ブルッフ:ヴァイオリン協奏曲第1番 ト短調, Op.26
(Vn)ユーディ・メニューイン:ピエール・モントゥー指揮 サンフランシスコ交響楽団 1945年1月26日~27日録音
Bruch:Violin Concerto No.1 in G minor, Op.26 [1.Vorspiel: Allegro moderato]
Bruch:Violin Concerto No.1 in G minor, Op.26 [2.Adagio]
Bruch:Violin Concerto No.1 in G minor, Op.26 [3.Finale: Allegro energico]
ブルッフについて

今日ではヴァイオリン協奏曲とスコットランド幻想曲、そしてコル・ニドライぐらいしか演奏される機会のない人です。ただし、ヴァイオリニストにとってはこの協奏曲はある種の思い入れのある作品のようです。
と言うのは、ヴァイオリンのレッスンをはじめると必ずと言っていいほど取り上げるのがこの協奏曲であり、発表会などでは一度は演奏した経験を持っているからだそうです。ただし、プロのコンサートで演奏される機会は決して多くはありません。
しかし、ロマン派の協奏曲らしくメランコリックでありながら結構ゴージャスな雰囲気もただよい、メンデルスゾーンの協奏曲と比べてもそれほど遜色はないように思います。
第1楽章
序奏に続いて独奏ヴァイオリンの自由なカデンツァが始まるのですが、最低音Gから一気に駆け上がっていくので聴き応え満点、けれん味たっぷりのオープニングです。力強い第一主題と優美な第二主題が展開されながら音楽は進んでいき、いわゆる再現部にはいるところでそれは省略して経過的なフレーズで静かに第2楽章に入っていくという構成になっています。(・・・と、思います^^;)
第2楽章
ここが一番魅力的な楽章でしょう。主に3つの美しいメロディが組み合わされて音楽は展開していきます。息の長い優美なフレーズにいつまでも浸っていたいと思わせるような音楽です。
第3楽章
序奏に続いて,独奏ヴァイオリンが勇壮なメロディを聞かせてくれてこの楽章はスタートします。。前の楽章の対照的な出だしを持ってくるのは定番、そして、展開部・再現部と続いてプレストのコーダで壮麗に終わるというおきまりのエンディングですが良くできています。
ある意味ではキャリアの絶頂にあったのかもしれません
メニューインは1945年にピエール・モントゥー&サンフランシスコ交響楽団以下の2曲を録音しています。
- ラロ:スペイン交響曲 ニ短調 作品21
- ブルッフ:ヴァイオリン協奏曲第1番 ト短調 作品26
この時モントゥーはすでに70歳を迎えていましたから、当時29歳だったメニューインは孫の世代と言っていいほどの年齢差がありました。
モントゥーは1929年にはパリ交響楽団の創立時の常任指揮者を務めていました。しかし、楽団は経済的に行き詰まり、モントゥー自身もその危機を救うために私財をなげうって頑張ったのですが、遂に力尽きて1935年にはアメリカに渡ってサンフランシスコ交響楽団の常任指揮者に就任してしまいました。
当然の事ながら大きな後ろ盾を失ったパリ交響楽団は1938年に解散せざるを得なくなります。
その経験がモントゥーにどの様な影響を与えたのかは分かりませんが、モントゥーにとっては小さすぎるポストと思われるサンフランシスコ交響楽団の常任指揮者を1953年まで続け、その後フリーになっても楽団との良好な関係を続けました。
「君臨せずして統治する」と言われたモントゥーの手法はおそらくはこのサンフランシスコ時代に身につけたものだと思われます。
彼は、実に地道に、そして一切の無理をしないで、少しずつこの地方のオーケストラの育成に努め、やがては世界のトップ・オーケストラと比較してもそれほどの遜色を感じないベルにまで引き上げました。
しかしながら、この45年録音では、モントゥーは完全にメニューインのサポート役に徹しています。
10代でデビューして神童とうたわれたメニューインは、この大戦末期にあって、ある意味ではキャリアの絶頂にあったのかもしれません。すでに戦争の帰趨ははっきりと見え始めていた時期です。ヨーロッパ戦線では連合軍はドイツの首都ベルリンに迫っており、太平洋戦線ではアメリカ軍はルソン島に上陸を果たしていました。
そして、このメニューインの演奏は彼の持てる力とそう言う時代の空気が見事に解け合って、美しく、明解で、そしてこの上もなく力強い響きで全曲を弾ききっています。結果として、音楽もまたパワフルなもので、重くて陰うつな雰囲気になりがちなラロのスペイン交響曲でさえ晴れ渡った風景が浮かんでくるほどです。
そんなメニューインも50年代にはいるとテクニックの衰えと不備が指摘されるようになるのですが、ここではそう言う未来が待ちかまえているなどとは露ほども感じさせません。
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