてクレンペラーを担ぎ出してきました。
しかし、この男の狷介な性格と怪我の多さを考えればスペアの手駒がどうしても必要だったのです。そんな中で白羽の矢が立ったのがジュリーニだったのです。
つまりは期待されているようなされていないような、そう言う微妙な己のポジションをジュリーニもまた自覚していたのかもしれません。
そして、それならばある程度は自分の好きにやってみようと思ったのか、いろいろなアプローチを試していたことがよく分かります。
見通しの良いがっしりとした大きさを感じさせるときもあれば、ひたすら横へと流れていく歌で全曲を覆っているようなときもあります。
そして、その歌が重視されているときは、これが本当にジュリーニなんだろうか?・・・と思うほどの軽さに驚かされます。その最たるものがチャイコフスキーの悲愴です。
デモーニッシュ的なものは欠片もなく、音楽はひたすら気持ちよく横へと流れていくばかりです。そして、その流れを「さらさら」とまで言えば言い過ぎでしょうが、それでもこれほど軽さを感じる悲愴は珍しいでしょう。
逆にシューマンの3番なんかは、まるでマーラーのような重さに驚かされます・・・って、これってもしかしたらマーラーの編曲版を使ってる?(調べてみたら、そのまんま、マーラーの編曲版を使っていることがわかりました)
頭から力一杯オケを鳴らして、その響きの分厚さはなかなかに聴き応えがあります。(荒っぽいという噂もありますが・・・^^;)
そして、ブラームスの1番のあの重々しい足取りがあるかと思えば、一転してこの上もなく正統派のスタイルで全曲を構成した2番の演奏なんかもあります。
しかし、ロッシーニやヴェルディの序曲、シューマンやチャイコフスキーの序曲のような作品になると豊かな歌心と確かな構成力が一人の指揮者のなかでしっかりと一つになっていることがよく分かります。
おかしな話ですが、大作ではいろいろと試みて、マンフレッド序曲やフランチェスカ・ダ・リミニ、ロッシーニ、ヴェルディの序曲などでは後のジュリーニを彷彿とさせる演奏を展開しているのです。
言ってみれば大きいところで挑戦して、小さいところで少しずつ結果を披露していくという感じでしょうか。
まあスペア扱いならば、それなりに好きにやらせてもらいますと言うところだったのかもしれません。
よせられたコメント
【最近の更新(10件)】
[2025-09-14]
フランク:天使の糧(Franck:Panis Angelicus)
ルネ・レイボヴィッツ指揮 ロンドン新交響楽団 1961年録音(Rene Leibowitz:New Symphony Orchestra Of London Recorded 1961)
[2025-09-12]
ベートーベン:交響曲第3番 変ホ長調 作品55「英雄」(Beethoven:Symphony No.3 in E flat major , Op.55 "Eroica")
ジョルジュ・ジョルジェスク指揮 ブカレスト・ジョルジェ・エネスク・フィルハーモニー管弦楽団 1961年3月録音(George Georgescu:Bucharest George Enescu Philharmonic Orchestra Recorded on March, 1961)
[2025-09-10]
ブラームス:弦楽四重奏曲 第1番 ハ短調(Brahms:String Quartet No.1 in C minor, Op.51 No.1)
アマデウス弦楽四重奏団 1951年録音(Amadeus String Quartet:Recorde in 1951)
[2025-09-08]
フォーレ:夜想曲第2番 ロ長調 作品33-2(Faure:Nocturne No.2 in B major, Op.33 No.2)
(P)エリック・ハイドシェック:1960年10月21~22日録音(Eric Heidsieck:Recorded 0n October 21-22, 1960)
[2025-09-06]
バッハ:小フーガ ト短調 BWV.578(Bach:Fugue in G minor, BWV 578)
(Organ)マリー=クレール・アラン:1959年11月2日~4日録音(Marie-Claire Alain:Recorded November 2-4, 1959)
[2025-09-04]
レスピーギ:ローマの噴水(Respighi:Fontane Di Roma)
ジョン・バルビローリ指揮 ニューヨーク・フィルハーモニー交響楽団 1939年1月21日録音(John Barbirolli:Philharmonic-Symphony Of New York Recorded on January 21, 1939)
[2025-09-01]
フォーレ:夜想曲第1番 変ホ短調 作品33-1(Faure:Nocturne No.1 in E-flat minor, Op.33 No.1)
(P)エリック・ハイドシェック:1960年10月21~22日録音(Eric Heidsieck:Recorded 0n October 21-22, 1960)
[2025-08-30]
ベートーベン:交響曲第2番 ニ長調 作品36(Beethoven:Symphony No.2 in D major ,Op.36)
ジョルジュ・ジョルジェスク指揮 ブカレスト・ジョルジェ・エネスク・フィルハーモニー管弦楽団 1961年4月20日録音(George Georgescu:Bucharest George Enescu Philharmonic Orchestra Recorded on April 20, 1961)
[2025-08-28]
ラヴェル:舞踏詩「ラ・ヴァルス」(Ravel:La valse)
ルネ・レイボヴィッツ指揮 パリ・コンセール・サンフォニーク協会管弦楽団 1960年録音(Rene Leibowitz:Orcheste de la Societe des Concerts du Conservatoire Recorded on 1960)
[2025-08-26]
フランク:交響詩「呪われた狩人」(Franck:Le Chasseur maudit)
アルトゥール・ロジンスキー指揮 ウィーン国立歌劇場管弦楽団 1954年6月27~7月11日録音(Artur Rodzinski:Wiener Staatsoper Orchester Recorded on June 27-July 11, 1954)